前の話
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私には推しがいる。
今をきらめく、King & Prince の平野紫耀だ。
音楽番組を見ながら今日も画面越しに言う。
ハスキーボイスにキレッキレのダンス……そして始まり終わりのトークなど見惚れるのはいつものこと。
親には私の声がうるさい!!と何度も怒られるが、それ以上に紫耀くんへの大好きって気持ちか溢れて止まない。
でも推しでは留まらないくらいの感情も芽生えてきている。
そう、恋。
もちろん歳も離れてるし、手の届かない存在なのはわかる。
それでも好きなのだ。いわゆるリアコというもの。
そんなある日。
Zzz‥ᐝ ……
目を開けた瞬間、見知らぬ部屋にいた。
さっきまで自分の部屋で、いつものようにスマホを触っていたはずなのに。
慌ててスマホを見る。
表示されていたのは、自分が知っている日付よりずっと先。
何度見ても変わらない。
どうやら私は、10年後の世界にタイムスリップしてしまったらしい。
そして、街を歩いている途中。
大きな広告に映った人物を見て、足が止まった。
そこにいたのは、ずっと大好きだった人。
平野紫耀。
中学生の私が、何度も動画を見て、雑誌を眺めて、毎日のように「かっこいい」と騒いでいた人。
――私の推し。
そして、誰にも言えないくらい本気で好きだった人。
けれど、その広告の隣にあったネットニュースの見出しを見て、息が止まった。
『平野紫耀、結婚を発表』
ビルの広告モニターでニュースが始まった。
広告と同時にニュースでも大々的に報道される。
頭が真っ白になった。
10年後の私は知らない。
紫耀くんがどんな人と出会って、どんな恋をして、どんな未来を選んだのか。
ただ一つだけ分かる。
私の「大好きな人」は、もう誰かの大切な人になっている。
Number_i、?King&Princeじゃないの……?、
放心状態で近くの公園のベンチに座る。
聞き覚えのある声がした。
振り返る。
そこにいた。
平野紫耀。
画面の中でしか見たことがなかった人が、目の前にいる。
あなたのせいで泣いてるとかは言えるはずがない。
紫耀は少し不思議そうに私を見る。
リアルで見たらオーラ半端ない。。
10年後なのに全然変わってない……むしろ若返ってるんじゃないかと言わんばかりの肌の綺麗さだし。
ずーっと凝視。
優しく笑う。
その笑顔だけは、10年前にテレビで見ていた頃と変わらなかった。
その一言だけで、泣きそうになった。
10年前の私が聞いたら、きっと大騒ぎする。
ずっと憧れていた人に「ありがとう」って言ってもらえたんだよって。
でもーーーー
その言葉だけは、どうしても少し震えた。
紫耀が一瞬黙る。
そして少し照れたように微笑む。
その顔を見て思った。
ああ。
この人は、幸せなんだ。
だったら、それでいい。
私が好きだった人が幸せなら、それでいい。
本当はもっと話したかった。
好きだって言いたかった。
でも、言えない。
だって私は、10年前のただの中学生だから。
目を閉じる……。
紫耀くんの未来がどうか幸せでありますように。
あわよくば、、私が紫耀くんを幸せにしたかったけれど。
そんなのどうだっていい。
ただ彼が、笑顔で居てくれるなら……。
次に開いた時――。
そこは、自分の部屋だった。
時計を見る。
日付は、タイムスリップする前。
スマホを手に取る。
画面には、いつもの紫耀の写真。
私はしばらくそれを眺めてから、小さく笑った。
その瞬間。
スマホに通知が届いた。
『平野紫耀、新ビジュアル公開』
思わず笑ってしまう。
10年後の彼には、10年後の幸せがある。
そして今の私には――
今しかない時間がある。
だから私は、もう少しだけ。
この恋を、大切にしていようと思った。
あなたの下の名前が現代に戻った後の未来では___
________ fin.















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!