第79話

#"楽"
125
2025/10/22 10:00 更新










あなた
『手短に頼むで』
ホークス
『分かってるよー』
あなた
『マジ単語要らないから』
あなた
『何?』
ホークス
『ピリピリしすぎでしょ反抗期??』
あなた
『反抗期なんぞ経験した事がない』
ホークス
『そういやそうだったなぁ』



会話は連合に聞かれている


なんつって、「急げ」と言っているのにホークスは呑気に通話している

早く話してくれ、私はA組の試合を見たいんだ


ホークス
『真月くんと七星ちゃんって大丈夫なの?』
ホークス
『っていう話したでしょ』
あなた
『……』
ホークス
『あなたは仕事より彼らを優先したの?』
あなた
『……優先じゃないよ』
あなた
『あの子らは"いて当たり前"な存在』
あなた
『ホークスに羽根があることと同じで
そんくらい大事な存在だから、』



ホークス
『ヒーローは大事なものを護る代償に何かを失っていくものなんだよ』



あなた
『……』
ホークス
『そういうもん職業だってわかってるよね』
ホークス
『だからそれは優先でしょ』
あなた
『言わない』
ホークス
『……、』
あなた
『ただのエゴだけどさ』



あなた
『自分の護りたいものすら護れないのに何がヒーローなん?』



ホークス
『……』



私は信じたくない


信じられない


信じきれない


やっぱり怖いんだよまだ

「失う」のがさ


何か大切なものを失うことってのは、ある日突然自分以外の人間がみんな知らない言語で話し始める、みたいな

絶望とか、恐怖とか


相手が何もかもを共有してきたホークスであるとしても





自分の大切なものすら護れなければ、人を救けるなんて行為はできない




あなた
『これ以上、失くせないんだよ』





冷たくて掠れた声が、よく響いた




あなた
『人を……誰かを、救けられるヒーローになる為には必要なことだと思う』
あなた
『……失くしたら困るものを代償に生きるのはね』



そのままその場でしゃがみ込んで丸まる


あなた
『周りからしたら全く気にされないことなんだろうけど』



あなた
『そうやって生きていれば、今だってうかうかしてられないでしょ』



今よりもっとたくさんの人を護れるように


「誰もが誰かのヒーローになれる」


そう、誰かのヒーローになるために




そうやって生きて、少しずつ成長できればな、なんて










あなた
『で話って何???』
ホークス
『あ結構話しづらいわ』



真月と七星が、クゥン、と面白がって笑った









ホークス
『連合のダウナー3人衆がさ』
あなた
『ダウナー3人衆』
ホークス
『ボス、荼毘、澄濁くん』
あなた
『あー』
ホークス
『相当あなたを気に入ってるんだけど』
あなた
『……どういう感じで?』



澄濁はまだわかる、私の兄だから

契約もしてるし手の内に収めておきたいってのもあるかもしれんけど

ホークスは私と澄濁が血の繋がっている兄妹ということは知らないはずだが


けど死柄木と荼毘に気に入られてる理由ってなんだ

死柄木とは林間合宿のあの一瞬しか会ったことないし、荼毘に関しては向こうからの好意に全然気づかなかった
「え君私のこと気に入ってたの?」って思う

基本的に表情筋仕事しないんだよなあの2人


ホークス
『あなた自身が、というより、あなたの"個性"自体を気に入ってるみたいなんだけどね』
ホークス
『俺は君のお父さんとお兄さんのことしか知らないからさ』
あなた
『……そういう・・・・ことね』



私はあの日から、「信じる」という行為自体に意味なんて無いのかもしれない、そう思ってる

信じてもいつかは無くなる




……失う




ホークスにさえ全てを話すことなんて、できなかった


あなた
『真月と七星のこと、あなたは知らなくていいし、知ろうとしてくれなくていいし、知って欲しいなんて思って無い』



兄さんですら私を裏切った


裏切った、


というのは、やっぱり私の兄なんかではなく、今まで本気でヴィランとして生きてきて、2人には私の個性の情報を売った

そういうことだ


なんなんだろうな





なんかいつも大切な人に裏切られてない?





