意を決してゆっくりと扉に手を伸ばす。
扉には相変わらずだがチェーンをかけたまま。
ガチャ 、
そう音を立てて開いた扉の先には_____
虚空教の信者のなかでも 一際厄介な存在と化した
かつての友人の姿があった。
夜分遅くに訪ねて来たわりには
ただ ぼーっと 私を見つめてばかりの彼。
話題を振ってみたが、すぐあしらわれてしまった。
もうここまでくれば彼の発言が"職業病"
そう思うのは私だけではないはずだ。
それも束の間、彼が再び口を開けた ____
全く見に覚えがない謎の約束。
ごめんなさい 不破さん、
そんな話をした記憶、私にはないかも。
彼が 何か を言いかけたところ
それをわざわざ遮るように声を被せた人が1人、
気づけば扉越しの彼の横に立っていた。
その人物は頭に白い布を被っており、
こちらからだと はっきりと顔が見えない。
白い布の間から見えた翡翠の瞳。
虚空に染まったような光の無い瞳に映る私は、
心なしか自分でもひどく怯えて見えた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!