side.No
「神様は、本当にいたんだ!!!」
遠い昔、彼らは神を信じていた。
暗くなると獲物を捉えることが出来なくなるし、刺客に狙われやすくなる。
だから、彼らは願った。
“暗闇をなくしてください”
と。
ある日、いつもの夜の時間になっても暗くなるということがなかった。
異常気象が起きたのだろうかと人々は慌てたが、数日待っても暗闇は一向に来ない。
そこで彼らは考えたのだ。
“神様が我らの願いを叶えてくださったのでは?”
しかしその後、不可解なことが起こり始めた。
自分たちが触っていないはずの物が自分たちの知らない場所に置いてある。
手入れをしていないはずなのに、手入れをしたあとのように綺麗になっている。
そんなことが、ある町で多発した。
彼らは怯えた。
何者かが自分たちの敷地に忍び込んでいるのではないか?
と。
監視をつけたが、忍び込もうとしている者は人間はもちろん、動物もいない。
次第にその出来事は彼らの記憶から消えていった。
しかしその9年後。
同じような事件が起きたのだ。
9年前と同じように。
今度こそ捕まえてやると奮起する者たちもいたが、結局誰が原因なのかも不明なままだった。
“神様の力を使いすぎた祟りだ”
という者も現れたが、気づいた頃にはいなくなっていた。
しかし、彼らの最初の願い通り暗闇が世界を包むことはなくなった。
“願いを叶えてくださった神様に感謝をしなければ”
彼らの想いから夜の神様である月読命は丁寧に祀られることとなった。
太陽と月は対角線上にあるといえるだろう。
もしかするとこの現象は何者かの力によってもたらされているのかもしれない。
何も知らない者たちは太陽。
知り得る者たちは月。
という風に。
もしかすると、記憶は…
それまでの記憶や存在は……
朝や夜の神々によって操られているのかもしれない。
未だにその謎は解らないままだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!