あのあと、私はいつの間にか眠っていた。
かけられたシーツの中に、体温と微かな痛みだけが残っている。
──その横で、松村さんは目を閉じずに座っていた。
薄暗いベッドルーム。
静かすぎて、呼吸の音まで聞こえる。
見ているのは、私の顔。
優しく笑いながら、彼は指先で私の前髪をそっとよけた。
その動きすら、触れたら壊れそうな静けさを持っていた。
そう呟いても、返事はない。
私が、静かに寝息を立てているから。
それでも、手を離せなかった。
自嘲ぎみにそう言いながら、
彼はベッドに身体を横たえた。
シーツの中で、眠る私の背中にそっと腕をまわす。
その手に力をこめた瞬間──
寝ぼけたように、私が彼の名前を呼んだ。
彼は目を閉じて、小さく笑った。
☀️朝
カーテンの隙間から差し込む光に、
私はまぶしそうに目を細めた。
重なる体温。温かい腕の中。
最初、夢かと思った。
だけど、頬に触れる指があまりにもリアルで、
思わず見上げる。
少し眠たげな目で、松村さんが私を見つめていた。
そう呟くと、彼は小さく頷いたあと、
真面目な声で言った。
その言葉に、胸がちくりと痛んだ。
それでも、
腕の中はあたたかくて、
キスした唇も、どこか名残惜しげだった。
終わらせたくない。
そう思ったのは、きっと私だけじゃない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。