前の話
一覧へ
次の話

第3話

明日で時効になる「好き」
377
2026/04/26 11:09 更新
季節はもうバレンタイン。
というか、明日がバレンタイン。
もちろん、もらえるかどうかは気にしてない。
毎年必要以上にもらえるから。

でも、今年のバレンタインは特別だ。


Beomgyu
Beomgyu
実は、今年テヒョンに告白を兼ねて渡そうと思うんだ!
そう陽気に言うのはボムギュ。
もちろん、ずっとテヒョンを想ってきていたのは知っていた。
あいつとテヒョンは、誰が見ても仲が良い。
真面目で孤高って感じのテヒョンと唯一話せるのがボムギュ。

あの持ち前のアホさと明るさで突破したんだろうな。
それで、いつの間にか好きに、、か。

放課後の廊下で騒いでる俺とは正反対の、
図書館で勉強しているような奴。

ボムギュも俺みたいなうるさいのと毎日絡んでると、
中性的で綺麗なテヒョンみたいな奴に惹かれるのも、
まあ、、無理はないのかもしれない。
でも、やっと行動に移すのかって......なんだか複雑だ。

もちろん、嬉しいこと。だけど、なぜか戸惑ってしまう自分がいた。

昔から幼馴染として、俺はずっとボムギュの隣にいて。
いつか恋人もできて、俺から離れるときも来るんだろうな、
なんて薄ぼんやりと思ってはいたけど。

いざその時が来たら、こんなにも寂しいんだななんて、
今更だけど思ってる。
子離れされる気分ってこんな感じなんだろうか。
Beomgyu
Beomgyu
……でもさ、テヒョナ、なんて言うかな
Yeonjun
Yeonjun
今さら何言ってんだよ。あいつ絶対喜ぶって
Beomgyu
Beomgyu
じゃあさ、告白の練習付き合ってよ!
ヨンジュニヒョン、テヒョナのフリして!
キラキラした目でこちらを見つめるボムギュ。
昔から、ボムギュはおねだりをするときにこの顔をする。
告白の練習なんて付き合いたくもない、、が。
どうしてもこの顔を見ると抗えない。

目をそらすために、
ふと、周りの景色を見る。

放課後の夕焼けの教室で、二人きり。
窓からの、少しの雑音と、ひんやりした風。

周りの景色も応援してるように感じた。
Yeonjun
Yeonjun
しょうがねえなぁ。一回きりだぞ
溜息をつきながら、俺はボムギュと向かい合う。
椅子を引く音が、自分の耳に嫌に響いた。
ボムギュが、すう、と息を吸う。
さっきまでのふざけた空気は、もうどこにもなかった。
Beomgyu
Beomgyu
テヒョナ。
ボムギュが真剣な顔でこちらを見つめる。
思いのほか、鋭い目で。
告白でそんな顔するのかよって鼻で笑いたかった。
でも、、、
こんな顔、今まで見たことがない。
テヒョンだけに見せる顔を、今俺にも見せられている。
そんな焦りで、俺は冷や汗が出た。
Beomgyu
Beomgyu
好きです。付き合って下さい!
そう言って、チョコ代わりのペンを俺に渡し、深いお辞儀をするボムギュ。
ボムギュのつむじが見える。
真剣な空気が伝わってきて、どうにも緊張した。

何か、返答しないと。





はい。





一瞬だけど、そのニ文字が浮かんできて。
頭がおかしくなったのかと、自分でも思った。
自分は絶対にその二文字を言ってはいけない立場だ、
と嫌でもそう自覚させられて。

喉のすぐそこまで来てたこの二文字を必死で抑えて、
「いいんじゃない」なんて気のいいことをボムギュに投げかけた。

それを言った瞬間、喉がひどく熱くなった。
嘘をついてばつが悪かったのか、自分のセリフが白々しくて吐き気がしたのか。
多分どっちも正解だけど、どっちも違う。

この男が好きなんだ。
どうしようもなく。
だから、喉でつかえた二文字がこんなに熱くなってる。

結局、これ以上付き合ってやる余裕なんて俺にはなかった。
ガタン、と椅子を引く音が静寂を破る。
Yeonjun
Yeonjun
そろそろ帰るぞ、
残った少しの気力で、その言葉を絞り出した。















いつの間にか靴箱について、二人で靴を履いて帰ろうと校門まで向かって。
もう明日のボムギュの告白のことしか考えてないんだ。
目の前にこいつがいるってのに。
靴箱に上靴を入れたが、情けなくガタンと
余裕がない音を立てた。

そのまま、校門に向かって二人で直進する。

踏みしめるタイルが整列された地面が、
いつもより重く感じる。
いつもの帰り道のはずなのに、
夕焼けが紫がかって見えた。

陽気な足取りで、俺のほうなんか見向きもしないで
歩いて行くボムギュ。

後ろを振り返って、「ヨンジュニヒョン?」なんて
振り向いて笑うボムギュ。


こんな時間ももう今日が最後なのか。
もうボムギュは俺のものじゃないのか。




、、はは、もともと俺のものなんかじゃない。

あまりに歩くのが遅い俺をほっぽって、一人でスタスタと、でも陽気に先を行くボムギュ。


そんなあいつの後ろ姿を、俺は無力に見つめる。


ねえ、ボムギュ。
お前の告白、絶対成功するから。
だから、今日だけ、

愛してるって、言わせて。
誰のものでもない、今日のボムギュに。

プリ小説オーディオドラマ