第59話

「拝啓、四年後の君は」編 原石に問う⑤
317
2026/03/11 14:35 更新

( アリさん= デルキラ様なのか??)

 というほのかな疑問を持っていただけると ,
 今回読みやすいかと思います 。

 今回表記揺れがあるかもです。

 王様=アリさん , 少年=入間くん

 襖の向こうの〇〇= アーペインツちゃん

 春の表現全般= アーペインツちゃんの心境


 みたいな解釈で読みやすくなるかと 。



     己を例えるならなんだろう、?


     一応曲がりなりにも宝石だと思う 。

     だいぶ霞んだ、 ひび割れた宝石。




     一度きちんと光った記憶がある ,

     一時代は築いた気がする 。










    あとは捨てるだけの 、 
          あの石の名前がいい 。


    年だけ馬鹿みたいに経った、
    硬いだけが取り柄のあれでいい 。














天龍はまだそこに在った ,


けれど、もう牙を剥いていない。

巨大な影は、桜の襖に溶けかけた墨みたいに
輪郭を曖昧にしている。




「 あの、お礼が言うのが遅くなってすみません。

  ウォルターパークでは,

  本当にありがとうございました 。 」

  
 


 入間が感謝から入り、 そして続ける 。


鈴木 入間
あの時 ,
確かに…「 アリさん 」って
そう言っていましたよね。



鈴木 入間
これは僕の直感ですけど、
……………見えていませんでしたか、?




    入間にしか見えない

    指輪に住まうイルマの相棒 。

    アリさん , と彼は呼ぶ 。

    自分のことはあまり名乗らない ,
    それでも優しくて頼りになるアリさん



















     「  あれが、最初で最後 。 」

    襖の向こうで、鶯のような声が落ちる


    春を告げるようでありながら、

    その声には春が遠い 。













   
あなたの下の名前
もう , 君から何も感じない 。



   

    


       続くのは妙に明るい声




あなたの下の名前
でも、ほら…あれは確か
指輪からきてて…
今君は指輪をつけてないんだよね
だから、私は感じれないだけ 。




あなたの下の名前
ね、入間くんそうなんだよね ,
………生きれば生きるほど,
……あーあ、なんで…!











入間の隣で、アリさんが腕を組む。

影を形どった風貌の頭には ,

いつのまにか王冠が光って見えた 。








まぁ、とにかく 不機嫌そうだった。


アリさん
まったく ,






吐き捨てるようにいう 。



アリさん
死ねば全部いい方に行くって、
そう思ってたから楽だったんだ



入間はそのまま口に出す。

「えっと……」






襖の向こうに向かって声を張る。

「 アリさんが、言ってます 」




一拍置く。


返答はないが , きっと伝わっているのだろう





鈴木 入間
死んだら全部うまくいくと
思ってたから、楽だったって



アリさんは振り向いた 。


アリさん
違う ,そうじゃない。



アリさん
甘えだって, いってんだ




入間は慌てて付け足す。

「あ、あと、甘えてたって」








アリさんは額を押さえる。

「順番があるだろうが」











襖の向こうで、 目を瞬く音が確かに聞こえた 。



「 なぁに入間くん 、 そこに誰かいるの?」




入間が必死に説明しようと言葉を詰まらせるが
「アリさん」はそれを一言でぶった斬る 。



「 白々しい 。 」


入間が顔を引き攣らせる……

 「 え、……っとお…… 。」





「 そのまま訳せ。
  わざわざ俺様に名乗らせるのか 。」



入間は一言一句違わず伝える 。






竜の影がわずかに揺れた。

アリさん声は低くなる。
















否、 これは入間の相棒としての「 アリさん 」

ではないのだろうと , 入間は思った。


















薄々思っていた 、 「 アリさん 」は

ただの指輪の妖精みたいな 、
きっとそれだけじゃない。










いまは、そうじゃない「 ヒト 」として、

あなたの下の名前さんに接している 。











言葉遣いが違う 。

態度も 、 声も , これは入間にしかわからないが















アリさんは今、 別の誰かなんだ、と









アリさん
お前は自分が死ねば元通りだから 
って、俺様の死から逃げてただろ



  鋭い言葉は慰めではない ,



アリさん
甘ったれが ,ッ
いつからお前はそんなに
女々しくなった?





