狐の面を被った物のけ…じゃなかった人はにやにやしながら木の上から私達を見下ろしている。よくよく見れば確かに身長もそこまでないし、声も若い。子供なのかな?
逃げた木の枝から落ちそうになりながらも礼儀として自身の名を名乗る殿
「「「!?」」」
見抜かれた!?
その情報どこから…
不味い。もしこの人が殿に危害を加えるようなら…
考えていることはみんな同じのようで臨戦態勢に入るが…
そう言って懐からじゃらりと出したのは四つの小銭入れ…
「「あ"ーーーーーーー!」」
慌てて自分の荷物を確認するがやっぱりなかったらしい。スリというより狐だ。
やっぱり物の怪じゃないのだろうか
一文=一円
一貫=1000文
百貫文=1000万円
「「高ッッッッ!」」
けたけたと高笑いする狐の少年。何だか話してることが別次元過ぎて…
何か、商売上手な子なんだなー…それに、頼重様があれほど評価する技…一度目にしておきたい…
多分逃若党に本当に必要な人材だと思う
とは言えこのやり方は十中八九脅迫だ。私達がこれに応じることがなければ殿が…いや諏訪全体がおじさんに売られてしまう
金額を目の当たりにしてショックに打ちひしがれているであろう殿は顔を上げる
多分私もこの人と同じ顔してたと思う
満面の笑みで抱き着く殿に私は目で訴える
駄目だ、もっと別次元の奴がいた。キラキラフンスフンスと熱弁する我が殿は可愛いけれど元天下人の金の価値観にはどうしても理解が及ばない
二人とも乗ってるな…
私の最後の一言がとどめを刺したらしく、ガックシと肩を項垂れる
その日の夕方、私と雫ちゃんと頼重様は貞宗の叔父さんの拠点へと立つ一行の背中を見送った
私は、前線に立って戦うことができない。私が戦に赴けば、すぐに殺されることは目に見えている。
でも、
私は、本当にここに居ていいのかな…なんて
一緒に戦えない気持ちが分かるのか、雫ちゃんが心配そうに見つめている
頼重様がほくそ笑んでいるのを横目に私は沈む夕焼けをじっと見つめていた
翌日、彼らは生きて諏訪大社に戻ってこられたものの、血だらけの殿を見て私は顔が真っ青になる。突然目に飛び込んできた非日常。この感覚、前にもあったよ
私が頼重様を睨むと優しく諭される
一人の人間として、幸せを願ってはいけないの?
治療を終え、背中に大きく包帯を巻いた殿が振り向き私に話しかけた
結局、あの綸旨は倉庫ごと一緒に燃やされ全てぱぁに。しかもそれに続いて京では手柄を申請する者が増えているそうで、管理しきれなくなったため綸旨の発行はしないということに。
結果的に諏訪は安泰の時を過ごすことになった。今でも諏訪大社で祝いの宴を開き賑やかな声がここまで聞こえてくる
はあ、本当どこからそんな立派な言葉が思いつくのか…
まだ安心はできない。現代の倫理観とのギャップにまだ戸惑うこともあるけど…
殿の傍なら、安心して私の体を捧げられる。
私は初めて見るカリスマというものに興奮して身を震わせた
殿を後ろからぎゅっと抱きしめると、殿は満足気に体を揺らす。尻尾が見えた気がした












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。