―阿部side―
今日は、久しぶりの9人全員でのYouTube撮影がある。
9人で撮影するということ以外、特にいつもと変わりはないのに、どうしてこんなに安心した気持ちになっているんだろう。
昨日、心臓が高鳴りすぎたせいもあるだろうけど…
そんなことを考えながら、椅子の背にもたれ、机に置かれた、ある作品の台本を見つめる。
まだ、撮影が始まるまで30分近く時間があるため、撮影部屋には誰も来ていない。
だからこんな風に落ち着いて安心していられるのだろうか。それとも、メンバーが全員いて、2人きりとかではないから安心しているのだろうか。
そこまで考えて、やめよ。とブレーキをかけた。
もう、考えたくない。
ふぅっと息をついた。
すると、ドアの外から、がやがやとした声が聞こえてきた。
ガチャっとドアが開いて、2人入ってくる。
1番だと思ったのに〜と、2人が近づいてくる。
やっぱり2人は変わらず元気だな、と顔に笑みが浮かぶ。
……そう、これ。
俺、いつも通りに話せてる。
佐久間や康二相手だとこうやってちゃんと話せる。
なのに……
って、違う違う。なんでこんなにめめと結びつけそうになるかな…
急に黙った俺を見て、何か感じたのか、佐久間が心配そうに首を傾げる。
佐久間にそう言われた瞬間。ドキッと心臓が跳ねた。
やっぱり、俺、いつもと違うのかな。
そう言って、康二がくっついてくる。
心配しないで、と笑う。
そうしているうちに、またドアが開いた。
ドアから顔を出した人と、目が合う
めめが部屋に入ってくる。
その瞬間、心臓が音を立て始める
2人がめめに挨拶を返した。
俺も、挨拶しなきゃ
俺の方を見て、嬉しそうに微笑んだ。
ドキッ
そう言って、2人はワチャワチャと絡み始める。
その様子を思わずぼーっと見つめる。
すると、挨拶をしながら3人が入ってきていた。
そのことに気が付かなかった俺は
3人の声に驚いて、机に右膝をぶつけた。
その時にガンッというすごい音がしたため、その場にいる全員が俺の方を向いた。
めめが、俺の手を握って心配そうな顔をする。
そう言って、めめの手から逃げるように、パッとめめの手から離れる。
心臓が、バクバクとすごい音を立てているのが分かる。
なんでこんなに、音を立ててるの。
手を、握られただけでしょ?
なんで…だめだよ。やめて…
まだ眠そうなふっかと、朝から運転させられたのか少し疲れた様子の照が入ってきた。
そして、俺がみんなに囲まれているという状況を見て
2人は、戸惑うような心配するような表情になった。
一気に現実に引き戻された気がして、俺は慌てて笑顔を作った。
ふっかと照の言葉に、胸がきゅっと縮んだ。
心配かけてはいけない。その事しか頭になくて、大丈夫を心の中でも繰り返す。
はぁ…俺のせいで、雰囲気が暗くなっちゃったような気がする…
佐久間が、いきなり机の上に置かれた、『君が優しい目をしていたから』の台本を指さした。
今日、絶対に言おうと思ってたんだよねぇ〜と俺とめめを交互に見て、にやにやと笑う。
その言葉は、この場所で聞くとは思っていなかったものだった。
みんなからそれぞれ驚きの言葉が出てくる。
…ね?と遠慮がちにめめに話しかける。
めめは、にこっと優しく微笑んで頷いてくれた。
その笑みから、話しかけてくれて嬉しい。そんな風に言われてるように感じてしまった。
俺、漫画持ってるし〜と口を尖らせる。
佐久間の言葉に、ドキッとする。
……空気感、距離感
最近、やけにその言葉ばかり耳にする。
佐久間が俺とめめに問いかける。
うーん…作品づくりのために読みたいと思ってたし…
貸してくれるんだったら読もうかな…
そんな事を考えつつ、めめは、どうするんだろうと、
めめの方に視線を向ける。
………え?
借りる?
誰に?
妙に胸がざわついて、なぜだか、すごく不安な気持ちになる。
ツンツンとめめをつつく。
佐久間の言葉にまたドキッとする。
俺が気になった事を聞いてくれたから。
ていうか、なんで俺は、こんなに、めめが誰に借りるか気になってるんだ…
ただ事実を語るみたいにめめが言う。
その言葉を聞いて、俺は思わず、ほっと息をついた。
そう呟いたあと、佐久間が俺に近づいてきて、小声で言った。
にひっといたずらっ子みたいに笑った
よかっ、た?何が良かったの…佐久間…
なんでそんな、俺は分かってるみたいな顔してるの…
ぱっと俺から離れて佐久間が満足そうに笑う。
ありがとう。と佐久間に返事を返しつつ、佐久間の言葉に俺は動揺しまくっていた。
そして、俺らも楽しみにしてるけど…と呟きつつ、その事を知らなかった6人は、俺とめめを交互に見て、それぞれ心配そうな顔、面白がるような顔をしていた。
最終的には6人ともめめに目を止める。
6人の目が自分に向いて、めめは何かあるのかなと戸惑っている。
あとの4人もうんうんと頷いている。
戸惑っているのは、俺とめめ本人だけ。
応援なの、かな?
