第57話

間章 「 番犬にお手、タンポポのきまぐれ 」
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2026/03/13 22:38 更新
 
 【 ナベリウス・カルエゴside  】



「 キミたちのだぁーいすきなお師匠様 、

   殺してもらう計画中なんだよ…知ってた? 」

年がら年中頭が沸いてるヴィッチ家の女が
ケラケラと笑ってそう言った。

心臓破りの少し前の話だ。


バラムが消息を絶っていたことを問い詰めようとしたら、返り討ちにあった気分だった。





初めは意味がわからなかった。
すぐに言い返す、 笑えない冗談はやめろ、と。




何が誰にどうやってなぜ?
分からなくても、そこを聞くより先に
「 師匠 」と「 死 」を遠ざけたかったのだと思う。
だからなぜと聞かずに否定に走った。

 
ヴィッチ
冗談じゃないよぅ、番犬ちゃん


けらけらと、また喉を鳴らして笑う。

へんに耳に擦れる嫌な音だった。
カルエゴ
ヴィッチ姉、はぐらかさずに説明しろ


 ヴィッチ本人から言い出した癖に
 食いつきがいい私に不満なのか、
 無責任にも渋った顔をして ,

 えぇー…と口を歪ませた


ヴィッチ
私説明下手だからなぁ、……
バラム君、出ておいで



 

 そういって少ししても物音ひとつすらしない


ヴィッチ
ああ、…最高位隠密魔術神が存在を否定したモノ ピエリコブラ解除


 さらっとふわっとと最高位が出てくる辺りで

 この悪魔は本当に「 悪魔 」としての頂に

 確かにいるのだと思い知らされる。

 現に自分では察知できなかった。
カルエゴ
………!




 何もないと確信していた空間から、

 私に額がひっつきそうなほどに覗き込まれている
 
 シチロウの姿をようやく視認できた

カルエゴ
近いぞ、シチロウ …顔色が悪いな

白く長い髪が額に数束落ちてくる。

鬱陶しくて退けようとするが
シチロウ自体が頭を動かすのであまり意味がない。

目の下のクマが際立って見えた、
彼にとって珍しい様子ではないが
クマのでき方が数日のそれではない程度に濃い


バラム・シチロウ
やっと目があった、…よかった。
この魔術強力すぎじゃないですか、
ヴィッチ先生?


視線があったのは初めの方だけで、私の言葉にあまり構わず、すぐにどこか一点を凝視し出す。

今解かれた魔術の残穢にその視線は向いていた

ヴィッチ
うむ、一般的には?



バラム・シチロウ
もし先生が解除を忘れたら
僕一生誰にも見えないんじゃ、?


ヴィッチ
うむ、ダッツright!じゃ


バラム・シチロウ
じゃあこれを師匠に使えばいいのでは?
僕がわざわざ魔術を作る必要は……




ヴィッチ
だーかーらー、
何度も言っているように!


ヴィッチ
アイツあなたの下の名前は頭が沸いとるんじゃ
この魔界に存在する魔術なら
全部見破れる程度には化け物じゃ!


 「 化け物 」という言葉が耳をかすめる。
 そこには差別の色がなく、
 賛美の一つなのだとわかる。

 それでも、彼女が敢えて、
 そう呼ばれる時と重ねてみて

 一体この差はなんなんだろうと思った。

 
ヴィッチ
だから、
それを掻い潜るには…
「 魔術を創造 」するしかないんじゃ



ヴィッチ
なにも参考にするな、
一からお前が作らんかいっ!!!


 魔術を作るなど、

 そんなこと千年に一度の天才だと魔界で
 仰がれるような人物ですら、生涯を全て費やして、
 一生をかけて成せるかどうかの芸当だ。
 
 とんでもないことを、また……
バラム・シチロウ
……間に合うかどうか、
 正直自信がないです



 ま、まて。自信がない?

 まさかやるつもりなのか、?

 どうせヴィッチのふざけたお願いだろうに
 本気で引き受けているのか???