  それは明らかな非難を含んで ,

  告げる当の本人は、
  どこまでも苦しみながら、言葉を紡ぐ 。










   どうか、 どうか… 死ぬなと

   言葉の裏で 王様は願っている 。
 



アリさん
つまらねぇにも程があるぞ ,








入間は必死にその先を追いかけていく 。


鈴木 入間
今のあなたは、逃げてるって。
前と , 変わってしまったって










襖の向こうで、何かが崩れる音がした。

入間には何が見えている?
誰の言葉を伝えに来たというのだ 。

それは騙しではないか、嘘は孕んでいないというのか




その質問のどれもに彼女は自分で答えを出して






かすかな嗚咽が、竜の喉鳴りに混じる。











「 アリさん 」が指摘したそのどれもを
 襖の向こうの彼女はよくわかっている 。











 でもそれは、 誰もが彼女に突き立てなかった
 ことであり。 多くの悪魔が

 気づかなかったことでもある。







 もしかしたら、目を背けていたのかもしれない


















 それを容赦なく突き立てた 。


 その相手も、相手だ 。









アリさん
お前 , ほんとは気づいてるだろう


  言葉は甘く寄り添わない ,


  でも誰よりも言葉を砕いて 。


  




アリさん
お前は、俺様が死んだ世界で
生きたいと思った








アリさん
だから死ななかった 。



   そのまま、 余すまいと ,

   入間は言葉を紡ぐ 。










   竜の影が大きく波打った 。

   あなたのアムドゥスキアス・ポロのSDの名が

   一歩前に出かけるが、入間は手で制する。


   













鈴木 入間
それで、いいって 。










  





怒りと、悲しみが混じった声音は重ねられていく ,











「 どうして俺が賭けた命が

  俺のために死ぬ心積りをしてんだよ 」










入間は思わず柔らかくしてしまう。





「俺が賭けた命を、

   俺のために使わなくていいって」





アリさんが即座に言う。

「違うそうじゃない」

入間は慌てた ,




「え、違う?」


「 俺はもっと怒ってるんだぞ、イル坊 」

そう言って、アリさんは顔をしかめる。






鈴木 入間
僕が通訳するんじゃなくて、
もっと……いや。
アリさんの姿が、他のヒトにも
きちんと見えたらよかったのにね







 そしたら、今みたいに伝え損ないがないはずだ

 自分だとこぼしてしまっている , 惜しいことだと

 入間は思わず弱音を吐く 。




アリさん
イル坊、…俺は死者じゃない。



    言っている意味がわからなかった
鈴木 入間
…生きてるって、…こと?





   あなたの下の名前を見ていた眼差しが

   ふとゆるまって入間をみる 。
アリさん
違う , そもそも
俺は誰でもないんだ 。














アリさん
俺は、…俺様は ,……いや。



 でもやめる 、 言葉を止めてみる 。

 これは諦めじゃない、選ぶことに似ている





アリさん
イル坊、これは奇跡みたいなことなんだ



アリさん
全部、イル坊のおかげだ…
だから、今もほんとに感謝してる。
アリさん
それに、他の誰かでもない。
お前がいいんだ、




鈴木 入間
……ごめんねアリさん、
弱音なんて吐いていられないのに





アリさん
いいんだイル坊、ありがとな。
続けていいか 、?


鈴木 入間
うん……!




