季節はもうバレンタイン。
というか、明日がバレンタイン。
もちろん、もらえるかどうかは気にしてない。
毎年必要以上にもらえるから。
でも、今年のバレンタインは特別だ。
そう陽気に言うのはボムギュ。
もちろん、ずっとテヒョンを想ってきていたのは知っていた。
あいつとテヒョンは、誰が見ても仲が良い。
真面目で孤高って感じのテヒョンと唯一話せるのがボムギュ。
あの持ち前のアホさと明るさで突破したんだろうな。
それで、いつの間にか好きに、、か。
放課後の廊下で騒いでる俺とは正反対の、
図書館で勉強しているような奴。
ボムギュも俺みたいなうるさいのと毎日絡んでると、
中性的で綺麗なテヒョンみたいな奴に惹かれるのも、
まあ、、無理はないのかもしれない。
でも、やっと行動に移すのかって......なんだか複雑だ。
もちろん、嬉しいこと。だけど、なぜか戸惑ってしまう自分がいた。
昔から幼馴染として、俺はずっとボムギュの隣にいて。
いつか恋人もできて、俺から離れるときも来るんだろうな、
なんて薄ぼんやりと思ってはいたけど。
いざその時が来たら、こんなにも寂しいんだななんて、
今更だけど思ってる。
子離れされる気分ってこんな感じなんだろうか。
キラキラした目でこちらを見つめるボムギュ。
昔から、ボムギュはおねだりをするときにこの顔をする。
告白の練習なんて付き合いたくもない、、が。
どうしてもこの顔を見ると抗えない。
目をそらすために、
ふと、周りの景色を見る。
放課後の夕焼けの教室で、二人きり。
窓からの、少しの雑音と、ひんやりした風。
周りの景色も応援してるように感じた。
溜息をつきながら、俺はボムギュと向かい合う。
椅子を引く音が、自分の耳に嫌に響いた。
ボムギュが、すう、と息を吸う。
さっきまでのふざけた空気は、もうどこにもなかった。
ボムギュが真剣な顔でこちらを見つめる。
思いのほか、鋭い目で。
告白でそんな顔するのかよって鼻で笑いたかった。
でも、、、
こんな顔、今まで見たことがない。
テヒョンだけに見せる顔を、今俺にも見せられている。
そんな焦りで、俺は冷や汗が出た。
そう言って、チョコ代わりのペンを俺に渡し、深いお辞儀をするボムギュ。
ボムギュのつむじが見える。
真剣な空気が伝わってきて、どうにも緊張した。
何か、返答しないと。
はい。
一瞬だけど、そのニ文字が浮かんできて。
頭がおかしくなったのかと、自分でも思った。
自分は絶対にその二文字を言ってはいけない立場だ、
と嫌でもそう自覚させられて。
喉のすぐそこまで来てたこの二文字を必死で抑えて、
「いいんじゃない」なんて気のいいことをボムギュに投げかけた。
それを言った瞬間、喉がひどく熱くなった。
嘘をついてばつが悪かったのか、自分のセリフが白々しくて吐き気がしたのか。
多分どっちも正解だけど、どっちも違う。
この男が好きなんだ。
どうしようもなく。
だから、喉でつかえた二文字がこんなに熱くなってる。
結局、これ以上付き合ってやる余裕なんて俺にはなかった。
ガタン、と椅子を引く音が静寂を破る。
残った少しの気力で、その言葉を絞り出した。
いつの間にか靴箱について、二人で靴を履いて帰ろうと校門まで向かって。
もう明日のボムギュの告白のことしか考えてないんだ。
目の前にこいつがいるってのに。
靴箱に上靴を入れたが、情けなくガタンと
余裕がない音を立てた。
そのまま、校門に向かって二人で直進する。
踏みしめるタイルが整列された地面が、
いつもより重く感じる。
いつもの帰り道のはずなのに、
夕焼けが紫がかって見えた。
陽気な足取りで、俺のほうなんか見向きもしないで
歩いて行くボムギュ。
後ろを振り返って、「ヨンジュニヒョン?」なんて
振り向いて笑うボムギュ。
こんな時間ももう今日が最後なのか。
もうボムギュは俺のものじゃないのか。
、、はは、もともと俺のものなんかじゃない。
あまりに歩くのが遅い俺をほっぽって、一人でスタスタと、でも陽気に先を行くボムギュ。
そんなあいつの後ろ姿を、俺は無力に見つめる。
ねえ、ボムギュ。
お前の告白、絶対成功するから。
だから、今日だけ、
愛してるって、言わせて。
誰のものでもない、今日のボムギュに。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!