第33話

歴史を変える、はじめの一歩! 【ワシントン講和会議】
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2026/04/20 22:17 更新
1921年、ワシントンD.C.。
そこで、「アジア太平洋の問題や海軍軍縮について討議する」ためのワシントン講和会議が開かれていた。
そこでは、ほとんどの会議と同様に、「落ち着いた司会者の声」「秘密外交のひそひそ声」「意見を言う騒がしい声」「時には怒声…」
が響くはずだった。
しかし、現実は…
イタリア
ん?
中華民国
え?
フランス
…何かあったかしら?
オランダ
…なに?
アメリカ
は?
モブ
えーっと…
全員
(距離感おかしくない!?)
…という呆れ声と突っ込みであふれかえっていた。
その原因はもちろん…
イギリス
イギリス
そこで、「日英同盟を破棄してしまうのは国内に怒りを残し、戦争の火種になる可能性がある」というデータはこの資料から…
日本
日本
これですか?
イギリス
イギリス
ああ、それです
ありがとう
そう、もちろん最前列で「日英同盟の重要性」について話している英日だ。
話している内容に矛盾はない。
重要な同盟についてだ、反論があるのもおかしくない。
おかしいのは二人の距離だ。
その距離、ほとんど0㎝。
前列に座っている部下など、資料を持つ手が小刻みに震えている。
幹部外交官は必死にメモを取っているが、
外交官C
どう考えてもおかしい…
あれがあの二国か…?
などうわごとをつぶやいている。
アメリカ
コホン…その~
言いたいことがあるんだが…
イギリス
イギリス
なんですか?
さすがに耐えきれなくなったアメリカは、少し咳払いをして二人を制した。
アメリカ
少し紙が見えにくいんだが
見えやすくしてくれないか?
イギリス
イギリス
すみませんでした
こうすればいいですね?
「これで少しは距離が保てる…」と、みんなが胸をなで下ろした瞬間。
イギリス
イギリス
失礼します
そう言って、イギリスは日本をそばへ抱き寄せた。
日本
日本
分かりました
こちらで話をしますね
日本もそう言って、幸せそうに微笑む。
アメリカ
(いや待て、そうはならんだろイギリス!
そこは離れろ、抱きつくな!)
モブ
(日本さんもですよ
あなたは一応国なんです!
すっぽり収まらないでください、飼い猫じゃないんですから!)
ある者は陰の席にいたコモンウェルスや植民地たちに目配せしたが、
台湾
(諦めてください、正常な状態に戻っただけですから
見守ってあげて)
カナダ
(誰も止められないんですよ、だってやっと素直になれたんですから
ほっといてあげてください)
という感じの優しい(でも諭す)笑顔で首を振られ、何も言えなくなった。
そこからしばらく時間がたち、夕日が暮れてきた頃。
ついに(ようやく)、四カ国条約にサインをする時間になった。
アメリカ
二人の仲の良さは分かった
アメリカ
でもなぁ…
今は国際的な多国間同盟の時代なんだ
アメリカ
この波に乗ることに納得してくれるなら…
サインをしてくれ
そう言うと、アメリカは「四カ国条約」の用紙とペンを突きつけた。
フレンドリーに、でも少し威圧的に。
イギリス
イギリス
日本
日本
二国は少しうつむき加減に何かを考えている。
そして、顔を上げた。
アメリカ
やっと決意してくれたか
アメリカ
それじゃあ…
そう言われ、二人は躊躇なく用紙を手に取った。
ホッと安堵の息が周囲から漏れた時。




