第5話

ー瞬間ー
23
2026/03/25 11:00 更新
 アンジェリーナが来てから、しばらく彼女のことが頭から離れなかった。

 綺麗だと思ってしまった。おい、俺。俺は何を言ってるんだ?彼女はフレッドのガールフレンドだった、そうだろ?それなのに急にそんなこと言って、許されると思ってるのか?アンジェリーナもアンジェリーナだ。死んだ恋人の兄弟に、のこのこ会いに来るなんて。結局大した話もしないで帰ってしまうし、本当になんだったんだ。
 訳のわからない、行き場のない苛立ちが沸く。そしてはたと気づいた。…そうだ。フレッドはいないんだ。アンジェリーナはもう、あいつの恋人じゃないんだ。じゃあ何故俺のところへ来た?やっぱり俺が双子だからなのか?他の奴らとは違う、決別なんかじゃなく、彼女は別れたくなんてなかったはずなんだ。

 悶々と考えていると、もう午後の3時を回ろうとしていた。しまった、昼食を食べ損ねた。あれから俺は、空腹を感じる日が少し増えたが、今日はそれを感じずに考え続けていたらしい。
 ようやくソファから立ち上がって、キッチンへ向かった。最近はろくに料理もしていない。パンをひと切れ手に取ってソファに戻った。齧りながら、俺はついさっきまでの自分を思い返していた。この数日間、何回同じことを考えたんだろう。そして、何回それに苛立ったんだろう。こうしてそれを振り返ったのは何回目だろう。
 ふたつ目のパンを齧り始めた時、ドアの外に気配を感じた。入ろうか、ノックしようか、あるいはやっぱりやめるべきか。そうやって迷うようにうろうろする気配だ。…アンジェリーナじゃないな。彼女なら、平気でドアを叩いてくるはずだもの。
 俺は立ち上がって玄関口に向かい、ドアに手をかけた。一瞬だけ躊躇う。誰なんだろう。その躊躇いを押し切って、ドアを少し勢い任せに開けた。

「…っ!」
相手を見て驚いた。向こうも、突然開いたドアに目を丸くしていた。
「…パーシー?」
パーシーだった。あの瞬間、フレッドの隣にいた、あのパーシー。
「…ジョージ。突然すまない、上げてもらえないか」
我に返ったパーシーは言った。
「ああ…」
俺は一歩下がってパーシーに道を開けた。

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