部屋を出ると、廊下は思ったよりも静かだった。
白い壁と、足音だけが響く空間。
少しだけ緊張していると、
前を歩いていた初兎が振り返る。
笑顔を浮かべる。
“普通”。
その言葉に、ほんの少しだけ引っかかる。
でも、何も言えずにただ頷いた。
案内されたのは、
小さな共有スペースのような場所だった。
ソファとテーブル。
窓から差し込む柔らかい光。
そこには、すでに何人かが集まっていた。
最初に声を上げたのは、赤い髪の少年だった。
軽い調子でこちらを見る。
初兎が答えると、その少年はふっと笑った。
視線が合う。
その目はどこか落ち着いていて、
でも少しだけ、こちらを探るようだった。
小さく名乗ると、りうらは軽く頷いた。
隣から呆れた声がする。
ソファに座っていた桃髪の少年が、ため息をついた。
そう言いながらも、視線はこちらに向いている。
短く名乗るその声は落ち着いていて、
どこか大人びていた。
少しだけ言葉に迷っていると、
柔らかい声が割り込んだ。
振り返ると、穏やかな表情の少年が立っていた。
その一言だけで、少しだけ空気が和らぐ。
自然と、そう言葉が出た。
初兎が辺りを見回す。
低い声。
いつの間にか、もう一人が部屋の入り口に立っていた。
無言のままこちらを見るその視線に、
少しだけ息を呑む。
手には分厚い紺色のハンドウォーマーをつけていた。
短く名乗って、壁にもたれかかる。
初兎が笑う。
自分で言って、自分で笑う。
りうらがそう言って、視線をこちらに向けた。
一斉に集まる視線。
少しだけ、心臓が跳ねる。
そう言われて、ゆっくりと頷く。
気づけば、少しだけ肩の力が抜けていた。
不思議だった。
初めて会ったはずなのに、
どこか落ち着く。
ここにいるのは、みんな同じ。
何かを抱えて、この場所に来た人たち。
それだけで、少しだけ安心できた。
初兎がそう言って笑う。
その言葉に、静かに頷いた。
この時はまだ、
この時間がどれほど大切になるのかを、
知らなかった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。