体育館の天井は、今年もやけに高く感じた。
気味が悪い程、綺麗に整列した生徒たちの背中を、
眺めながら、私は静かに息を整える。
春休みという名の実習訓練が終わり、この春から中学2年生。
世間一般的には学年が上がるという、ただそれだけのことなのに、
私の胸の中はどこか落ち着かない。
壇上の校長が、いつもの調子でそう告げる。
表向きは、ごく普通の私立中学校の始業式。
優等生然とした挨拶に、誰も疑問を抱かない。
けれど、この場所で、私達が何を学んでいるのか、
私達以外は知る由もない。
その言葉に、私は唇を噛む。
生きたい。
ただ、それだけなのに。
小声で呼ばれて、顔を上げる。
隣には、幼馴染の中也。
幼い頃から変わらない、少し不機嫌そうな横顔。
私はハッと前を向く。
どうやら、無意識に校長を睨んでしまっていたらしい。
深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「怒りに任せてはダメだ」と自分に言い聞かせながら。
気を取り直して、姿勢を正す。
すると、前列の端で、誰かが欠伸をするのが見えた。
視線を向けると、包帯を巻いた少年ーー太宰 治が、
退屈そうに校長の話を聞き流している。
その瞳が、不意にこちらを向く。
目が合う。
彼は、その端正な顔立ちで、
形の良い唇の端を少しだけ上げ、笑った。
まるで、私の中身を全部見透かしているみたいに。
大方、一介の女性は皆、骨抜きだろう。
しかし、こんなことで乱れる私ではない。
いつも通り、何事も無かったかのように、静かに目を逸らす。
その先には、窓の外に映る、桜の木。
花びらのひらひらと落ちる様子が、私には恐く見えた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。