「ビリッ」




と乾いた音がして、二人の持っていた四カ国条約は粉々の破片にされた。
しばらく会議場を静寂と紙吹雪が包む。
アメリカ
えーっと…
新手の賛成?
イギリス
イギリス
拒絶に決まってるじゃないですか
日本
日本
私たちは四カ国条約に反対、ということですよ
あきれ顔で二人が言う。
間髪入れずにその場にいたほとんど全員が、
全員
(呆れたのはこっちだ!
条約破り外交(物理的)なんて聞いたことない)
と言いたげな顔で頭を抱えた。
アメリカ
えー…
さすがのアメリカも二の句が継げない様子。
それでも体勢を立て直してまだ議決をしないようにしようと考えたか、姿勢を正し、
アメリカ
でも…
と言いかけた声は、
突如部屋が真っ暗になったことによってかき消された。
中だけでなく、外もすでに真っ暗になっていた夜。
しかも1921年。
あっという間に部屋の中は完全な闇に包まれた。
モブ
て、停電だ!
モブ
早く明かりを確保しないと!
その場にいた人物はパニックになり、叫び声をあげたり懐中電灯を探したりする。
そうしてしばらくの間大騒ぎしてやっと電気が復旧したあと、
英日&その関係者たちの姿はどこにも見当たらなくなっていた。
モブ
ど、どこに行ったんだ!?
モブ
まさか…
全員
逃げた!?
逃げたことに気がついた周囲の人々は、英日たちを追うために出口に向かって駆けだしていった。
会議場の廊下。
ナイフスイッチ前の分かれ道にぶつかると、なぜかそこには台湾がいた。
なぜかその前をうろうろしており、少し怪しい様子だ。
アメリカ
お嬢さん
質問があるんだが…
台湾
へ、はい!
何でしょうか?
アメリカ
英日の二人が逃げていった方がとっちか知らないか?
台湾
えーっと…
確か、あっちの方で見たと思います!
台湾はそう言って明後日の方向を指さした。
アメリカ
そうか、分かった
ありがとう
台湾
どういたしまして!
外交官C
よし、追いましょう!
そう言って捜索団はそちらの方へと駆けていく。
その背中を眺めながら、台湾はつぶやいた。
台湾
…よし、上手くごまかせましたね
台湾
あとは正しい方向で待ってる部下さんたちとカナダちゃんが、時間をもっと稼いでくれることを祈るだけです…!
明後日の方向の出口へ向かった捜索団は、またも頭を抱えていた。
モブ
おかしい…
どうしてこっちにいないんですか!?
外交官C
まさか見間違いか…
中華民国
(そんなわけないでしょう
あの子…わざと間違えた方に誘導したわね)
中華民国
(嘘までついて…)
アメリカ
とにかく、反対側と言うことは分かったんだ
アメリカ
まだ間に合うかも知れない、そっちへ走ろう!
その一声を合図に、今度は捜索団たちは、逆側へ走り出していった。
外交官C
もうすぐつきま…
そう言った瞬間、彼は何かにぶつかった。
カナダ
どひゃ!
…ごめんなさい、大丈夫ですか?
外交官C
う~ん…
彼が目を上げた先にいたのは…
カナダと外交官Bだった。
外交官C
大丈夫ですけど…
どうしてここに?
カナダ
メープルシロップを一瓶全部こぼしちゃって…
拭き掃除してたんです
外交官B
靴がべたつくと困りますので
少々お待ちください
そうして二人はしばらく拭いている。
なかなか拭き終わらない。
モブ
…本当にこぼしたんですか?
カナダ
こぼしてない物は拭けないですよ
カナダ
ちょっとはねてるのでそこ、拭かせて下さい
アメリカ
もう何でも良いから通し…
外交官B
ダメです
じっとお待ち下さい
まだまだ拭いている。
今度はから拭きを始めた。
カナダ
ちょっと足どけてください、そこ踏んでます
モブ
うぇぇ!?
…ん?
どこかの誰かが足をどけた。
そこもまた拭き始める。
カナダ
いい加減大丈夫でしょう…
港も遠くないはずです
外交官C
何か言いましたか?
カナダ
な、なにも
外交官B
どうぞお通りください
そういわれ、捜索団たちは一目散に走り出していった。
しかしもちろん、英日はすでに車でワシントンをあとにしていた。
アメリカ
逃がしたか…
モブ
向こうの妨害にやられましたね…
停電ももしかしたらです、どうします?
外交官C
なに、倫理的にアウトな行動を取ったのはそちらだ
外交官C
世論も向こうの味方はしない可能性が高い
外交官C
そうすれば四カ国条約、無理にでも調印してもらえるだろう
そうつぶやいた外交官は、海の方をじっと見つめた。
少し憎々しげな、しかし敬意を払うような不思議な目で…
一方その頃。
ワシントンから西へ向かう道で、一台のスピード違反気味の車が観測されていた。
外交官A
どのくらい飛ばしますか?
イギリス
イギリス
出る限りでお願いします
日本
日本
にしても…やっちゃいましたね
イギリス
イギリス
なにを他人事みたいに
停電の時、逃げようと言ったのはそちらでしょう?
日本
日本
あれはまたとない幸運だと思ったので!
そう言うイギリスさんだって条約先に破りだしたじゃないですか!
イギリス
イギリス
それは、向こうがあんまり話を聞いてくれないから…
あれがあったからなんとか無理を通せたんでしょう!
日本
日本
だからと言って破るのは宣戦布告に近いですよ!
イギリス
イギリス
逃げるのだって外交儀礼に思いっきり反してます!
そんな上司二人を見て、Aは
外交官A
(正直言うとどっちもどっちでとんでもないことしてるから胃が痛いんだよなぁ…
でも、幸せならいいか!)
と思っていたが黙っていた。


言い合い後、しばらくの静寂が戻ってきたあと。
ふと、イギリスがあの日のように話しかけた。
イギリス
イギリス
ねえ、日本さん
日本
日本
はい?
イギリス
イギリス
例えこれで全世界が敵に回ったとしても付いてきてくれますか?
それは、帝国らしさの欠片もない、一人の人としての言葉。
それに日本は…
地中海の日と全く変わらないように見える顔で答えた。
日本
日本
当たり前じゃないですか
日本
日本
そこにあなたがいるなら、私は地球の果てでも付いていきますよ
イギリス
イギリス
そうですか…
イギリス
イギリス
その言葉、忘れないでくださいね?
イギリスもいつものように微笑む。


少しスピードを上げた車の前には、静かな海が近づいてきていた。
第二部 第一次世界大戦編 終わり
第三部 第三極同盟編へ 続く

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