防音室。
壁一面、吸音材。
中央にマイク。
少年が立っている。
ヘッドホンをつけ、目を閉じる。
声と同時に赤いランプがつく。
歌声が流れる。
透き通る声。
力強い声。
揺れない音程。
でも、感情は、削られる。
波形がモニターに映る。
声で感情を揺らし、声で命令を浸透させる。
それが彼の役割。
歌い終わる。
拍手はない。
評価されるだけ。
少年はヘッドホンを外す。
何も言わない。
喉にそっと手を当てる。
この声だけが、自分のものだと確かめるように。
_______________
同時刻_____施設外
ウジが端末を睨む。
侵入開始。
すぐさま鳴り響く警報。
しかし、いつもと違い銃声はない。
代わりに、音。
スピーカーから歌が流れる。
甘く、柔らかい旋律。
だが、足が止まりそうになる。
スングァンが息を詰める。
脳に直接くる特殊な音。
ジュンが思わず壁に手をつく。
視界が揺れる。
ディノの呼吸が浅くなる。
スンチョルが叫ぶ。
ミンギュが即座にスピーカーを撃ち落とす。
だが音は止まらない。
施設全体が共鳴している。
中央、防音室。
少年は歌い続けている。
命令だから。
止める理由がないから。
逆らうことは、許されない。
扉が爆破され、煙につつまれる。
少年は目を開ける。
驚きはない。
ただ、指示を待つ目。
感情の並は一定で、操り人形のようだ。
ジョンハンとジョシュアが静かに近づく。
ほんの少し焦点が合っていないが、
ドギョムの視界に2人が入る。
一瞬。
ほんの一瞬。
ドギョムの喉が動く。
答えない。
代わりに、歌を続けようとする。
すかさずウジが機材に飛びつく。
スンチョルが前に出て、ドギョムの前に立つ。
距離は一歩。
近い。
だが触れはしない。
部屋が静まる。
ドギョムの目が揺れる。
スンチョルの声は低い。
強い。
だが、怒りはない。
その言葉が、ドギョムの心にストンと落ちる。
喉が震える。
完全な静寂。
初めて、自分の意思が見えた。
ウジが装置を破壊する。
機械音が消える。
ドギョムはヘッドホンを外す。
耳が痛い。
静かすぎて、怖い。
スングァンが一歩近づき、隣に立つ。
距離が近い。
敵の距離ではない。
あくまでも、逃げ道を塞がない距離。
空気が、少し緩む。
ドギョムの目に、初めて戸惑いが生まれる。
同時に、怒号が外から響く。
時間は待ってくれない。
研究員が銃を構える。
ミンギュが前に出る。
完全に盾になる。
ウォヌが位置を指示。
バーノンが撃ち落とす。
ミョンホが煙を張る。
ホシが突破口を作る。
完ぺきな連携。
声ではなく、背中で守る。
ドギョムはそれを見る。
誰も一人で戦っていない。
自然に距離が近い。
触れなくても、繋がっている。
スンチョルが手を差し出す。
強引ではない。
選ばせる手。
ドギョムはその手を見る。
長い沈黙のあと、そっと掴んだ。
暖かい。
確かな鼓動。
スンチョル何も言わず、握り返す。
距離はゼロになる。
だか、不安は残る。
それでも、信頼の色がはっきりと見え始めていた。
外へ出て、ドギョムは空を見上げる。
静か。
命令がない。
歌えとも、止めろとも言われない。
ドギョムは小さく息を吸う。
短いフレーズ。
優しい旋律。
今度は兵器じゃない。
ただ、大好きな歌を歌う。
綺麗な透き通る声。
12人が静かに聴き入る。
誰も命令しない。
誰も評価しない。
ただ、見守る。
13人。
やっと、揃った。
誰ひとり、欠けていない。
まだまだ夜は深い。
だが、孤独はもう、ない。
_______________
これにて二章完結となります。
最後に番外編ひとつだけ載せます!!
今まで読んでくださり、
ありがとうございました꒰՞ ܸ. .ܸ՞꒱♡

























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。