山田side
反応はない。
そりゃそうだ。たった今、身内がなくなったんだ。
俺の相手なんて出来てたまるか。
ジャニーさんが入院してから、何度も危ない時を乗り越えてきた。
ジャニーさんは十分頑張ってくれた。俺達に、諦めないことの大切さを教えてくれた。
ジャニーさんには教えられてばかりだ。
俺はジャニーさんに何かしてあげられただろうか。
いつも助けられてばかりで、これと言って何も出来てない気がする。
そして今も、ジャニーさんの孫であるあなたに、俺は何もしてあげられてない。
何もできない俺は、ここから出ることがあなたのために出来る、唯一のことだった。
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病室から出て、みんなが黙る。言葉選びが難しい。
でも、こういう時はだいたい、気が利く人はちゃんと言葉を選びながら、声をかけてくれる。
慎重に選んでくれた言葉に、みんなが反応する。
こういう時、俺は弱い。
「JUMPのエース」は動けない。
そう、問題は仕事の面。
ただでさえあなたは仕事が多くて、精神的にきついのに、今の状況は更にきつさを増してしまう。
より、あなたの心を軽くすることが重要になる。
なんて言うけど、俺はうまく出来ない気がする。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!