第28話

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2026/02/28 01:00 更新
リビングに残された俺達の間には、
重々しい空気が漂っていた。
…どう、思う?
ふと、声が落ちた。
ちょっと低くて、落ち着いてる、優しい声。
…いむの、こと…
ん…
返事をするでもなく、ぼんやりと、
割れたグラスの破片を見つめる。

彼の本音は、いったい何なのだろうか。
理解してほしい“本心”は、どのようなものなのだろうか。

俺にはわからない。
わからない、けど———
『感情なんて、なくなっちゃった方が楽なのかもしれないね』
……
俺には、ほとけっち自身も、
自分の本心を理解していないように思える。
…ふざけんなや…っ
隣から、酷く掠れた声がした。

握りしめられた拳。
赤く染まりかけた瞳がまた揺れる。
俺は、こんなにアイシテるのに?
なんで…何が足りないんよ…
かしゃん

カッターが落ちた。

…まろは、凶器を自分から遠ざけていたはずなのに。
なんで、ここに。

まろの手が、カッターへと伸ばされる。
まろ…
なんでなん…なあ…!
っ…!?
こっちに向かってまっすぐ、
様々な負の感情が飛んでくる。

一枚の刃に込められて、全部、全部、彼の想いが。

思わず目を閉じた
———その時。
…い゛っ…
…え
刺さるような音がしたけれど、
俺の身体には、傷一つついていなかった。

恐る恐る、目を開いてみる。
っ…ないくん…!?
まろが向けたカッターは、俺でなく、
ないくんの腕に刺さっていた。

半透明の腕に、じわりと赤が広がっていく。
その色さえも、まるでガラス越しに見るみたいに淡く滲んでいた。
…ぇ…なんで…俺…
まろの瞳に、青が戻る。

手が震え始めた。
ご、ごめ…ごめんなさっ…
…だめ、って…言った
微かに出された声。

それは、弱弱しかったけれど、
強い意志を秘めていた。
…誰、も…死んじゃだめ…殺しちゃ、だめ…
っ…!
青の瞳が、大きく見開かれる。

それと同時に、まだ止まっていない赤色が目に入った。
えっと…と、とりあえず手当…!
ぉ、おんっ…
まろがカッターを捨て、
救急箱のある方へと走り出す。

かしゃん

また、音がした。

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