第4話

587
2023/03/07 12:27
あなた「おはよう!」



角名「元気だね。」



あなた「アイドルの肺活量は伊達じゃないからねぇ」


「あなたさん、今日の放課後とかってレッスンある?」

後ろの席の角名くんと雑談をしていると桑野くんに声をかけられる。


あなた「うん、大きいお仕事があるから今月いっぱいはずっと練習漬けかな。
なにか用事あった……?」
申し訳なさそうに目を合わせれば「いや!全然!!大丈夫!!!」と顔を真っ赤にして自席に戻って行った。


角名「同じクラスにいたらそりゃアイドルにも恋するよねー。」


あなた「えぇ?今のはそういうのじゃないでしょ」
軽く笑えば角名くんもニィと口角を上げるので嫌な予感がして目を逸らした。



先生「ということからここのαとβが導き出せるっちゅーわけやな。
ちなみに別解としてこの式を使っても丸やで。」
退屈な数学の授業。
ふと周りを見渡せばノートを書くふりをして完全に寝ている人や机の下でスマホをいじってる人なんかもいる。


あなた(あと5分か〜……)

かくいう私もそこまで数学の授業を熱心に聞く訳でもなくて頭の中では新曲の振り付けでいっぱいだった。


先生「お前らやる気無さすぎとちゃうか〜?」


少し呆れたように黒板から目を離し私たちを見渡す。

先生「来年は受験なんやで?自覚持ちや。」


怒る訳では無いが淡々と自分たちがやばいということを諭してくる先生に思わず背筋が伸びる。


先生「まぁ進路決めてるやつもいると思うけど、自分と向き合える時間なんてもう少ししかないんやで。」



「はーい」
頬杖をついたりしながらいまいちピンと来ていない人もいるがみんなとりあえず返事をした。


先生「ほんま分かっとんのかい」


そして何度目かの呆れて出てしまったため息が教室に響いた。



あなた(私は、この先どうなるんだろ。)


アイドルには消費期限がある。30代になってもできることじゃないし今は現役高校生のステータスがあって見て貰えてる所もある。
20代後半になってもアイドルをやっている未来は見えないし多分その頃にはグループも卒業している。

あなた(安泰な生活を送りたい、、)

これほどまでに切実な願いは無いと言うくらいにシャーペンを握りしめて誰にという訳でもなく願った。


角名「……」

プリ小説オーディオドラマ