リョウside
朝、目が覚めた。……おかしい。昨日、あんなに泣いて頑張って薬を飲んだのに。体は昨日よりもっと熱くて重くて、頭の中がガンガンと鐘を鳴らされたみたいに響いている。
シオン「リョウ、おはよう。体調どう……? って、顔すごく赤いね」
隣の敷布団で寝ていたシオンヒョンが、すぐに僕の異変に気づいて起き上がった。
シオン「リク、悪いけど昨日リビングに戻した体温計、もう一回持ってきて」
リク「起きた? はい、体温計」
リクヒョンが持ってきた体温計を見た瞬間、昨日の恐怖がフラッシュバックする。
リョウ「……っ!!! いやだ!!! 測らないっ!!! 病院いかないもん!!!」
僕は最後の力を振り絞って、布団を頭まですっぽり被った。
あんなに頑張ってお薬飲んだのに。みんなと一緒に寝たのに。なんで熱が下がってないの?
恐怖と理不尽さで、涙が次から次へと溢れてくる。
ジェヒ「リョウ、お願いだから布団から出て? 苦しかったら余計しんどいよ」
サクヤ「リョウ……お医者さん怖くないように、僕もずっとついていくから……」
みんなが布団の上から優しくなだめてくれるけど、僕は絶対に外に出なかった。すると、ガサッと容赦なく布団が力ずくではぎ取られた。
ユ「はい、お出かけの時間。昨日シオニヒョンと約束したでしょ。わがまま言わないの」
ユウシヒョンが、僕の体をひょいと抱き上げた。
リョウ「いやだぁぁ! ユウシヒョン離して!! いかない!! お家がいい!!」
ユウシ「暴れる元気があるなら大丈夫。ほらリク、上着着せて」
リク「リョウ、ごめんね。でもこればっかりはダメなんだ。シオニヒョン、おんぶ頼んだ」
リクヒョンに無理やり上着を着せられ、僕はそのままシオニヒョンの大きな背中におんぶされた。
どれだけ泣いて暴れても、お兄ちゃんたちの決意は固くて、そのまま車に乗せられてしまった。
病院の待合室
リョウ「ぐすっ、……うぅ、……ヒョン、お家かえろ……?」
シオン「帰らないよ。大丈夫、すぐ終わるからね」
病院の独特な消毒液の匂い。静まり返った空間。奥から聞こえてくる、他の子供の泣き声。
すべてが怖すぎて、僕はシオニヒョンの胸に顔を埋めて震えることしかできなかった。
僕の反対側には、ユウシヒョンが腕を組んで、心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。
ユウシ「リョウ、そんなに震えるなって。ヒョンたちがついてるんだから大丈夫だよ」
ユウシヒョンが僕の頭をポンポンと叩いてくれるけど、恐怖は全然消えない。
そんな時、診察室のドアが開いて、看護師さんがカルテを持ってお出かけしてきた。
リョ(……あそこに入ったら、絶対に痛いことされる……っ!)
恐怖が完全にピークに達した。頭が真っ白になって、僕はシオニヒョンの腕を無理やり振りほどき、勢いよくソファーから立ち上がった。
シオン「え? リョウ!?」
フラフラする足で、とにかく入り口の自動ドアに向かって走り出す。だけど、高熱でまともに力が入らない体じゃ、数歩しか進めない。すぐに後ろから、ガシッと僕の腕が掴まれた。
ユウシ「こら、どこ行くの」
ユウシヒョンだった。ユウシヒョンは僕の腕を掴んだまま、回り込んで僕の正面に立つと、そのまま僕の体をひょいと持ち上げて抱きすくめた。
リョウ「いやだぁぁ! ユウシヒョン離して!! お家帰る、帰るのーーっ!!」
ユウシ「帰らない。ここで逃げたらもっとしんどくなるだけでしょ。はい、戻るよ」
ユウシヒョンは暴れる僕をガッチリとホールドしたまま、ため息をつきつつも、どこか愛おしそうに僕をソファーへと連れ戻した。そして、自分の膝の上に僕を座らせて、後ろからギュッと抱きしめる。
ユウシ「……全く、熱あるくせにどこにそんな体力残ってんの。暴れるな、しんどくなるよ」
リョウ「ぐすっ、……ユウシヒョン、のいじわる……」
ユウシ「いじわるじゃない。リョウが心配だから言ってるの。ほら、シオンヒョンと俺で挟んでてあげるから、おとなしくして」
ユウシヒョンに後ろから包み込まれ、横からはシオンヒョンが僕の手をぎゅっと握って背中をトントンとさすってくれる。二人がかりの優しい看病に、僕はもう逃げるのを諦めて、お兄ちゃんたちの胸の中で声を上げて泣きじゃくった。
看「リョウ様、診察室へどうぞ」
ついに、非情にも名前が呼ばれてしまった。
リョウ「……っ、ヒョン、たすけて……っ!!」
ユウシ「ほら、行くよ。ずっと一緒にいてあげるから、頑張ろうね」
ユウシヒョンに背中を押され、シオンヒョンに手を引かれて診察室に入る。優しそうな先生が待っていたけれど、白衣を見ただけで心臓がバクバクと音を立てた。ユウシヒョンが僕を丸ごと抱き上げるようにして、診察室の椅子に座らせてくれる。
医「あー、ちょっともしもしさせてね」
冷たい聴診器が胸に当たった瞬間、ビクッと体が跳ねた。
