俺はやってしまった。
元々悪いのは俺だから、君が出ていくのなんて当たり前だろう。
あの日彼女は、朝から怒っていた。
きっと昨日の夜、俺の体に気づいたんだろう。
彼女が家を出ていくとき、いつも通りのドアの閉まる音だった。
ナチュラルに、ドアを閉めるのは嫌だ。
どうせなら極端に出ていってほしい。
いや、どうせなら、出ていかないでほしい。
でも、悪いのは俺だから、なにも言うことはできなかった。
この間、君が他の男と歩いているのを見た。
君は幸せそうに笑っていた。
君の隣はいつも俺だった。
けどなんで。
あぁ。そうだ。
俺が悪いんだ。
俺が全部。
-fin-
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!