 シチロウが??????
ヴィッチ
くどくどプレッシャーに酔うな


 プレッシャーなんかで片付けるのか??

 酔わなければシチロウはそれができると、?
ヴィッチ
単に、師匠に一杯食わせてぎゃふんと
言わせる、…ぐらいに考えればいい


バラム・シチロウ
ぎゃふんって、…この魔術式をxとしてcosθを…



そうぶつぶつ唱えながら奥に置かれた
書類の山、実験道具が山積みの巣へ

バラムはのそのそと帰っていく。

ヴィッチに言いくるめられた大型動物のようで、
ツッコミどころしかない。

脳内はたぶん「創作魔術」でいっぱいなのだろう。
カルエゴ
ちょ、ちょっと待て




1人何も知らされずに残された私は、

バラムの後ろ髪を物理的に引っ張って静止させた。




バラム・シチロウ
あ、カルエゴ君…忘れてた。


偏頭痛を自分の中に押し込んで
息をゆっくり吐いて平常心を保つ。


カルエゴ
……立て込んでいるのはわかったから、
手短に説明してくれ。





手短に、そう言われて言葉を省いた上に
削ぎ落としたその二言は、確かに心臓に悪かった












バラム・シチロウ
師匠が、……死ぬつもりみたいなんだ。



バラム・シチロウ
デルキラ様が死んで、
僕たちにもう一度会いにきてからずっと
……死ぬために、生きてきたんだって。











カルエゴ
なぜそれがわかる?

頭は思考を放棄して、
口は勝手に動いて意味をなした言葉が紡がれた







ヴィッチ
君たちはずっと騙されてたんだ。


カルエゴ
騙された……だと、?


ヴィッチ
これからも、
幸せに生きていくふりをしてたんだ
君たちは、
そんな彼女に化かされていた ,









「  とっくに、 いつか死ぬつもりだったくせに」




 淡々の罪状を述べるように、
 ヴィッチはそう口にした。
ヴィッチ
だからそれを止めないと、ということさ









ヴィッチ
……デルキラとの約束なんだよ
デルキラが死んだあとも、
彼女が生を謳歌するように。



言葉だけでは何も伝わらない様子のカルエゴに
観念したようにヴィッチは言うと、
左腕の袖をめくり出した。

肌には刺青のように、
デルキラの紋様とヴィッチ家の家紋が刻まれ
その間に天龍の象徴が刻印されている。
ヴィッチ
…彼女を生かすことが条件で、
 結んだ契約があるんだ。




ヴィッチ
簡単に言うと、
彼女が死ぬと私も死ぬ。だから、
死なれちゃ困るんだ、「「私が 」」


 自己中を元気に報告したあとで、

 やや冷ややかな声がかけられた

カルエゴ
代価に何を得たんですか?



ヴィッチ
…………それ聞いちゃう?



ヴィッチ
うぅん………



















   

    「 そうだなぁ、 」と、はにかんで

    幼子が宝物を詰めた玉手箱を見せるように

    とっておきだぞ、なんてもったいぶって





















 「 デルキラ様が墓場まで持って行った、
 
【 一生をかけてついた嘘 】について、だよ。 」



ヴィッチ
嘘つきばっかり、そう思わないかい?




掲げた手に刻まれた刻印を手ですーとなぞりながら、

誰に向けた言葉でもないことをいう。
ヴィッチ
何が本当か、もう誰にも分からないかも










ヴィッチ
誰かが、人生を賭けてついた嘘には
あまり深入りしない方がいいね


ヴィッチの言葉はそこで区切られた。
それ以上、知ることを許さないと線引きされた目は

一度開いて、そして閉じられる。



ヴィッチ
まぁ、あなたの下の名前の嘘は、
ずかずか踏み入らせてもらうけどね!!



