下校時刻
遠くに聞こえる他の人のざわめきを感じながら、下校する。
ここら辺、あんまり人通りないんだよな……
家の前に差しかかれば、そんなことないんだけど…
──ブーンッ
この道には珍しく、前から黒塗りの車が猛スピードで走ってくる。
そして、僕の真横で止まった。
驚く間もなく、中から男の人たちが出てくる。
横を過ぎ去ろうとすると、腕をグッと掴まれる。
背中を押され、車に乗せられそうになる。
鋭い声と共に、僕は掴まれてない方の腕を引っぱられ、その人に抱きすくめられる。
花織は腕を広げて僕を庇う。
今までとは違う変貌のしように、目を見開いて固まる。
男が花織の肩を押し、花織は後ろに倒れる。
それでも花織は立ち上がって、また僕を庇う。
男たちは車に乗り、また全速力で去っていった。
途端、花織は力が抜けたように座り込んだ。
そう言って歩き出した途端、「いた…ッ」と、後ろで声が聞こえた。
振り向くと、花織が足首を抑えて座り込んでいた。
パッとみ、なんともないけど……
捻挫って普通赤くならないっけ?
気づくとそんな言葉が口を打って出た。
僕を守るために……という思いが強かった。
花織はスクッと立ち上がり、僕の背中に飛び乗る。
おっも…………………
僕が体力ないだけかもしれないけど……ッ
まあいいや……花織のことはめっちゃ重い重荷だと思おう……←おい
僕は息を切らしながら、花織の家へと向かった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!