あなた
『……私が連合に残ってあげようか』
ホークス
『それは絶対だめ』





あなた
『なんで?』










あなた
『なんでだめなの?』





私、罪人みたいなもんだし

いつもいつも失ってばかりで

誰も護れなかった





連合にいればいつでも兄さんと過ごせるし、話せるし、きっと楽しい

真月や七星以外ではじめて「友達になりたい」と言ってくれたトガとも仲良くできる

それにあの日の事件のヴィランを見つけ出せる




……兄さんに、「兄さん」ではない、あの呼び方をしてみたい




古びた響きでも、ずっと取っておいた、名前の発音




いっそのことヴィランとして生きて、ホークス、あなたに手錠を掛けて欲しい




それが一番、みんな・・・のためになるでしょ





あなた
『真面目に生きてるより』
あなた
に生きた方がいいと思うけどな』










あなた
『……ぁ』



何なんだろうな、「四宮あなた」って




どうしてこんなになるまで

ずっとなにかがぐるぐるしてる

もういいのに


あなた
『ごめん、ホークス』
あなた
『ちょっと最近、混乱、?してるっていうか』
あなた
『ごめ、……』



あなた
『、!』



あの日で流し尽くしたと思った

滲んだ床のピントが合ったと思えば、粒が落ちた跡が見える





そのくらいで、と思った

自分の情けなさに呆れる




それがさらに息苦しさを増して上手く処理できない


ホークス
『……俺はね』
ホークス
『俺と同じ世界を見れるあなたが好きだったんだよ』
ホークス
『大切な誰かを失った時にちゃんと泣ける子だからさ』



ホークス
『いつも善で在れる人間なんているわけがない』
ホークス
『それは君の真月や七星だってそう』



ホークス
『誰もが誰かのヒーローであるように』
ホークス
『誰もが誰かのヴィランなんだ』








その言葉はまるで

「人なんだからしょうがない、泣けた時・・・・に泣いた方がいい」と

背中をさすってくれるような





……私って、何のために生まれたんだろう

何のために生きてるんだろう


私が護れなかった人から見た私は、きっとヴィランなんだろうな


あなた
『…… ( ちょーダサいわ、今の私 ) 





ホークス
『真月と七星は本人・・です』
ホークス
『って澄濁くんが言ってたんだけど……どういうことか説明してくれる?』
あなた
『……』
あなた
『そのままの意味だよ』
あなた
『でもなんでホークスが知る必要があるわけ、』
ホークス
『澄濁くんの命令だから』
ホークス
『……まあ、聞いて欲しくないなら耳塞ぐけど』
あなた
『……』



そういう気遣いされても、ホークスなら羽根である程度分かるだろうに


あなた
『いいけど、今は無理、まだ護衛しなきゃいけないからさ』
あなた
『ごめん』



鼻声のままでも気にせずに謝った





A組やプロヒーロー、ホークス


大好きなんだ

大好きなのに




一瞬だけでも、ヴィラン連合の方が輝いて見えた








澄濁
『こら、あなた』
澄濁
『こんな時間にコーヒー飲むんじゃありません』










一瞬、じゃないな


もっと長い


あなた
『あ、で、頼んだよ』
あなた
私がいなくなっても・・・・・・・・・、また連絡してな』
ホークス
分かってる・・・・・
ホークス
『じゃあ、またね』
ホークス
『真月と七星のこと、異変があったら早めに教えて』
あなた
『了解』



……




やっと終わった、けど……


携帯の履歴を見て、少し絶望する


約15分の通話


あなた
……これはもしかしたら



あなた
うそやろ……



急いで目を擦って立ち上がる

駆け足で授業に戻った









あなた
クソォ!!() 



もうとっくに終わっていた


なんなら5試合目の準備に取り掛かっていて、あと少しすれば始まるところだった


あなた
カツキチャァァァン
爆豪 勝己
っ!?なんだテメ、
爆豪 勝己
歩けや!!!
あなた
歩きます!!



どういうキレ方なんそれ


と思ったことは口にせず、ビシィッッという音が聞こえてきそうなほど規律よく、そして姿勢良く歩く

緑谷くんもこんな感じで対応していたのかな
彼の背中を追いかけてる今もこんな付き合い方をしているんだろうか


うーん


この幼馴染やばー……





あなた
で、勝った、!?
爆豪 勝己
勝ったわ
耳郎 響香
しかも4・0無傷ね
瀬呂 範太
完全勝利な
砂藤 力道
爆豪強すぎて
あなた
お、おお……



まあ、爆豪「勝」己なんて名前なんだから、きっと勝ったと思っていたけど

やばいな、4・0無傷はさすがに驚く


あなた
……見たかったな〜
爆豪 勝己
ケッ
あなた
ケッて言うなよ!!



相変わらず口は悪いな

……はあ、

ざんねんだなー……







ミッドナイト
ウェンティート、どうせそんなところだろうと思っていたわ
オールマイト
動画、香山君が撮ってくれてるよ



へー


ふーん


ほーん




……へー????


え?今なんて?


あなた
……!?
あなた
……、?!……!……?!?!



言葉になっていない驚きに、私はもうとにかく、お口をあわあわするしかなかった


のであった ()









ちなみにミッナイ先生は「四宮も勝己もお互いに懐いている ( ? ) 」ことを知っていました

昼ごはんいつも一緒だし、林間合宿で拉致られた時も一緒だったし、それで四宮が仕事的に、さらに勝己を気にかけるようになったのを見ています


ミッナイ先生は生徒の中の「青臭さ」には常人の5倍くらい敏感です


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