 先ほどよりも目を凝らしてみる 
 アリさんが、どこまでも届くように , と








アリさん
……お前も俺も、
ずっと役割の中で生きてきた




アリさん
そして俺が死んで、
お前は何者でもなくなった 。








「俺様を守る役目は、俺が死んだ時点で終わった。

 俺を生き返らせる役目も、

         本当はお前にやりたくなかった」











「俺様はもう、何もお前に与えられない」




入間は息を吸う 。

そう、もうなにも与えられない













入間には、襖の向こうにいるあなたの下の名前と
この指輪の「 アリさん 」との関係を何も知らない


けれどわかる 、これはアリさんの現状の全てなのだ
















励ますことも ,  言葉をかけることも誰か伝え


何も出来ない 、 だからこそ立たせないといけない












胸の奥が少しだけ痛い ,それでも言う。



鈴木 入間
アリさんは、もう何もあげられないって





竜の翼が、ひび割れて幾重にも

枝のように裂かれていく







桜の花びらが、ぱらりと剥がれて落ちた



















アリさん
だから ,

















アリさん
お前は、お前を生きるしかないんだ 










   入間はそこに言葉を継ぎ足した

   花を咲かせるための , 添木に似ている
  







鈴木 入間
今この瞬間を、生きてほしいって 。







「 アリさん 」が横で小さく笑う。










「まぁ、だいたい合ってる」

竜の輪郭が溶けていく , 空気に染みて

視界では追えなくなる 。








襖の向こうから、
はっきりとした喉が震える
音がする 。





「 アリさん 」その音を、静かに聞いていた






少しだけ目を細める。

「 皮肉だな 」

ぽつりと言う。









入間が目の前の桜の襖から視線を外し、横目で見る。








アリさんは、続ける。








「 悪魔が魔王となる時、
  魔王は魔界そのものになる。

  魔界は魔王のために死なないが
  魔王は魔界のために死ぬことを迫られる。 」





悪魔の少年なら、みんなこぞって夢見る魔王は

言いよう一つでここまでそれを壊してしまえた 。










アリさん
でもな 、お前を庇ったあの瞬間だけは
……あれは俺様が選んだ。

















アリさん
自分で、生きている感じがしたんだ 。



































「 あの瞬間確かに 、お前が傷ついたときに


  俺様は救われたんだ  。


  だからお前はそんなに悲観しなくてもいい

  なんなら誇ったっていいんだ、 あなたの下の名前。 」


   




