ラウールが言った早まっちゃだめって何?
応援なら、俺に応援の言葉はなしなの?
それは、流石に悲しい…
今度はみんな俺のことを見てくる。
しかも、めめまで
佐久間の言葉の意味も、みんなの反応もよく分からないし…
めめが俺と佐久間の会話に割って入るように、俺の名前を呼ぶ。
決意するように言うめめを見て、頭には疑問が浮かぶ。
よく分からなくて、首を傾げる
めめは、大きなため息?をついたあと、片手で顔を覆う。
そんな反応をされるとは思わず、ぱちぱち瞬きをする。
面白くて、くすりと笑みがこぼれる。
ラウールがめめの方を向いて、同意を求める。
そっと目を細めて、ふわりと笑う。
可愛い。その一言に大きく心臓が跳ねる。
カァっと顔が熱くなる。
嬉しい、の?俺が照れたことが?
……ねぇ、めめ。
めめは、違うんでしょ?
そんなつもりじゃ、ないんでしょ?
じゃあ、勘違い、させないでよ。
期待、させないでよ。
めめはそんなつもりじゃなくても、俺は……
なんて事ないように、冗談を受け流すように、見て見ぬふりをするように笑う。
認めちゃいけない。自覚したくない。
……もう、期待したくない。
気づいたところで、傷つくだけだから。
変な空気になってしまった、と思っていた時に、照とふっか、そして、部屋に入ってきたスタッフさんが空気を変えてくれた。
正直、すごく助かった。
みんなが楽しそうに撮影について話し始める。
それが、俺にとって何よりもありがたかった。
不自然にならないように、自然に会話に混ざる
佐久間が笑って返してくれる。
メンバーに混じり、会話をしている時に
そんな会話を3人がしていた事を俺は知らなかった。
いつも通り、挨拶をして始まった。
始まってしまえば、いつも通りやるだけだから、大丈夫だと思う。めめと席遠いし…
ふっかの声と共に、全員が拍手をする
遠いところから俺の方を見て、にこっと微笑む。
そんな彼を見て、心臓が飛び出しそうになった。
ぎゅっと拳を作り、動揺を隠すように、ね?っと笑う
そんな風にお互いを疑っていると、犠牲者を発表する場面になった。
そして、ゲームが進んでいき……
俺の方をみて、優しく笑った。
そして、ふっと立ち上がり、歩いてきて自然に俺の隣に座った。
えっ……
なんで、そんな…え?
そろそろだな…と思いながら口を開く。
そして、2回戦目が始まり、またもや人狼の勝ちで終わった。
全員、カメラに向かって笑顔で手を振る。
今日の撮影楽しかったなぁ…と考えると自然に笑みが浮かぶ。
スタッフさんの声が響き、カメラが止まる。
いきなり話しかけられた事に驚きつつも、ちゃんとめめに返事ができた。
自然に会話できてる、よね?
阿部ちゃんとだったら、俺も人狼側やりたいな…
なんて事まで言ってくる。
嬉しそうに、少し子供っぽい顔をして笑う。
あぁ…もう…
俺、どうしたら、いいの?
自覚しちゃだめなのに…
俺、どんどんめめの事……
それぞれ、まだ仕事があったり、用事があったりするみたいだ。やっぱりみんな忙しいな…と思いながら、みんなを見送る。
今、部屋に残っているのは、俺とめめと佐久間だけ。
バタッとドアが閉まる。
すると、俺の気持ちが一気に楽になった。
足の力が抜けそうになり、慌てて椅子の背を掴んだ。
ふと、めめが出て行ったドアを見つめた。
優しくて、丁寧なめめの割に、結構雑なドアの閉め方だったな…
時間ないのに、ギリギリまでここにいたのかな。
なんて考えが頭に浮かんだ。
しかし、すぐに、流石にそれはないと否定した。
それはないと分かっているのに、どうしても、めめの事が気になってしまう。
佐久間にバレないように、小さく息をついた。
そして、そっと佐久間の方を向いて
そんな風に聞いてみた。
ずっと無言だったら、さっきみたいに心配されるかもしれないって思ったから。
なんだか色々と疲れた。そんな事を思いながら、荷物をまとめ始める。
ある台本に一瞬目を止めて、すぐに鞄の中に入れた。
荷物をまとめながら、佐久間の呼び掛けに相槌を打つ。
思っていた返答と違って、佐久間の方を振り返った。
そこには、いつもの明るく元気な佐久間と違う、真剣な表情をした佐久間がいて、俺をじっと見つめていた。
そして、佐久間はゆっくりと口を開いて、こう続けた。
Episode 4 / 勘違いのままで
いかがだったでしょうか!
今回少し、長くなってしまいました…ごめんなさい🙇🏻♀️
最後まで読んでくださり、ありがとうございます💓
そして!皆様!アンケートへのご協力!
ありがとうございました🙇🏻♀️🙇🏻♀️
アンケート結果はこちらになります!


ということで、
・『君が優しい目をしていたから』は本編中で書く
・名前や設定は作り込む
で、本編を書いていこうと思います!!
よろしくお願いします💓
それではぜひ!
Episode5も楽しみにしていてください!











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。