色々気にしないでください(好物とか)
ある日の午後。エマとノーマンは、ひそひそ声で相談していた。
「ねぇノーマン、やっぱりレイにも一回くらい酔わせてみたくない?」
「……正直、ずっと思ってた」
「だよね!!」
エマが嬉しそうにニッと笑う。
「レイだけいつも冷静だし、私とノーマンが恥かいた分、ちょっとは…ね?」
「“公平な世界”ってやつだね」
ノーマンも微笑んで頷いた。
二人は見つめ合って、こっそり拳を合わせる。
「コードネーム:R(レイ)撃墜作戦、発動だ」
📋《作戦概要》
目的:クールで感情の読めないレイを、宅飲みでほんのり酔わせて、素の反応を引き出す。
手段:
• スイーツ系のリキュールで油断を誘う
(うめ・チョコ・カシス)
• レイの好物(チーズ&ナッツ)
でつまみを完璧に
• 「俺は酔わないから」と言い張る自尊心を
逆利用
• 話題はエマとノーマンが“わざと”
甘酸っぱい思い出話をして揺さぶる
注意点:
• バレたら終わり。
• レイにカウンターを取られないこと。
• 作戦名は絶対に本人に聞かせないこと。
当日、再び宅飲み——
「というわけで、今日は久々に、珍しいお酒も取り寄せてみました〜〜!」
エマが笑顔でボトルを並べる。
「なんだこれ、やたらカラフルだな」
レイが眉をひそめる。
「梅酒チョコレート仕立てと〜、カシスバニラと〜、あとミントシロップのスパークリング割り♪」
「……甘すぎて逆に警戒する」
「レイ、甘いの嫌いじゃなかったよね?昔さ、蜂蜜舐めてたよね、農園で」
ノーマンが自然なトーンで畳みかける。
「……お前それ、覚えてたのかよ」
すかさずエマがグラスを差し出す。
「一杯だけ!乾杯しよ〜〜!」
レイはため息をついて、グラスを受け取った。
「ま、どうせ俺は酔わないし。お前らみたいに泣いたりデレデレにはならないから」
エマとノーマン、ニヤリ。
「「いただきま〜す♪」」
数杯後。
「……はぁ〜。でもエマってさ、今も変わらず突っ走るタイプだよね」
「そ、そうかな〜?」
ノーマンがふっと笑って、レイを見やる。
「でも、そんなエマを支えてたの、昔からレイだったよね。影でいろいろ準備してくれてさ」
「はぁ?」
レイは鼻で笑う。「それ、酔わせようとしてるのバレバレだからな」
「えっ!?そ、そんなつもりは……ね?ノーマン?」
「うん、ぜんぜんそんなことないよ」
ノーマンは笑顔を崩さずに言うが、目だけがめっちゃ泳いでいる。
「……お前ら、今日の空気おかしいとは思ってたんだよ。さりげなく好物ばっかり出てくるし、甘い酒で誘導してるし」
「……くっ……ばれたか……!」
エマ、苦悶の表情。
レイはグラスをゆっくり置いて、ニヤッと笑った。
「そんな手に引っかかるほど、俺は甘くないんだよ」
——が、その瞬間。
「でも、ちょっと顔赤くない?」
エマが急に身を乗り出す。
ノーマンも乗った。「耳、赤いよね?ほら、照れてる?」
レイの手が、そっと耳を押さえる。
「……してねぇし」
「いや、完全にしてる」
「今、“ちょっとは効いてるけど認めたくない”っていう顔してた!」
エマとノーマン、満面の笑み。
レイは頭を抱えた。
「……あーもう、うっぜえ。酔ってねぇっつってんだろ!!」
「はいはい、じゃあそのうちまた検証しようね〜〜?」
作戦は失敗か成功か。
明確な勝敗はつかなかったが——
エマとノーマンの笑い声の中で、珍しくレイが少しだけ口元を緩めていたのを、二人はしっかり見逃さなかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。