第5話

指先で絡め取られる予感
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2025/12/07 11:46 更新
影の悪魔の事件の翌日
私は学校へ向かう足が重かった。

怖い。
けれど──アキの言葉が胸の奥で灯り続けている。
早川アキ
もう1人にはさせない。俺が守る
思い出すたび、心臓がぎゅっと痛くなる。
それは恐怖じゃなくて、もっと違う何か。

そんなことを考えながら歩いていた時だった。
マキマ
おはようございます。昨日は……大変でしたね
背中へ吸い込まれるような声。
空気の温度が変わる。

ゆっくり振り返ると──
そこにいたのは、やはり マキマだった。

朝の光を受けて微笑むその姿は、美しくて優しい。
だけど懐に刃物を隠しているような、そんな静かな危険を孕んでいた。
あなた
…なんで、ここに…?
私が小さく問うと、マキマは穏やかに目を細めた。
マキマ
あなたが心配で
その言い方はまるで、家族か、大切な恋人に向けるような声色。
私の心を包み込むように柔らかい。

でも──
その“柔らかさ”こそが恐ろしい。
マキマ
昨日、悪魔に狙われたと報告を受けました。本当に、無事でよかったです
マキマは私の頬にそっと手を触れた。

逃げようと思ったのに、身体が動かない。
…また……これ...
前にも感じた。
マキマに触れられると、身体の力が抜けてしまう。
マキマ
あなたは、普通の人間よりも“狙われやすい”みたいですね
あなた
それって……どういう……
マキマ
まだ分かりません。でも──
マキマは私の手を包み込むように握った。
その瞬間、心臓が跳ねる。
マキマ
あなたには、“特別なもの”がある
特別。
その言葉は甘い。
けれど、その甘さが罠のように感じた。
あなた
……特別、なんて……
マキマ
ええ。特別ですよ。とても
マキマは私の頬をじっと見つめ、微笑んだ。

「だから私は、あなたを守りたい」

声は優しいのに、逃げ道を塞がれるような圧。

次の瞬間──
不意に、マキマは私の耳に唇を寄せた。
マキマ
もし怖いことがあったら、早川くんではなく……私を呼んでくださいね?
あなた
あ...
息がかかる距離。
囁きが耳の奥で震える。
マキマ
あなたが誰に頼るか、私は気になってしまうんです
マキマは私の手を離すと、ゆっくりと背を向け、歩き出した。

しかし数歩進んだところで、またこちらを振り返る。
マキマ
...また会いに来ますね
その瞳は、優しく笑っているのに、
どこかで私を囲い込む檻のように見えた。

私の胸に、
甘いようで苦い、説明できない感情が刺さる。
…どうして……私なんかを...
その日の校舎はやけに静かで、
どこかから赤い瞳が私を見ているような気がした。

私はまだ知らない。
マキマの“特別扱い”は、
優しさではなく──
私を自分の掌に乗せるための 最初の鎖 だということを。

そしてその鎖は、
ゆっくり、ゆっくり、
私の心に絡みついていく。

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