小説更新時間: 2025/10/22 22:00
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香都カワセ独立記—未明滴と月魄とバケツ—

- ファンタジー
港風が鈴を鳴らす香都カワセ。老舗「鵬庵」の実験室で、見習いの巧は強香に弱く、試料を嗅ぐたびブリキ桶を逆さにして頭からかぶる。情けない姿のまま、それでも彼は言い切った——弱点ごと勝てる香りの店を、自分たちで作る。工程を描き切る咲月は、袖を肘までまくって無言で頷く。師匠は半年という期限と数値条件を出し、短い溜息とともに小瓶を渡した。ラベルには「未明滴」。一滴で香りの“立ち上がり”が可視化され、迷いが図形に変わる。
屋台から始めた二人の前に、転ぶ勢いで仲間が集まる。くしゃみ三連発で香流を伸ばす光矢、改善メモを矢継ぎ早に挟む愛有、重い箱を担ぎつつネジ一本を締め忘れない慶士郎、口利きと段取りで人の列を作る裕妃。市庁舎の鼻審査会では雷太鼓が暴発し、議長のカツラがふわり——凍った空気は笑いでほどけ、彼らの設計は評価された。
だが箱に忍ばされた一枚の紙片が波紋を広げる——「月魄を譲って」。夜空の黒い輪郭が街路に混ざり、香の回路が乱れ始める。未明滴が描く線は、港の外へ、さらに外洋へと延びていた。香舟は霧を縫い、幻の大陸で欠けた月の欠片を探す。恐れは手順に、手順は笑いに変わる。最後の夜、黒月が市を覆うとき、巧は桶を足元に置き、咲月は回路図の余白に小さく丸を描いた——「弱点ごと設計済」。夜が明ける。扉の上の鈴が鳴り、新しい店の初香が、港の坂を静かに上っていく。
屋台から始めた二人の前に、転ぶ勢いで仲間が集まる。くしゃみ三連発で香流を伸ばす光矢、改善メモを矢継ぎ早に挟む愛有、重い箱を担ぎつつネジ一本を締め忘れない慶士郎、口利きと段取りで人の列を作る裕妃。市庁舎の鼻審査会では雷太鼓が暴発し、議長のカツラがふわり——凍った空気は笑いでほどけ、彼らの設計は評価された。
だが箱に忍ばされた一枚の紙片が波紋を広げる——「月魄を譲って」。夜空の黒い輪郭が街路に混ざり、香の回路が乱れ始める。未明滴が描く線は、港の外へ、さらに外洋へと延びていた。香舟は霧を縫い、幻の大陸で欠けた月の欠片を探す。恐れは手順に、手順は笑いに変わる。最後の夜、黒月が市を覆うとき、巧は桶を足元に置き、咲月は回路図の余白に小さく丸を描いた——「弱点ごと設計済」。夜が明ける。扉の上の鈴が鳴り、新しい店の初香が、港の坂を静かに上っていく。
チャプター
全20話
29,260文字
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