ガラスの壁を伝いながらバスルームを出ると、
丁度竜胆くんが黒い艶の入った紙袋を持って脱衣室に入って来た。
体が痛んで歩く事が漸くの状態だ。
到底裸を何とか隠したくても、そこまで上手く身体が俊敏には動かない。
近づく竜胆くんに恥ずかしさの余り、
きゅっと目を閉じて、口元を引き閉める。
脱衣室の床にぺたんと座り込むと、
竜胆くんが傍らの洗面台横に積んであったバスタオルを手に取る。
白くてふわふわのマシュマロみたいに
柔らかいバスタオル。
私の頭から被せてしまうと、
あっという間に身体まで包んで拭いてしまった。
『チラッ』
竜胆くんが私を拭く手が止まり、
ゴソゴソと音がし始める。
私は覆われたバスタオルの隙間から竜胆くんの様子を伺うと、
例の艶々とした黒い紙袋から女性用下着セットが現れた。
薄いコーラルピンクをベースに、
カップの上部には形に沿ってフリルが着いており、
ストラップにも小さなフリルの羽が配われている。
パンツの方にもふわふわとフリルが踊っていたが、
サイドは紐で結ばれているものだった。
(可愛い下着。凄く可愛い女の子が付けるやつだ。)
竜胆くんの片手にあるそれをじぃっと見つめていると、その視線に竜胆くんが気づく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。