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「雲に住めたら、楽しそうじゃない?」
彼はそう言った。
おおもり山から覗く大きな入道雲をさんかく公園のジャングルジムに座って眺めていた。
彼の横顔はまるで漫画の最後にシーンのようだ。
赤い猫はにゃあと鳴いて、彼に身を預けた。
彼は雲を眺めながら、少し寂しそうに呟くのだ。
「友達って、永遠に続くものじゃないのかな……」
左腕につけている時計を眺めながら彼は言う。
暖かい風が3人の間を抜ける。頭を撫でる。
入道雲は少し上へ移動したように思えた。
そして彼はまだ言葉を放つ。
「もし、雲の上に住めてさ。俺がずっとこのままだったら、みんなとずっとにいられるのかな。」
「…成長するって怖いことなのかもしれませんが、新しい出会いがきっと待ってますよ。」
このまま現状維持を望むのは悪いことだとは言わない。
けれど、きっと成長することは拒まなくても希望に満ち溢れているに違いない。
絶望したあの日。
私は成長を余儀なくされて、成長をした。
そして貴方に会えたのだ。
これ以上幸せなことはない。
入道雲の形を指でなぞる彼。
そんな彼の横顔は希望に満ち溢れているかと思ったが、少し物寂しいような顔だった。
赤い猫は尻尾で彼の背中を一定のリズムで叩く。
「……友達を失うだけならいいけど、忘れて全てがなくなるのは怖いよ…」
…ああ、今日も暑い。
暖かい風はなにかを攫い、どこかへ消えていく。
彼の涙とも知らずに、入道雲も見つめていた。
妖怪と人間は混ざり合うべきものではなかったのだ。
それは誰でも知っている。
それでも、混ざり合いたいのだ。
「…今を楽しみましょ」
もし、あそこに住めたなら。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!