ホテルの部屋の窓辺でスマホを握りしめる
( …… 送信しちゃった …… )
「渡辺くんとちゃんと話したいことがある。
私が東京いる間に会って話せるかな?」
メッセージを送った後胸がドキドキして仕方なかった
(返事すぐ来るかな …… )
時計の針の音がやけに大きく聞こえる
ピロン
スマホが震えて思わず飛びついた
「青島さん明日ちょっと俺の新規開拓に付き合って!」
なんだ …… 深澤さんか
肩を落としてショボンとすると再びスマホが震えた
「明日の夜なら空いてます。
俺も青島さんと話がしたいです」
今度来たのは願っていた渡辺くんからだった
画面の文字を見つめて大きく息を吐いた
( …… よかった)
緊張で張り詰めていた肩の力がやっと少し抜ける
*
次の日の夜指定されたのは都内の
落ち着いたダイニングバー
「青島さんこっち」
奥の席から手を振る渡辺くん
今日は私も渡辺くんも営業回ってからの
直帰だったのでお互い見慣れたスーツ姿だ
「忙しいのに …… ごめんね?」
「いえ。俺もちゃんと話したいと思ってたので」
向かい合って座るとお互いなんだか
少し照れ臭くて笑ってしまう
「 …… なんか … 」
渡辺くんがグラスを指で
くるくる回しながらぼそっと呟いた
「青島さん思い出そうとしてるんでしょ?」
「 …… !」
図星を突かれて胸が跳ね上がる
「なんでそう思ったの?」
「そりゃ …… 顔見りゃわかる。
昔からそういうところ隠せないじゃん」
「昔から …… 」
(そう昔から。なんで私は ……
全部忘れて彼を苦しめてるんだろう)
会話が途切れたときふと渡辺くんが席を立った
「ちょっとトイレ行ってきます。
戻ったら …… ちゃんと話しましょう」
その後ろ姿を見送ったとき渡辺くんの
鞄の中に入っていた数枚の写真が目に入った
「 …… え?」
思わず手が伸びる
小さい頃の集合写真
涼太と一緒に映る小さな男の子
そして私自身
(これ …… )
心臓がドクンと跳ねる
涼太のお店で見たアルバムと同じ写真 …
本当に渡辺くんだったんだ ……
遠くぼんやりとしていた記憶が
少しずつ色を取り戻していくような感覚
(私 …… )
1人で考え込んでいると背後から声がした
「 …… 話す前に見つけちゃいましたか?」
振り向くと戻ってきた渡辺くんが
少し照れくさそうに笑って立っていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!