ヴィッチ
せいぜい働け、あなたの下の名前の忘形見お弟子たち




 夢は、ある一言から始まる。

 それは、ちゃんと…

 確かに言われた記憶のある言葉だ。







 「  初めまして、ナベリウスのかわいい坊や 」



 それから、走馬灯のように「あのヒト」の記憶が

 駆け抜けていって、

 学生時代、そして再び現れてから…

 最後に心臓破りの騒動へと移っていく。



 そしていつか、自分でも気づかないどこかで

  ″ 現実にない、嘘の話に入れ替えられる ″
 
 このたとえは少しおかしいかもしれない、

 つまりは、 今までは記憶をなぞるような夢が


 どこかを境に妙に現実めいてくるのだ。




 




 夢との境目が曖昧になって、
 所詮夢だ、と笑えない程度に

 一歩引いてはいられなくなる。









 とうとう不安になって目の前の「あの人」に
 これは夢かと聞いてしまう。





 すると毎回、それが最後になる。
 その後に「あの人」が口にする言葉が契機となって














 「 お別れだね、かわいいナベリウスの番犬さん」

      私はそこで毎度目を覚ます。

        寝覚が悪いこの夜を、

    もういくつ明かしたのかは知りもしない





 
ダンタリオン・ダリ
だからカルエゴ先生、
僕に毎朝聞いてくるんですね、笑


 明け方、まだ日が昇る前に

 カルエゴは教師寮へと訪れていた。

 もう数年の日課である。

ダンタリオン・ダリ
「 あなたの下の名前はまだ生きているか?」って

ダンタリオン・ダリ
いやぁ、もうほーんとに
大好きなんですねーっ、あはは


 ダリが淹れたてのコーヒーカップを
 カルエゴに手渡して、
 2階のテラス席で話すのが定番だった。


 カルエゴは夢を見るたび無性に不安になる感覚を、

 ダリにあなたの下の名前の生存を確認することで
 どうにか紛らわせていたからだ。


 なぜなら、 心臓破りから…

 あれから結局ここ三年、四年経とうとしてもなお

 彼女が死ぬかどうかは決まってないまま、
 



 彼女がもしも死にたくなったら

 現在故障中の例の時を戻せる時計を

 修理することをダリが了承する、という形に

 なったからだ。


  もっと簡単にいうならば、

  サリバンの家系能力を支える時計は

  現在ダリが所持している。

  = 時を戻して自分の存在を無かったことにしたかった(=死ぬ)ということがこのままじゃできない


 だから、(上の形で)やはり死にたいとなったら

 それをダリに話したなら、

 彼はは時計を直して彼女に渡す行動をとる。

 と、いう具合だ。




 だからダリに聞くのが一番早いのだ。

 時計の修理を頼まれていないか、と

 それを聞けば、聞こえるはずもないあなたの下の名前の鼓動すら聞こえてきそうなほどに、安心できるから。






   
  誰もが抱くだろう、

  どうしてダリは時計を修理するつもりでいるのか


  修理しないとすれば、宙に浮いたままの


 あなたの下の名前の「 死 」の

 可能性がなくなるじゃないかという疑問は

 カルエゴが初めにダリにしていた話だった。


カルエゴ
……認めたくない話ですが、
そういう形時を戻して自分の存在を否定するで死ぬことを目標としていた彼女が、それを失うことで
カルエゴ
拠り所を無くしてしまう…
その先の彼女の思いの行末を気にしているから、「 時計の修理は承る 」と、
最後に言伝を頼んだんですか?






ダンタリオン・ダリ
いやぁ、…はは…あのね、カルエゴ先生



ダンタリオン・ダリ
僕はそんなによくできた
悪魔じゃないですから、
そういう彼女のために…とかいうのは
実はないんですよねーはは


カルエゴ
じゃあ、……なんであんなことを




ダンタリオン・ダリ
僕は単純に気になるんです、
あなたの下の名前とした賭け事の行く末が


カルエゴ
………は?


