どうやら、悩んでいるのは俺だけじゃないらしい。
あめてゃの、すち江の辛い過去を聞いて…、
いや、すち江に関しては、現在進行形でもあったか。
あめてゃは親からDVを受け、
すち江は妹と差別され。
とんでもない親だな、どこも。
そんなの、俺も一緒じゃないか、なんて。
そんな弱音は心に押しとどめて。
俺は廊下を歩いて、歩いて。
まだ本音のようなものを聞いたことがない
あの子の元を訪れる。
食堂のような場所でテーブルを拭くみこに
声をかける。
純粋無垢な笑顔。
そこにはなんの悩みもないように見える。
だけど、きっと違う。
メイドたちがここに来た理由。
なつ美は言っていた。
と。
すち江とあめてゃが保護された理由がそれなら、
みこも多分、そういう理由があるんだろう。
こて、と小首をかしげるみこ。
その瞳は、酷く澱んでいるように見えた。
だから私が悩むべきことはない、
そう言い切るみこ。
一番周りを見て、メンタル面を支えてくれるみこ。
それは俺も知ってる。
ずっとみこの、そして『みこと』の、
そういう姿を見てきた。
でも、俺が言いたいのはそうじゃない。
虚ろをつかれたように目を丸くするみこ。
すち江のことも、あめてゃのことも、
俺は知ってる。
そして、その心の傷は一生完全に癒えることはない。
でも、二人は俺を信じて隣にいてくれる。
で、みこは?
唯一身体を重ねていないみこ。
身体を重ねることが、正義とも、
俺がして欲しいとも言ってない。
でも、一線を置いてるみこは、
一番全ての悩みを抱え込んでるはずだ。
まだぽかんと口を開けたまま、
考え事をするかのように視線を外す。
やがてみこの視線が俺の元に戻ってきて、
みこは微笑みながら言った。
屈託ない笑顔。
なんで……って聞くのもおかしいけど、
…今のみこに、嘘はなさそうだった。
過去の話を、していいのかが分からなくて、
なにか発言しようとしては口を噤む、
というのを繰り返していると、
ぴと、と頬にみこの指が触れる。
それだけで俺の身体は従順にはねる。
みこは、ふふ、と苦笑いをし、
首裏をくすぐってくる。
みこの指先が止まって、手のひらが肩に置かれる。
ほんのちょっと高いみこの視線。
視線が交わされて、温まる心を
ぎゅっと服越しに握りしめる。
その心を癒したのは、メイドたちか?
______________いや……。
メイドたちを殴っていたとされている桃乃。
そのせいであめてゃの、
みんなの心が揺らいだのは事実。
桃乃が、追い詰められていたんだって、
そんなことを言っても、心の傷は癒えやしない。
だけど、みんなのことをよく見てるみこは、
そんな桃乃の変化にもちゃんと理由があると、
わかっていた。
『なにか、あったんですよね。』と、
俺が何も言わずとも察してくれたみこ。
(第十三話 秘密 参照)
みこは、ほんとに誰よりも、
周りが見えてるやつだった。
そんな彼女が壊れないために、
俺は精一杯、愛さなきゃ。
そういってはにかむ。
なにも、心配は要らなかったらしい。
俺は一度みこと別れ、自分の部屋に戻る。
開けたドアの先。
俺の部屋のベッドの端に腰掛け、
枕をぎゅぅ、と抱きしめてるいるがいた。
いるは驚いたようにぱっと枕を元の場所に
ササッと戻して立ち上がる。
俺はぽんぽん、と
少しばかり背の低いいるの頭を撫でる。
ムスッとした顔になったいる。
俺は軽く笑ってから、
……あれ、てかいるに本なんか貸したっけ?
勝手に取ってったのかな?
いるが指さした古びた分厚い本。
それはたしか、『黒野守』、
という名前の神にまつわる話だったか。
いるは少し暗い顔にになって言う。
それを問い詰めるのはなんとなく憚られて、
俺はそのまま視線を落とす。
視線をあげると、いるは少し目を細めて
口をまっすぐにして閉じていた。
それは微笑んでるとは言い難い表情だった。
向こうの『いるま』の性格を考えると
なにか隠してる可能性もあるけど、
それだけ言って部屋を出ていくいるに、
かける言葉はなかった。
side 🌹📢
メイドたち専用の部屋で、
私たちは椅子に座りながら話す。
みこは掃除に、すち江は買い出しに行ったらしく、
ここにはいない。
桃乃様の名前をだすと、
ちょっと前までは部屋を出ていっていたあめてゃ。
今では桃乃様の名前を出すと心配そうに
顔を覗き込んでくる。
すっかり小悪魔になったあめてゃ。
私が誰にも言ってないはずの情報を
何故か打ち明けてきた。
え、ほんとに言ってないよね私。
いや、え?なんでよりにもよって
桃乃様が知ってるの、?
…死にた。
ニヤニヤしながらそう言ってくるなつ美。
元気になった…確かに、そうかもしれない。
私が空気を切り裂くように言うと、
二人は真剣な視線を向けてくれる。
私はほんとは、桃乃様が好き好んで
殴ってるわけじゃないことくらい、
とうの前に、わかってた。
私は知っていることの一部を、
三人に話し始めた。
アンケート
誰攻め?○○×桃🔞
赤
11%
水
5%
紫
44%
緑
21%
黄
18%
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。