「 …… 覚えてないことまだいっぱいありますか?」
渡辺くんの問いかけに私はそっと
写真の淵を指でなぞった
「 …… 断片的には少しずつ。でも ……
一番大事なとこがまだぼやけてる気がする」
「そうですか … 無理ないですよ」
渡辺くんは笑いながらグラスの水を一口飲んだ
「涼太は昔ほんとに泣き虫だったんですよ」
「え、そうだったの?」
「はい … 俺たちによく守られてた。
でも青島さんはいじめられてる
涼太を見てるのが嫌で
危ないって言ってもしょっちゅう俺の制止を
遮ってリーダー格の男子たちに
喧嘩売りにいってましたよ?」
「 …… え … 私が?」
「はい。女の子のくせにって当時は
思ったりしたけど頼もしくて …
それが …… めっちゃかっこよかった」
照れ笑いをしながらそう言う渡辺くんに
胸がじんわり熱くなるのを感じた
(そんなこと …… 知らなかった)
「ほんとに …… 忘れてごめんね」
ぽつりとこぼすと渡辺くんは慌てたように手を振った
「いやいやいや!忘れろって言ったのは俺ですから。
青島さんが悪いわけじゃないし」
「でもそんな …… 渡辺くんと遊んだこととかを
全部忘れてたなんて …… 」
「 …… いややっぱ忘れてたんじゃないですよ」
渡辺くんは急に真剣な目でこちらを見つめてきた
「覚えてなかっただけ。心の奥では
ちゃんと繋がってた …… だから
こうして今会えてるんですよ?
俺最初教育担当が青島さんって聞いて
何度ふっかさんに聞き直したからわかりませんからね?」
胸の奥がじんと熱くなる
( …… 繋がってた)
その言葉が私の胸に深く響いた
「じゃあ …… 」
渡辺くんが少し不安そうな笑顔を見せた
「これからは忘れないでいてくれますか?」
一瞬言葉に詰まったけれどすぐに小さく
でも力強くうなずいた
「うん。これからは …… 絶対忘れない」
その答えを聞いて渡辺くんの頬がほんのり赤くなった
「 …… なんか告白みたいになっちゃいましたね」
「 …… !」
ドキリとして私も顔を熱くしてしまった
( …… 告白?私、今 …… )












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。