第185話

⸜🛋⸝‍
3,539
2022/02/09 12:23
灰谷 竜胆
部屋の清掃頼みたいんだけど、
部屋から食事の注文って来た?
ホテルマン
いえ、お連れ様からは未だ入っておりません。
ホテルマン
清掃はいつ頃が宜しいでしょうか?
灰谷 竜胆
直ぐに出来るように準備だけしといて。
灰谷 竜胆
部屋の連れの状況見て、
後で内線で連絡するから。
ホテルマン
畏まりました。
では、その様にご用意させて頂きます。
灰谷 竜胆
うん、頼んだ。
ホテルマン
この件はーーが承りましたので、
また何かございましたらフロントにご連絡下さい。
ホテルマン
それでは、お気をつけてお越し下さい。
灰谷 竜胆
ありがと。
ホテルマン
はい、失礼致します。





相手の通話終了の合図で『プツリ』と電話を切る。



ホテルを前にして赤信号で捕まり、

更にスピードを落とした車が最前で停止した。



ふと車内で視線を感じて、

気になることがあるのか、

バックミラー越しに此方を一瞬見ていた運転手に目を向ける。






灰谷 竜胆
さっきからチラチラ見てっけど何?
運転手
あ、いえ、本読まれるんだなぁと思いまして。
灰谷 竜胆
本?
運転手
その本、大賞に選ばれた作品ですよね。
灰谷 竜胆
これ?





アームレストの上に無造作に置かれていた本に、

少し振り返った運転手が目配せする。





灰谷 竜胆
そーなんだ、全然知らね。





運転手に指摘された本に促される様に視線を落とした俺は、つい先程またもや兄ちゃんから押し付けられた面倒な仕事の一件を思い出す。


あー面倒くさ。
























梵天のシマの水商売店の集金を粗方終え、

俺は兄ちゃんと一緒に事務所に戻って来た。



すると、普段はフロント企業の別ビルのオフィスに籠りきりの九井が珍しく顔を出していた。



戻ったばかりの兄ちゃんと俺に、

相変わらず不機嫌な表情を隠すことなく顔に張りつけた九井が、

束になった書類を俺達に手渡す。






九井 ー
お前ら漢字知らなさすぎなんだよ。
少しは本読め。
灰谷 蘭
なんで本?漢字とか正味俺らの名前だけで良くね?いつもサインするだけだし。
九井 ー
お前らの書類にサインする以外の仕事が全部俺に流れてきてるんだが?













プリ小説オーディオドラマ