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第1話

1.
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2024/01/06 06:02 更新
sideあなた



友達にどうしてもと言われ参加した超特急のLive。
どうにも断りきれなくてヘラヘラと笑って承諾した

そもそも、名前くらいしかろくに知らない私が参加してもいいものだろうかと迷ったけど絶対楽しいから!!と押し切られてしまった。
たしかにLiveは冬を感じさせない熱気とキラキラとした雰囲気に包まれていて、それなりに楽しかったと思う

次また来てと言われたらきっと私は行くだろう。

でも……ハマりはしないんだよなぁ、、
いつもそう。

熱量がないというか、あつくなれないというか。

多趣味と言えば聞こえはいいが、言ってしまえば何にも興味が無いのだ。



友達はこの後も飲みがあるとか何とか言ってさっさと反対方向に歩き出してしまった

故に、帰りはこの幸福そうな女の子たちの間をくぐり抜けて帰らなければならない

苦痛かと聞かれればそうでも無いがそこにはなかなかの場違い感があった。

満員電車を避けたくて近くのカフェで時間でも潰すか、と適当なカフェに辿り着く。
カフェの椅子に座った瞬間自分の今日の疲労を感じ
て一息つくとなかなかに長居してしまっていた。


近くにチラホラと座っていた女の子ももう既に居なくなっていて、気付けば終電まで残り3本だった。

『やばいやばい、急がないと』
思わず独り言ちていそいそと帰る支度をした。
Live終わりの周辺は暗くて静かでさっきまであんなに盛り上がっていた場とは思えなくて足並みがゆっくりになる。
自分が急いでいたことを思い出して走ろうとするとワイヤレスのイヤホンが吹っ飛んで行った
『あーもうっ、』
すぐに拾ってカバンにそのまま突っ込むと後ろから声がした。
反射的に振り返りそうになったけど私なわけないよなと一瞬冷静になって振り返るのを辞めた。
「あ、!待って!!!」
『え、?』

思わず振り向いたそれに声をかけた彼はパァっと顔を明るくさせた。

油断したら見とれてしまいそうなその綺麗な顔に驚いて自分の体温が上昇するのを感じる
どう考えても私では無いと思うのに彼の視線もこの状況もどうにも私を呼び止めているようだった。
「突然、ごめんなさい!…えと、俺の事分かりますか?」
突然変なことを言い出す人だと思い、思わずはい?と言ってしまいそうだったが心の中で唱えたそれはあまりにも感じが悪くて飲み込んだ。
妙に汗だくで走ってきた様な彼はどこかで見たことがあるような__それでいて見たことがないくらいに綺麗な顔をしていた。
『…ごめんなさい、どこかでお会いしましたか、?』
「あ、えと、いや…」
なんて言ったらいいんだろ…と頭を抱える彼はやっぱりどこかで見たことがある気がする。
「いやあの、俺さっきまでステージにいて…それで」
『え、、あ、え、!?』
『4号車の人、!!?』
口からとび出たのは名前ではなくて紹介していた号車名だった。

見たことがあるって……そういうこと、!?
てことは私、めちゃくちゃ失礼だったんじゃ……
『うわ、えとごめんなさい!私超特急の事詳しくなくて、それで…!!』
「あ、いや全然…っ!」

まるで自分の中の罪悪感を打ち消すみたいに焦って並べた言葉は彼を余計に遠慮させてしまったかもしれない。
「あ、ちょっとだけボリューム小さめで、」

彼は口に指を当ててシーっと子供をなだめるようなポーズをとった。
『あ、うん、えと、はい…』
『でもなんでわざわざ…あ、私なにか落としてたとか、??でもメンバーの方が届けに来ないよね…?』

焦りと動揺で1人でブツブツ言っていると彼が無邪気にクシャっと笑った。
「あ、いや、ごめんこれ、渡したくて」
ぎゅっと自分の手に握らされて思わず何かも分からないそれを受け取ってしまう。
「ごめん、急ぐがら…っその、それ!よかったら!」

そう言って去っていく彼の背中を見送った。
『なんだったんだ、?』

置いていかれたような気持ちになった私は静かになったその場所で立ち尽くしていた。

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