アリさん
もう、大丈夫。俺は大丈夫だから ,

この先を、 生きていいんだ 。



















入間は、言葉をそのまま伝える。

「アリさんは……あなたを庇ったときだけは
 王様、だからじゃなくて ,自分で選んだって

 それに救われたから、 大丈夫。

       もう安心して、 生きていいって。」































生きる許可など 、誰かに与えられるまでもない



自分で勝手にすればいい 。




けれど、 どこまでも誰かのために生きると

だれかに 命を賭けられてしまうと ,

途端にその自分の鼓動は他人のもののように思える













身一つに、一つだけ 。
ひとつぶんの命しか繋げないのに ,


それを分け合おうと、動いてしまう 。












それは自己防衛に似ている、自己満足な贖罪でもある

















どこかの世界では、それを治すのには
カウンセラーを受けるしかないという。



心の病気と名前がついて、鬱病と人は呼ぶ 。

たくさん話して少しづつ、自分で解決するしかない
それはどこまでも地道で、誰かの手を借りながら
どこまでも孤独な果てが続く 。












でもここは魔界だ 。




魔法が住まう不思議な世界 。






なんでも出来てしまう 。
しょうがないはどこにもない,

だから自分で選ばないといけない











なにかを代償に、なんでもできる世界で。
なにかをしないことは、ただの自分の意思でしかない












それはある意味苦しいことだ。
しょうがないのではない、全て
「 自分がそうしなかった 」と結びつくから。

















けれどここは魔法が住まう世界 。


だからこそ、 
こんな不可思議な死んだはずの誰かの影が











生者の腕を引いて、 再び立つように声をかけられる

この世界はどこまでも選択を迫るが、
死は全ての終わりではない 。






















館は、春の匂いに戻っていた。

川のせせらぐ音はそれぼと遠くないのかもしれない


それと重なって桜の向こうに、襖を隔てた向こう側で

ようやく人の気配が立ち上がる。











役目を失った少女が、
自分の足で立とうとする音だった。


























《 あなたの下の名前side 》


竜が溶けていく。

あれは、私の形だった ,









恐れられていれば、理由があった
畏れられていれば、役目があった。
役目があれば、私はまだ“必要”だった























長く生きてみても、良いことはなかった。

時間は優しくない
乾かない血を、勝手に風化されていく










思い出を取り出すたび、
懐かしむより先に、正解が見つかってしまう。










あの時、こうしていれば。
あの言葉は違った。
あの沈黙は、もっと別の意味を持てた。









生きるというのは、
過去の自分を追い越していくことだった。










追い越すたびに、置いてきた自分が振り返る。
未熟なまま、必死だった自分が。









後悔は、過去を否定する行為に似ている。

あの時の私は、あれが精一杯だったのに。
それを“間違い”と呼んでしまうのが、怖かった。

だから私は、変わらない場所に籠った。












死に際だけを磨いた。

生き様は汚れる。
でも死に様は、磨ける。














最期の一瞬だけを宝石みたいに飾って、
そこだけ切り取れば、きっと綺麗だと思えた。

















私が死ねば、あの人は戻る。

そう信じれば、まだ役目があった。



















贖罪は簡単だ。

命を差し出せばいい。

生きるほうが、ずっと難しい。























──どうして俺が賭けた命が、俺のために死ぬ心積りをしてんだよ。



入間くん声で届いた言葉が、胸に刺さる。

















違う。

違うけれど、同じだった。
















あのヒトは、いつも怒るときほど優しかった。
















──俺はな。お前に死んでほしくて命を投げたんじゃない。





























       あのヒトは、私を、選んだ。


        












          私を、 。





































        最後に選んでしまった 。





















きちんと盾になれるように愛を捨てて ,
あの人の散り際はきっと魔界にとって偉大で











何代も先の魔王にまで、永劫語り継がれる幕引きは















捨てられて , 私が選び取られた 。

























その事実から、ずっと目を逸らしていた。




















選ばれた命は、
差し出すためのものではないとわかっている 。




























繋がれた鼓動は、
飾るためのものではないとも知っている

見せ物なんてもってのほか ,
他人の基準で測るなんて勿体無いのもわかっている


























──お前は、お前を生きるしかないんだ。

入間くんの声が、少しだけ揺れる。

──今を、生きていかないといけないんです。



















今 ,

それは、いつなのだろう











過去を振り返る時間でも、未来を飾る時間でもない。









胸に手を当てる。

どくん、と鳴る。

どくん、と。

私は、死に際ばかりを数えていた。













でも鼓動は、
いつも“今”しか打たない。












この痛みも。
この後悔も。
この怒りも。


















全部、今、生きているから感じる。

あの人が生かしてくれた命で。

生きている。

私はいま、生きている。
















死ぬとほざく前に。

あの瞬間、
私を庇って、
初めて“自分で選んだ”と笑ったあの人に。














誇れるように ,

この瞬間を、生きる。


















それは途方もなく難しいことだ 。















でも、 それができたら  。















畳に落ちた涙が、丸い跡を作る。

天竜の残滓が、霧みたいに消えていく。










桜の襖に手をかける。花弁の絵は、変わらない。







でも私が、変わる。

変わることは、過去を汚すことじゃない。

あの時の私を、
あの時の選択を、
抱えたまま歩くこと。





それが、生きるということ。







この思いも全部。
今、生きているから初めて気づけたこと。







あのヒトが生かしてくれたから、
それである命で。






生きてる。私はいま、生きてるんだ。












あのヒトが生かしてくれたから 、

     あのヒトがいない世界を生きられるんだ











襖が、ほんの少しだけ開く。

申し訳程度のそれだが ,
先ほど全力で天龍を呼んできた対応に比べれば
すごい進歩だと言える 。







そこから腕だけずぼっと出てくる 。
少しシュールだった



入間が少し構えてそれを見上げる ,



くしゃり、と遠慮なく入間の頭を撫でた。













乱暴でもなく、儀式めいてもいない。
ただ、確かに触れてくる。





温かくて、優しい 。








繊細な指先だった。
食事をまともに摂っていなかったのだろう

痩せているのがよくわかる 。











けれど骨の奥に、きちんと重みがある。

生きている手だ、と入間は思う。









心臓破りの時、死のうとしていたと聞いた。

もし本当に、あのまま…だったのなら、











この手は冷たくなって、
白い土の下で静かに横たわっていたのだろうか。













春を知らないままの指になっていたのだろうか。


鈴木 入間
どうして、僕を撫ででくれるんですか、?










入間は少しだけ首をすくめて、伺う。




襖の向こうで、くすりと息が揺れる。




あなたの下の名前
おや , いやだったかな、?









