第17話

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2025/03/11 13:08 更新
狐の面を被った物のけ…じゃなかった人はにやにやしながら木の上から私達を見下ろしている。よくよく見れば確かに身長もそこまでないし、声も若い。子供なのかな?
北条時行
諏訪大社の長寿丸というものだ。折り入って我が郎党に加わって欲しい
逃げた木の枝から落ちそうになりながらも礼儀として自身の名を名乗る殿
風間玄蕃
ハッ、長寿丸だぁ?


北条の坊々だろ、お前
「「「!?」」」


見抜かれた!?
その情報どこから…
風間玄蕃
小笠原に売ったら幾らになるか
不味い。もしこの人が殿に危害を加えるようなら…


考えていることはみんな同じのようで臨戦態勢に入るが…
風間玄蕃
慌てんなボンクラども
そう言って懐からじゃらりと出したのは四つの小銭入れ…
亜也子
...え?あれ?
弧次郎
ん?あの財布って...
「「あ"ーーーーーーー!」」




慌てて自分の荷物を確認するがやっぱりなかったらしい。スリというより狐だ。

やっぱり物の怪じゃないのだろうか
風間玄蕃
俺の技は安くない。口止め料として百貫文!仕事 一回につき百貫文!
あなた
えーっとつまり…
一文=一円

一貫=1000文



百貫文=1000万円





「「高ッッッッ!」」
風間玄蕃
ビタ一文 負からんぞ〜
金のみが俺とお前を繋ぐ糸だ
けたけたと高笑いする狐の少年。何だか話してることが別次元過ぎて…

何か、商売上手な子なんだなー…それに、頼重様があれほど評価する技…一度目にしておきたい…

多分逃若党に本当に必要な人材だと思う
あなた
(でも、それにはやっぱりお金が…)
とは言えこのやり方は十中八九脅迫だ。私達がこれに応じることがなければ殿が…いや諏訪全体がおじさんに売られてしまう
北条時行
か、金...金で、いいのか...?
風間玄蕃
ああ
金額を目の当たりにしてショックに打ちひしがれているであろう殿は顔を上げる
北条時行
国じゃなくて?
風間玄蕃
ン???クニ???
多分私もこの人と同じ顔してたと思う
北条時行
君は...なんって無欲なんだっっっ!!
あなた
(ええええええ~!?殿ぉ?意味が分かりませんけどぉおお!?)
満面の笑みで抱き着く殿に私は目で訴える
北条時行
我が郎党になり、天下の奪回を助けてくれれば君は功臣!甲斐や武蔵の一国与えられて当然なのに!!
風間玄蕃
カイ???ムサシ???
駄目だ、もっと別次元の奴がいた。キラキラフンスフンスと熱弁する我が殿は可愛いけれど元天下人の金の価値観にはどうしても理解が及ばない
現金払いでホントにいいの?
風間玄蕃
え…
兄様が天下を取って...一国を任されたら...何万貫文も入るよ?

毎年♡
風間玄蕃
ウ"...ッッッ
あなた
(あちゃ~これは…)
弧次郎
分かる分かる、博打だもんなぁ。その場限りの小銭か、将来か

でもな...こ〜んな夢のある
博打に乗らないのかぁ〜?

天下人の子の誘いなんて

この先、一生無い
風間玄蕃
ぬああああああああああ!
二人とも乗ってるな…
あなた
なんつー暴挙…

でも貴方も先払い限りだとか言ってないもんね。しょうがないよ
私の最後の一言がとどめを刺したらしく、ガックシと肩を項垂れる
その日の夕方、私と雫ちゃんと頼重様は貞宗の叔父さんの拠点へと立つ一行の背中を見送った
一時はどうなるかと思ったけど無事兄様達を送り出すことができましたね
あなた
まだ油断はできないよ。みんなが無事で帰ってくるまで
私は、前線に立って戦うことができない。私が戦に赴けば、すぐに殺されることは目に見えている。


でも、
あなた
皆の背中ばっかり見てると…くるものがあるね
姉様…
私は、本当にここに居ていいのかな…なんて



一緒に戦えない気持ちが分かるのか、雫ちゃんが心配そうに見つめている
諏訪頼重
…あなたの下の名前様
あなた
諏訪頼重
風間玄蕃。彼を目の当たりにして…どんな印象を持ちましたか
あなた
え?

まあ、盗人って聞いてたから…凶悪犯なイメージがありましたけど





想像よりずっと幼いなって…
あなた
ああいう子供って純粋なんですよ。周りの大人に言われた通りの形になろうとする

彼もまた若い。生き方も理にかなっているし、そういう意味でも悪い奴じゃないと思うんです
頼重様がほくそ笑んでいるのを横目に私は沈む夕焼けをじっと見つめていた





















あなた
で、これはどういう了見ですか。頼重様
諏訪頼重
まあまあ、生きて帰ってこられた訳だし…
翌日、彼らは生きて諏訪大社に戻ってこられたものの、血だらけの殿を見て私は顔が真っ青になる。突然目に飛び込んできた非日常。この感覚、前にもあったよ
私が頼重様を睨むと優しく諭される
諏訪頼重
あなたの下の名前様、これが私達の時代のやり方なのです
あなた
分かってるよ。でも…
一人の人間として、幸せを願ってはいけないの?
北条時行
姉上
治療を終え、背中に大きく包帯を巻いた殿が振り向き私に話しかけた
北条時行
私は当初の目標を達成し、暫くの間諏訪の民を守ることができました。私はそのことを誇りに思っています
結局、あの綸旨は倉庫ごと一緒に燃やされ全てぱぁに。しかもそれに続いて京では手柄を申請する者が増えているそうで、管理しきれなくなったため綸旨の発行はしないということに。
結果的に諏訪は安泰の時を過ごすことになった。今でも諏訪大社で祝いの宴を開き賑やかな声がここまで聞こえてくる
北条時行
姉上の心配する気持ちもよく分かります。

ですが、一度生かされた命、次は守ることに使いたい。郎党の皆、諏訪の民、貴方のことも全部丸ごと愛しているから

だから帰って来た暁には、

沢山褒めて下さい

沢山叱って下さい


それが私が今ここに生きている証になる
はあ、本当どこからそんな立派な言葉が思いつくのか…

まだ安心はできない。現代の倫理観とのギャップにまだ戸惑うこともあるけど…



殿の傍なら、安心して私の体を捧げられる。



私は初めて見るカリスマというものに興奮して身を震わせた
あなた
ばかもの。よく頑張りました。
殿を後ろからぎゅっと抱きしめると、殿は満足気に体を揺らす。尻尾が見えた気がした

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