すぐ横で、シオンヒョンが僕の右手を強く握りしめてくれる。
医「喉も真っ赤に腫れてるね。これはお薬を注射で入れた方が、早く楽になるよ」
『注射』。その単語を聞いた瞬間、僕の理性の限界は完全に迎えた。
リョウ「いやだっ! 注射はぜったい無理! お家帰るーーっ!!」
椅子から飛び降りて逃げ出そうとする僕の体を、後ろから伸びてきた力強い腕がガッシリと包み込んだ。
ユウシ「リョウ、ダメ。動いたら危ないでしょ、お座りして」
リョウ「いやだぁぁ! ユウシヒョン離してっ! 痛いのいやだぁあ!!」
パニックになって大暴れする僕を、ユウシヒョンは自分の胸に僕の背中をピタリと押し付けるようにして、太ももと両腕を完全にロックした。
耳元でユウシヒョンの低くて落ち着いた声が聞こえる。
ユウシ「大丈夫だから。俺を見て。シオニヒョン見てな」
シオン「そうだよリョウ、ヒョンの顔見てて。目瞑っちゃおうね」
シオニヒョンが僕の視界を遮るように手を添えて、もう片方の手で僕の手をギュッと握る。
逃げられないようにユウシヒョンに後ろからガッチリ固定されたまま、看護師さんが僕の腕を出した。
チクッと、冷たくて鋭い痛みが走る。
リョ「う、ぅああん!! いだぁぁあい!! ユウシヒョンいやだぁぁあ!!」
あまりの痛さと怖さに、僕はわんわんと声を上げて泣きじゃくった。
ユウシヒョンの服を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら暴れるけど、ユウシヒョンは「痛いね、頑張れ、頑張れ」って、僕の耳元でずっと優しく呪文みたいに呟きながら、絶対に体を離さなかった。
医「はい、終わり。本当によく頑張ったね」
先生が可愛いキャラクターのシールを貼ってくれた時には、もう涙で視界がボロボロだった。
注射が終わった瞬間、ユウシヒョンが僕を固定していた力を緩めて、今度は正面から僕をぎゅーっと 抱きしめてくれた。
ユウシ「よしよし、終わった終わった。リョウ、すっごい偉かったじゃん」
シオン「本当に凄かったよ! かっこよかった!」
医「はい、じゃあ今日はおしまいね。リョウくん、お家に帰ってからもちゃんと朝と夜に飲むお薬を出しておくからね」
先生が笑顔でそう言った瞬間、ユウシヒョンの胸に顔を埋めていた僕の体がピクッと固まった。
リョウ「……え? おくすり……?」
恐る恐る顔を上げると、先生の手元には何種類かの錠剤と、あの苦い粉薬の袋が書かれた処方箋があった。
リョウ「いやだ……! お注射がんばったのに、お薬もあるの……? 粉のやつ、にがいから絶対いやだぁ……っ!」
せっかく注射が終わって泣き止みそうだったのに、また涙がポロポロと溢れてくる。そんな僕の頭を、ユウシヒョンが呆れつつも愛おしそうに撫でた。
ユウシ「ほら、またワガママ言わない。お薬飲まないと、また熱が上がって明日もここに連れて来ちゃうよ?」
リョウ「うぅ……っ」
シオン「大丈夫だよリョウ。さっき薬局でジェヒたちが買ってきてくれたイチゴ味のゼリー、宿舎にいっぱいあるでしょ? それに混ぜて、シオニヒョンが飲ませてあげるから」
シオニヒョンが優しく微笑みながら、先生から処方箋を受け取ってくれた。
ユ「ほら、頑張って飲んだら、またみんなでリョウの部屋で寝てあげるからさ。ね?」
リョ「……ほんと? 誰もリビング行かない……?」
ユ「うん、約束。だからちゃんとお薬持って帰ろうね」
ユウシヒョンの「また全員で一緒に寝てあげる」という言葉に、僕は泣きべそをかきながらも、しぶしぶコクンと頷いた。
待合室では、残りのメンバー全員が心配そうな顔で立ち上がって待っていた。
サクヤ「リョウ!! 大丈夫だった!?」
リク「お疲れ様。リョウ、頑張ったじゃん」
ジェヒ「本当に偉かったね。早く宿舎帰って寝よう」
みんなに囲まれて宿舎に帰ると、注射のおかげか、さっきまでの激しい頭痛が少しずつ和らいでいるのが分かった。
宿舎のベッドに横になると、今度は心地よい眠気が襲ってくる。メンバーたちが代わる代わる僕の髪を撫でたり、冷えピタを貼り替えてくれたりしている。
ユ「ほら、頑張ったから頭撫でてあげる。早く元気になりな」
ユウシヒョンが少し照れくさそうに、でもすごく優しい手つきで僕の髪をずっとなでてくれた。
リョ(……病院、すっごく怖かったし大泣きしちゃったけど)
ユウシヒョンも、みんなも、誰一人として僕を置いていかないで、ずっと傍にいてくれたから、なんとか耐えられた。今度こそゆっくり目を閉じながら、僕は大好きなメンバーの温かさに包まれて、深い眠りに落ちていった。
一応リョウくんの体調不良はこれで終わりです!
多分番外編もだします
お楽しみに!











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。