声音はやわらかく、甘い 。




竜を纏っていた気配とは、まるで違う。





「アリさんが、すごく不機嫌になってます……」

入間が横をちら、と見る。







誰もいないようにみえる、空間に向かって。

「あ、言わなくていいって」



空気が、拗ねたみたいに震える。

少女は目をゆるゆると, 目尻を下げて、笑った 。




あなたの下の名前
私は、今を生きているからね





桜の影の奥で、彼女は言う。






「 私の仕えた 王様は死んだ 。」

それは線引きでもある、 アリさんに

縋らないと言う宣言にも形を変える 。









指先が、もう一度入間の髪を
整えて、ぽんぽんと撫でる 。




「私には見えない」

少しだけ、寂しそうに。












「今を、生きてしまっているからね」

その言葉は、言い訳でも拒絶でもない。

ただの事実だった。

生きている、という 宣誓 







入間の隣で、アリさんは肩を落とす。




アリさん
一本取られたな、






悔しそうで、どこか嬉しそうだ。















あなたの下の名前がその影を追えたのは一度きり。





それは神の悪戯だったかもしれないし、

偶然の見間違いかもしれない 。
















あなたの下の名前
その指輪、やっぱり ,




  視線の先にきちんと縫い留めて、 確信する














 「  デルキラ様が付けていたものだね

      君の元に巡り着いたのか 、 」






鈴木 入間
………デルキラ ,



あなたの下の名前
そう、 魔王デルキラ 。




  入間がふとアリさんを見る


  その視線の先を、あなたの下の名前は追いかけた










  もう見えない、何も感じない


  そこには空気の束しかない 。








  それは変わらない ,





あなたの下の名前
その指輪、少し貸してね 



  するりと入間から指輪を外す 。


  あんなに引っ張っても取れないのに ,

  いとも簡単に指から離れていった













   指輪を握り引っ込められる腕に押されて 、


   襖がもう少し開く 。











   






