※演出上の関係で、背景が目に悪そうな色になっています。長居すると狂ってしまう可能性があるので、なるべく早めに立ち去ることを強く推奨いたします。
みぞれの一報がめめんともり一行に届く少し前、その霊はある場所の近くをさまよっていた。
日に日に不安定になっていく身体に危機感を覚えていた。
もう既に肉体が滅びている身だ。何故かまだ完全に成仏はしていないとはいえ、地上界に留まることができる時間には限りがある。
本来の目的はまだ果たせていない。
ある場所に行こうと試みているが、場所をド忘れしてしまった。この辺りのはずなのに、どうも目的の地点が見つからない。
どうしたものかと腕を組んで網目状のフェンスにもたれかかっていると、ある2人組が目に留まった。
何かを真剣に話しながら歩いている。Sレイマリが手に持っている箱の中身はきっとドーナツだろう。
そんな2人をぼーっと見つめていると、ガンマスと目が合った。こちらに気がついたことだけでも凄いのに、笑顔でこちらに手を振っている。
狂人すぎる。
隣にいるSレイマリはキョトンとしているから、こちらに気がついてはいないのだろう。ガンマスが一生懸命説明しているようだが、依然としてわけがわからなそうに首を傾げている。
ふたりが通り過ぎたところで密かにツッコミを入れる。
八幡宮が自分のことを視認できたことについてはいいとして、どうして精霊もどきがこちらに気づくんだ。それに驚く様子もない。さては前から気づいてたな?暗殺組のアジトにこっそり遊びに来てたのにも気づいてたってことだよな?
そうこっそり呟いた途端、ガンマスの肩がぴくっと震えた。明らかにこちらの声が聞こえている。いくらなんでも地獄耳すぎるだろあの化け物。
そんなことより、あの場所に行かなければならない。
どうしても気になることがあったのだ。
※20話、はじめてのおつかいより
あの時の花屋の店員がどうしてもあの人に似ていた気がしてならない。メテヲに聞いても、シラを切るだけで何も教えてくれない。明らかに何か知っている顔をしているのに。
なら、自分の目で確かめてやろうじゃないか。
これまで例の花屋に行かなかったのには素敵な理由がある。
花屋があった場所をすっかり忘れていたのだ。自分はこういうところの記憶力が壊滅的だ。来世ではもう少し記憶力がいい人間として生まれたい。
その花屋の扉を開け、中に入った。
店の中は真っ暗で、あかりがひとつもついていなかった。しばらく進んでいると、照明がひとりでに光を放った。どうやら人感センサーとやらが発動したらしい。思わず照明を見つめてしまう。
なんだか合点が行かない。仮に人感センサーだったとしたら、あの花屋の人はここにはいないことになるはずだが……なら何故扉が開いていたのかという話になる。
その照明から目を離し、せっかくだし花でも見ようかと辺りを見渡した。
そこで見た光景には、思わず目を疑った。
幽霊のくせに、気を失いそうになってしまった。
そこには、夥しい数の紅い花が、花屋を埋め尽くすように咲き狂っていた。間違いない。あの時買った花だ。
こちらまで気が狂ってしまいそうになる。このままだと、あの花に意識を乗っ取られてしまいそうだ。俺はその場にしゃがみ込み、本能的に目を閉じる。
あの時、花を買った時は美しく見えた花も、埋め尽くすように集まると何か恐ろしいものを感じる。
目を開けると、目の前には変わらず地獄といって差支えのない光景が広がる。細長い花びらは、自分が動くとまるで生き物のように無限に舞い続ける。
その花は、次第に俺の理性を吸い取っていく。それが全て失われたその時、俺には何かが残っているのだろうか。自我の無い幽霊には何も残らないのではないか。
俺の脳内が、身体が、全てが、恐怖に支配されていく。
それこそ幻だ。目の前に起こっていることこそが現実。
藁にもすがる思いで、俺は死に物狂いで彼女に助けを求める。
そこで、彼の意識は途切れた。
『あら?なんだか予想外の幽霊が釣れましたねぇ』
『まあ、せっかくなので“利用”してあげますか』
『この世に残した未練を、一緒に晴らしましょう♪』
﹏﹏﹏﹏
彼岸花
※花言葉 悲しき思い出、諦め、情熱、再開
誕生花 9月13日、9月20日、9月23日、11月15日
かつて墓地によく植えられていた。
※花言葉は赤色の彼岸花のもの。
めめさん登録者20万人突破しましたね…!(その割には内容が不穏すぎるんですが)
上にある彼岸花についてのことを見てピンと来た方は察しが良いですね。ずっと前から自分の中で彼岸花について触れるのは決まっていましたが、丁度この辺りがいいタイミングかと思って実行しました。
丁度1ヶ月も期間が空いた件については許してください……模試云々テスト云々で日々くたばってます。
ちなみに、本当は完結予定日が決まっていたんですが、夏休み明けすぐにテストがありやがったりして時間が取れなさそうだったので諦めました。多分来年までには終わります。恐らく……
お詫びに完結予定日だった日にジャンル行方不明の新作を出そうかと検討中です。あくまで検討なので、あまり期待はしないでください。
本当に、何となく構想を固めてる時点でまた辛めめ的な展開になるし、割と恋愛要素はあるし、扱うテーマ的になんだか叩かれないか不安ですし……(だめだめ)
そんなことを言っていても仕方が無いので、この辺りで。次回はおそらく、例の日付近。
では、また。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。