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第1話

壱。
74
2026/01/31 14:27 更新




体育館の天井は、今年もやけに高く感じた。








気味が悪い程、綺麗に整列した生徒たちの背中を、








眺めながら、私は静かに息を整える。








春休みという名の実習訓練が終わり、この春から中学2年生。








世間一般的には学年が上がるという、ただそれだけのことなのに、








私の胸の中はどこか落ち着かない。







ーーー本日より、新学期が始まります。








壇上の校長が、いつもの調子でそう告げる。








表向きは、ごく普通の私立中学校の始業式。








優等生然とした挨拶に、誰も疑問を抱かない。








けれど、この場所で、私達が何を学んでいるのか、








私達以外は知る由もない。








ーーー生き残る必要はありません。







使える存在になってくださいね。ニコッ








その言葉に、私は唇を噛む。








          生きたい。








ただ、それだけなのに。







中原 中也
中原 中也
あなたの下の名前








小声で呼ばれて、顔を上げる。








隣には、幼馴染の中也。








幼い頃から変わらない、少し不機嫌そうな横顔。







中原 中也
中原 中也
顔。








私はハッと前を向く。








どうやら、無意識に校長を睨んでしまっていたらしい。








深呼吸をし、心を落ち着かせる。








「怒りに任せてはダメだ」と自分に言い聞かせながら。







(なまえ)
あなた
ーーーごめん、ありがと







中原 中也
中原 中也
ん。








気を取り直して、姿勢を正す。








すると、前列の端で、誰かが欠伸をするのが見えた。








視線を向けると、包帯を巻いた少年ーー太宰 治が、








退屈そうに校長の話を聞き流している。








その瞳が、不意にこちらを向く。








目が合う。








彼は、その端正な顔立ちで、








形の良い唇の端を少しだけ上げ、笑った。








まるで、私の中身を全部見透かしているみたいに。








大方、一介の女性は皆、骨抜きだろう。








しかし、こんなことで乱れる私ではない。








いつも通り、何事も無かったかのように、静かに目を逸らす。








その先には、窓の外に映る、桜の木。








花びらのひらひらと落ちる様子が、私には恐く見えた。









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