これまでの人生は、あまりいいものとは言えない。
私の家は貧乏で、服も食べ物もろくに買えなかった。
学校では、いつもいじめの対象で、泣いて帰るのは当たり前だった。
それでも毎日頑張って学校に行った。人一倍勉強して、人一倍努力をした。
そんな努力が実ったのか、有名高である、
”優神学園(ゆうかみがくえん)”略して、
”優学(ゆうがく)”に、特待生推薦枠で入学する事になった。
両親は、泣いて喜んでくれた。
『卒業式が待ちどうしい』そうおもっていた。
-卒業式の日-
卒業式当時の日、両親の姿はなかった。
卒業式が終わり、自宅に帰った。
自宅のドアを開けると、突然クラッカーの音がした。
驚いている私を、両親はそっと抱きしめた。
両親は、私の手を引きリビングへと連れて行った。
目の前には、制服や教科書が置いてあった。
「今までごめんね。学校、頑張ってね。」
両親はそう言って、もう一度抱きしめた。
私は、零れてくる涙を抑えきれなかった。
「ありがとう。お母さん。お父さん。」
私はそう言って、強く抱きしめた。
両親の思いが、私に”勇気”と、”優しさ”分けてくれた。
「ありがとう。」
「私を産んでくれて。」
「愛してくれて。」
「育ててくれて。」
「ありがとう…」
そんな気持ちでいっぱいだった。
少しでも恩返しが出来たら。
少しでも喜んでもらえたら。
少しでも……少しでも……
でも、人生そう簡単にうまくいかない。
ちょっとずつ…ちょっとずつ…
恩を返していけばいい。
入学式が楽しみになっていた。
私が知らない世界が見えると思っていた。
でも、甘くないのが人生だ。
入学式で起きることは、まだ誰も知らないのだから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。