北斗を突き離した
言葉で、身体で、
あ、あれ?
何で
俺、??
自分で言ったことにぞわりと肌が粟立つ
忘れていた気持ち悪さが戻ってくる
全身がじとりと汗ばむ
違う
ちがう
ちがう
ちがう
もう喋らないで
こんなの、おれじゃない
数分の沈黙の後北斗がそう告げる
言葉が詰まって出てこない
“違う”って言いたい
“誤解だ”って言いたいのに
今何か言おうとするとこの気持ち悪さに乗じて北斗を傷つける言葉しか出てこない気がして
何も言えない
怖い
北斗はちょっとだけ待つような仕草をして、それから鞄を手に取った
1つ1つの動作に相当の時間をかけている
恐らく俺の“言葉”を待っているのだろうか
依然として俺の口から声は出ない
とうとうドアノブに手をかけ、それを下ろし、扉を開けた
それでも北斗は外には出ず今までの動作で1番長い時間をかけて待っている
視線と外の雨上がりの湿った空気が扉の隙間から急かすように俺の身を叩く
依然として俺の口から声は、出ない
そしてついに諦めたように外に出ていった
ガチャンと扉が閉まる音が無機質に部屋に響く
俺はその間呆然と突っ立っているだけだった
ただ、
何故俺があんなことをしたのか、と
自責と
恐怖の念に駆られていた
はっと気付いたときには当たり前だけどもう北斗は居なくて
その瞬間、金槌に頭をがんと殴られたかのように視界が歪み始め
だけれども体は何かに突き動かされるかのように走り出した
フロアに出ると丁度北斗が乗ったエレベーターが下降していったのが見えた
急いでエレベーターのボタンを押すが無機質にオレンジ色に光るだけでエレベーターは一向に来る気配がない
いよいよしびれを切らしてエレベーターの到着を待たずに階段の方に走った
それほど上の階にいるわけではないが俺にエレベーターに追い着くほどのスピードと体力があるわけもなく、半ば転がり落ちるように階段を駆け下りる
エントランスに着いた時には当たり前だけどエレベーターは空っぽで、今下りてきている様子も無かった
もう既に行ってしまっていたのだ
それでも俺を突き動かすものはまだ止まってはいなくて
諦めていなくて
何も考えずマンションを飛び出す
乾ききっていない水溜まりが足を進める度跳ね掛ける
外は雨上がりと秋の気温で随分肌寒くなっていた
その肌寒さに今まで忘れてたかのように出てこなかった涙が零れ落ちてきた
拭っても拭っても涙は留まるところを知らなくて
視界がぼやけて
でも頭は北斗を求めていて
足は無我夢中であの交差点を目指していて
泣いてるのか怒ってるのか分かんないくらいぐしゃぐしゃで
会いたくて
会いたくて
君の背中を見つけて
また、涙が、止まらなくて












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。