第2話

第二話:殺人カウンセラーは敬愛する
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2023/05/23 14:52 更新
 その日の夜。
 相談室には、夕木と谷口の二人がいた。
夕木真哉
夕木真哉
すみません、お忙しいのにまた呼び出して
谷口流太
谷口流太
いえ、栞のためなら。……それで、話というのは
夕木真哉
夕木真哉
それなんですけど
 夕木はおもむろに立つと、谷口の隣に丁寧に座った。
夕木真哉
夕木真哉
率直に言うと、僕はあなたを尊敬しています
谷口流太
谷口流太
え?
夕木真哉
夕木真哉
あなたは、素晴らしい資料になってくれる‼
谷口流太
谷口流太
……はあ?
夕木真哉
夕木真哉
まだとぼけたフリを? 悲しいなぁ。
だから、僕は殺人専門のカウンセラーですよ? 
見て! ここにはあんなに事件や殺人犯の資料があるんですよ?
 怪訝そうな顔の谷口に、夕木は笑顔で言い放った。
夕木真哉
夕木真哉
僕は殺人犯を敬愛しています。
だから、あなたの資料も欲しいんです‼
谷口流太
谷口流太
ちょ、待て!
 谷口は立ち上がると、夕木から後ずさった。
谷口流太
谷口流太
栞の親を殺したのは俺じゃない!
夕木真哉
夕木真哉
え? 違うんですか
谷口流太
谷口流太
なっ
夕木真哉
夕木真哉
そんなことより! 
あなたは素晴らしいカリスマ性だって持ってる!
 夕木は谷口に近づいていく。
 憧れの人を見つけたような、キラキラした目で。
夕木真哉
夕木真哉
僕もカウンセラーの端くれです。
あなたが嘘で人の心を動かしていることぐらい、
声色や仕草でわかります
谷口流太
谷口流太
俺は、そんな
夕木真哉
夕木真哉
あなたは本当にすごい! 
その若さで人心掌握に長け、世間さえも欺く。
心理に携わる者として、殺人マニアとして、
あなたのカリスマに惚れてしまいました!
 崇拝、という言葉に、谷口の目の色が変わった。
夕木真哉
夕木真哉
僕は大衆の心理もよくわかる。
僕が協力すれば、あなたはさらに有名に。
例えば……
谷口流太
谷口流太
例え、ば?
 警戒していた谷口は、もうすっかり夕木の話に耳を傾けていた。
夕木真哉
夕木真哉
 栞さんも、病気を装って殺すのは? 
 世間の注目度は爆上がりです! 
 ニュース記事の見出しは、
「女性を救う若社長、婚約者を病気で亡くした悲しい過去」!
 夕木は無邪気に笑ってみせた。
谷口流太
谷口流太
……なら、早くプロポーズしないと。
結婚しないと保険金はかけられない
夕木真哉
夕木真哉
へえ? 慣れてますね? 
前にも保険金殺人を?
谷口流太
谷口流太
まあな
夕木真哉
夕木真哉
わあ! バレないんです?
谷口流太
谷口流太
そんときの女も相当バカだったし。
女ってちょっと優しくすれば、すーぐ騙されるんだよな
夕木真哉
夕木真哉
じゃあ、
「心に傷を負った女性を救うプロジェクト」って
谷口流太
谷口流太
世間の心象がいいだろ。
それに、傷ついた女は動かしやすい。
違法な店でも、犯罪でも、あいつらありがたがって働くんだぜ?
 昼間の好青年は、最早見る影もない。
 今までの悪事を誇らしげに語る谷口の顔は、いやらしい笑みで歪んでいた。
谷口流太
谷口流太
覚えとけ。女は大バカだから、すぐ道具にできる。
あんたも顔良い方だし、利用し放題だろ。
なんなら、うちで女動かしてくれない?
 夕木はパチパチと谷口に拍手を送った。
夕木真哉
夕木真哉
女は大バカ、道具――。
今をときめくカリスマ社長の、ありがたいお言葉ですね!
 そのとき。
 ポポン、と静かな室内に電子音が響いた。
谷口流太
谷口流太
 異質な音に、谷口は周囲をキョロキョロと見まわす。
夕木真哉
夕木真哉
なんて、ね
 夕木は胸ポケットからスマホを取り出し、谷口に見えるように掲げた。
夕木真哉
夕木真哉
バカはお前だ
 その画面には、今までのやり取り――。
 谷口が悪事を赤裸々に語る様子が、しっかりと録画されていた。

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