あなたの下の名前はそれを見上げるように
掲げて 、 ひとつ笑みをこぼす 。
























薬指にはめて、 その手は広げられた 。















桜の襖の隙間から差す光が、その指輪の光沢に重なる

















それは王冠ほど大きくない










誓約ほど重くもない








けれど確かに、円を描いている。

終わりの形ではなく、続く形。








彼女が大切にし、
そして生かされている「 縁 」と同じ 。





























それが口元に近づいて、口付けが一つ 。




入間が見つめるその先を、
アリさんの居場所を見つめる 。



入間には、 確かに2人の視線が交差して見えた





















入間の横で、「 アリさん 」が小さく息を吐く。





怒っていない。

もう、不機嫌でもない。
    








「……ははっ 、」

誰にも聞こえない声で、呟く。











自分が守った命が、
自分のいない時間を選ぼうとしている




















指輪に落ちた口付けは、音がしなかった。

けれど入間には、
何かが静かに閉じる音が聞こえた気がした。














デルキラ様が消失したと記事が広まった日ではない




増してや、 彼が本当に死んだ瞬間でもない 。


未来の13冠が、デルキラの席に
他の悪魔を触らせる選択をしたその時代でもない 。


















この瞬間なのだ 。









入間は漠然と、 しかし思うべくしてそう思った













王の一時代は、今ここで ,

























      魔王 、デルキラの時代は


      今此処に ,終わったんだ 。






















あなたの下の名前
ありがとう , 入間くん。



鈴木 入間
……僕だけじゃないです ,
ほとんど「アリさん」の言葉だし






少し考えてから、言葉を選ぶ。






「でも、僕の言葉があなたを軽くできたなら。

 それは、…それを教えてくれた友達と、

      感じさせてくれた家族がいたからです」






足元の畳を見つめて ,











あなたの下の名前
私もその感覚が好きなんだ ,





ぽつり、 ぽつりと 。






あなたの下の名前
だから、それを教えてくれた
あなたのアムドゥスキアス・ポロのSDの名が好きだし。
教える立場の教職も、好きだ







だんだんと語尾が柔らかくなっていく





あなたの下の名前
昔の教え子が、教師になったと知ってね
本当は、すごく嬉しかった



 カルエゴ先生たちのことだろうか、

 と入間はふと思う。 そんな話を前に聞いた






襖の桜に指をなぞらせる。



あなたの下の名前
でもわたしは ,




「“お久しぶり”なんて、体裁ばかり整えて。
  
 どこか悲観して、気づかれないように警戒して。

 孤高であろうとした。 」





あなたの下の名前
でも, ほんとはね




あなたの下の名前
「嬉しい、君たちが
教師になってくれて。
誇らしいぞー!! って」





 「 抱きしめたかった。抱きしめればよかった 」




 
あなたの下の名前
私は、ほんとうに過去ばっかりだった








   入間は思わず 、咄嗟に口に出す






「今の今まで、僕を守ってくれた人、

 支えてくれた人がいたから。

 僕はいま、こうしてお話しできてます」





一拍置く。








「この魔界を、守ってくれた人たちがいたから」











その最後の言葉は、

あなたの下の名前ととある魔王に贈られていた。




















歴史はのちに彼女を酷評するかもしれない 。

魔界のためではなく、1人の女のために死んだ魔王を

後にこきおろすこともあるだろう 。



















彼らは誇り高く気高い正道を突き進んだわけじゃない




 罪に問われることにも手を汚したことがある






 それを晒される時もくるだろう 。



















それでも、 魔王デルキラの時代があった 。





彼らが魔界を守り、次に繋いだ時代があった 。


それは、 それだけは決して揺らぐことがない








あなたの下の名前
うん、そうだね 。
君から学ぶことがいっぱいだ、笑


入間の視界を、ふいに手が再び覆う。

撫でる指が、少し乱暴で、少し照れくさい。








その隙間から、入間は人影を見てしまう。

アリさんが、あなたの下の名前を見つめている。











少しも余すまいと。 焼き付けるように。

こぼさないように。











入間は、視線を下げた 。

見ないほうがいいと思った。

これは、たぶん、「アリさん」だけが

焼き付けるべき顔だから。





   





離れかけた手を、名残惜しく入間が思った瞬間 ,

もう一度、優しく添えられる。












横で、「 アリさん 」ぽつりと呟く。

誰にも聞こえない声で。












入間は、にやりと笑う 。






鈴木 入間
アリさんが、愛してるって






静寂は、 そこで終わった。




アリさん
言ってないぞイル坊!!!




「 アリさん 」は慌てる

入間はすました顔で返した 。




「だって、そういう顔してたから」

 アリさんは見事に言葉に詰まる。











  
あなたの下の名前
待っていて ,私、ちゃんと踏みしめて
「今」を生きて…また、君に会いにいくから。






    今を踏み締めて 、 また会いにいく 。


     入間くんに顔を合わせるなら、

     その時がいいと思った 。



   襖はまたピッタリと閉じられる ,

   けれどそこには きちんと春が芽吹いていた


 











   己を石に例えるなら、 やはり霞んで

   欠けた宝石が妥当だと思う 。





  





   けれどもしかしたら 、
   「 今 」を生きられなかった私の人生は




   まだまだこれからなのかもしれない 。














  もしそうなら、悲観的に石ころなんて思わずに







 









     原石だと、 そう思うのはどうだろう




















        


      そんな私に 、 問いかける
























     このままじゃ過去に囚われてばかりでは 、いられないだろうと




























        原 石 に、 問 う













にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
すみません8000文字超えてしまったので、
収まりきらなかった話と解説は次回に
ぶん回させていただきます


にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
読破された方、お疲れ様でしたー!!






にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
今回の指輪口付けシーンの
ラフ画的な落書きを
暇すぎて描いたので…
供養として載せさせていただきます🙌







にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
⚠︎ 下手絵、夢主顔面!!!






















 左は顔面ドアップです。右側はめちゃめちゃ画力が
終わってるのですが指輪に口付けを落としている描写です




にっかっかーっ(
にっかっかーっ(
ファンアートを描いてくださると
打診してくださった方のために
イラストや詳細をご紹介したいのですが
あまりにも本編が長引いてしまっているため
次回にまとめさせてください…
申し訳ないです😭💦

  次回 拝啓四年後の君へ 原石に問う after story

プリ小説オーディオドラマ