ダンタリオン・ダリ
あー、この話をしちゃうと
僕と彼女との大事な馴れ初めを
自慢してしまうことになるので ,


ダンタリオン・ダリ
ちょっと、カルエゴ先生には
もったいないかなって、笑




ダンタリオン・ダリ
わー、怒らないでくださいって…
流石に無理があるか…僕が悪いかなこれ





 濁すに濁された言葉の末に、

 奇しくも偶然か、はたまた必然か


 ダリの「 二言 」で、その場は閉められた。




ダンタリオン・ダリ
彼女が死んでしまわないように、
その可能性をなくすために動くなんて
ロマンがないと思いません、?




ダンタリオン・ダリ
カルエゴ先生、
死んでしまうなんて勿体無い理由に
先生自身がなってやるって、
そういう男気の方が…かっこよくないですか?笑



   と、 … 心臓破りの後その話を交わし

   それから四年近く経った。



   ダリが時計の修理をする、と言った期限は

   四年と半年。


   未だ殆どの悪魔は、あの騒動から

   あなたの下の名前とやり取りができていない。



  ダリに修理の連絡がないまま過ぎた

  4年間は、もうあと少しで終わりを迎える。

  


 カルエゴも、会いに行けていない悪魔の1人だった





ダンタリオン・ダリ
もうすぐですね、入間くんたちが
バビルスに帰ってくるのも…


ダンタリオン・ダリ
いやぁ、何年経っても
子供の成長は早いですね、笑


   課外で経験を積んだ日々は区切りを迎え、

     収穫物を審査する季節となった






   
ダンタリオン・ダリ
今日から面談ですよね、
アブノーマルクラスは
骨が折れるだろうなぁ


カルエゴ
まぁ、いつものことですから




カルエゴ
そうだ、ダリ先生



ダンタリオン・ダリ
どうしたんですか、?





カルエゴ
私、………
















 「 あなたの下の名前に求婚しに行こうと思っています  」




ダンタリオン・ダリ
………ええええ、????
ダンタリオン・ダリ
ちょ、待ってください…
僕なんか話聞いてなかったですっけ?



ダンタリオン・ダリ
話の文脈がとんでもない
気がするんですけど



カルエゴ
いえ、特には .



ダンタリオン・ダリ
特には、…な、なるほど……???



カルエゴ
貴方が言ったんでしょう、?
あの人の、「死にたくなくなる
理由」になるといいって


ダンタリオン・ダリ
え、ぼ、僕の焚き付けのせいですか?



カルエゴ
いいえ、私のただの悪あがきです






 カルエゴは珍しく

 豆鉄砲を喰らったダリの顔を軽く笑って

 しかしばかり上機嫌で席を立った。


ダンタリオン・ダリ
あっ、じゃあ…カルエゴ先生
急いだ方がいいかもですね




 そんなカルエゴにダリは

 わざとらしく呼び止めにかかる。




ダンタリオン・ダリ
知りません、?
入間くんが、先日指輪を贈ったって話



カルエゴ
は……?




 カルエゴが本日最後、夕方を予定していた

 入間との面談予定を急きょ朝にねじ込むという

 連絡を入間にかけ、慌ただしく

 その場を後にするのをダリは愉快そうに見送った。




ダンタリオン・ダリ
あっはは…面白い


 1人残されたダリはくくっと、喉を鳴らして


 面白そうに笑う。

 先日といったが、もう数年前の話だ 。
 見事に翻弄されている珍しいカルエゴ先生が面白い



ダンタリオン・ダリ
求婚かぁ、…いやぁいいね








ダンタリオン・ダリ
僕もしてみようかな、………なーんて





 




     心臓破りから四年後、


     確かに何かが、巡り始めようとしている





にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
コメ返できてなくて
ほんとにすみません!!


にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
あとスポラ限定のものも、
間違えて公開してしまっていて
なんだかほんとに申し訳ないです!!
にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
わざわざやって
見てくださった方、
ほんとーにありがとうございます!!
これから絵が増えるたびに、
あのチャプターにどかどか
載せていく予定なので、……!!






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