アキラの通う学校の通学路には
狭い曲がり角があり
交通事故が多い道
と言われていました
帰りの時間になると毎日
黄色いハタを持った
交通安全のおばあさんが
曲がり角に立ち
下校中の児童達を見送ります
そのお婆さんは
細くて、皮と骨ばかりなのに
声が大きくて
迫力がありました
それが怖かったアキラは
密かにその人のことを
「妖怪ババア」
と呼んでいたのです
ある日の事です
携帯電話に夢中だったアキラは
前を見ずに携帯電話の画面を見ながら
曲がり角を渡ろうとしていました
交通事故のお婆さんが怒鳴るような声を上げて
アキラのランドセルを掴もうとします
お婆さんのゴツゴツとした手が
にゅっと伸びてきたので
アキラは思わず仰け反って叫びました
骨と皮だけの手が空中で止まりました
その時のお婆さんの傷ついた顔.......
アキラは急に恥ずかしくなり
その場から逃げ出しました
その日以来
お婆さんに会うのが
気まずくなったアキラは
その道を通らないよう
わざと遠回りをして帰るようになったのです
その1ヶ月後
お婆さんが交通事故で亡くなりました
それ以来
その曲がり角では何度か
児童達が、人影を目撃し
「お婆さんの霊が立っている」
という噂が流れたのです
噂を聞いたアキラは
久しぶりにその道を通りました
「妖怪ババア」
と言ってしまったことを
ずっと気にしていたアキラは
久しぶりにその道を通りました
もし、お婆さんの霊に会えたら
謝りたいと思っていたのです
曲がり角でしばらく立っていましたが
何も起きません
諦めて帰ろうとした時
曲がり角に一瞬だけ人影が見えて
すーっと消えていきました
アキラは吸い寄せられるように
曲がり角に駆け寄りました
その時です
ぐいっと
ランドセルを引っ張られたのです
アキラが驚いて振り返ると
恐ろしい顔をしたお婆さんが痩せた手で
ランドセルを掴んでいました!
殺されるっ!
アキラは震え上がり
大声で叫びました
その時、曲がり角から車が現れ
物凄いスピードでアキラの前を通りました
アキラはその場でヘナヘナと崩れ落ちました
あのまま駆け出していたら
車とぶつかっていたでしょう
おばあさんは僕に仕返しに来たんじゃない
助けてくれたんだ
そう思ってすぐに振り返りましたが
後ろにはもう誰もいません
その日以来アキラはお婆さんの霊に会うことは
ありませんでした
お婆さんは死んでもなお
子供たちを見守るために曲がり角にたち続けているのでしょう
「事故が多い」
と言われていたその曲がり角では
ここ数十年
事故は1つも起きていません















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!