第11話

11話
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2022/04/27 09:15
七瀬side
今日は絵梨花とかずみんと一緒にカフェで話していた
今は2人で楽しそうに話している

私は奈々未さんと交換した本を
パラパラとめくっていると
私が大好きなページで止まった

〝帝都ユキ〟

と書かれた切符が挟まっていた

これ何なんだろう

どうして切符が?

そう考えていると
目の前の道を足早に進んでいる人がいた

あれは…

奈々未さんだ、
それに手を引っ張られているのが

飛鳥ちゃんだ

2人の表情はよく見えなかったけど、
楽しそうではなかった

何かあったのかな


あ、

もしかして、この切符って

気づいた時には私は走り出していた

2人には何も言わず、雨の中をただただ走る
奈々未side
飛鳥の手を引きいつもの場所に行く

感情が抑えられなくなった時に必ず行く場所


家を飛び出しても私達は生きづらい

棘人注意

こんなポスターはもう見慣れた

だけど、毎回通る度に見る度に心が苦しくなる


雨に打たれながらいつもの場所に行く

飛鳥
お姉ちゃん…?
飛鳥
ここ…
奈々未
飛鳥、ここなら泣いて良いの
いくら棘を出したって良いの
何も隠さなくて良いの
飛鳥
お姉ちゃん…
私達は泣き叫んだ

泣いて泣いて泣いた

少し落ち着いた頃私は口を開いた
奈々未
私棘刀式が終わったらあの電車で
どこか遠いところに行こうかな
飛鳥
どんな世界なんだろうね
奈々未
そうだね
七瀬side
思うままに走っていると水溜りに足が浸かった

前を向くと

草原に奈々未さんと飛鳥ちゃんの背中があった

2人とも泣いていた


2人の心の悲しみが叫びが苦しみが聞こえてきて

私も辛くなった

2人の前に電車が通過した

2人は静かにその電車を見つめていた


私は声をかける事ができなかった


後退りしかできなかった


2人のためにも、棘人の皆さんの為にも
私は明日の棘刀式でどうすれば良いんだろう


考えた、

考えて考えた

私も最初は棘人の方が怖かった。

でも、本当はとても優しくて怖がる必要なんて
一つもなかった

だから私はあの本に書いたんだ

あの日できなかった事



そうだ


もう、こうするしかない

誰に何と言われようと私は明日やってやる


大丈夫、私なら。


あの2人を救える。

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