第11話

正体不明の影を追え
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2026/02/07 07:00 更新



莉犬が連れ去られてから、数時間が経過した

外の雪は激しさを増し、すべてを白く塗りつぶそうとしている

しかし、シェアハウスのリビングは、かつてないほどの熱量と緊張感に包まれていた
なー<Խ
……見つけた、これだ

静寂を破ったのは、パソコンの画面を凝視していたななもり。の声だった

メンバーがモニターの周りに集まる
なー<Խ
ジェルくんが言っていた、莉犬くんを無理やり
連れて行った黒いワンボックスカー
なー<Խ
防犯カメラの映像をリレー形式で追ったら
山間部にある古い化学薬品工場の跡地に
向かってる
なー<Խ
……でも、そこは表向きには廃墟のはずなんだ
さとみ<Խ
廃墟か……怪しすぎるだろ

さとみが低い声で応じる。彼は手元のスマートフォンで、独自のルートから得た情報を照らし合わせていた
さとみ<Խ
なーくん、俺の方でも出たぞ。その工場の
所有権、数年前にペーパーカンパニーに
転売されてる
さとみ<Խ
実態は『アニマ・プロジェクト』とかいう
胡散臭い私設研究機関だ。出資者は不明だが
かなりデカい金が動いてる形跡がある
るぅと<Խ
アニマ・プロジェクト……

るぅとがその名を口にすると、部屋の空気がさらに冷え込んだ
るぅと<Խ
莉犬のあの耳…それと、ジェルくんが言っていた
『人体実験』という言葉
るぅと<Խ
すべてが繋がってしまいますね。彼らは莉犬を、
自分たちの『成果物』として回収しに来たんだ
ころん<Խ
ふざけんなよ……

ころんが拳を強く握りしめ、震える声で呟いた
ころん<Խ
莉犬くんは物じゃない。僕たちと一緒に笑って、
一緒にご飯を食べて、一緒に寝て…
ころん<Խ
あんなに温かい、僕たちの唯一無二の
仲間なんだよ! それを『成果物』なんて…
絶対に許さない

ジェルはソファの端で、怪我をした頭に包帯を巻きながら、ななもり。が示した地図を食い入るように見つめていた
ジェル<Խ
なーくん。その工場の場所、詳しく教えてくれ。
俺、今すぐ行く
なー<Խ
待って、ジェルくん。その体じゃ無理だよ

ななもり。が制止するが、ジェルの決意は揺るがなかった
ジェル<Խ
無理でも行くんや! 莉犬は今、俺よりずっと痛くて
怖い思いをしてる
ジェル<Խ
あいつを一人にするわけにいかん。俺が
連れて帰るって……あの日、雪の中から
抱き上げた時に決めたんや

ジェルの強い眼差しに、ななもり。は静かに頷いた
なー<Խ
分かった。でも、一人で行かせるわけないでしょ
俺たち全員で行くんだ

ななもり。はホワイトボードに工場の概略図を書き込み始めた
なー<Խ
相手は莉犬くんを連れ戻すために手段を
選ばない連中だ
なー<Խ
正面から行けば返り討ちに遭う。さとみくん、
潜入用の装備はある?
さとみ<Խ
ああ。ガキの頃のツテで、護身用の警棒もどきなら
いくつか用意した…まさか、こんなところで使う
羽目になるとはな

さとみが不敵な笑みを浮かべる

その裏には、大切な家族を傷つけられたことへの静かだけれど苛烈な怒りが燃えていた
なー<Խ
るぅちゃん、ころちゃん。二人は工場の
セキュリティシステムに介入できる?
るぅと<Խ
やってみます

るぅとが瞳を鋭く光らせる
るぅと<Խ
僕の特製ウイルスを流し込めば、監視カメラの
映像をループさせるくらいはできるはずです
るぅと<Խ
ころちゃん、通信の攪乱をお願いできますか?
ころん<Խ
任せて。僕のゲーム実況用の機材を改造して
あいつらの無線をノイズだらけにしてやるよ
すとぷり学園の「仲良し5人組」は、今、一つの戦闘集団へと変貌していた

幼稚園からずっと一緒だった

お互いの弱さも強さも知り尽くしている

だからこそ、誰かが欠けることなんて耐えられない
なー<Խ
いい? みんな。目的はただ一つ。莉犬くんを無事に
連れ戻すこと
なー<Խ
そして、二度とあんな奴らに手出しをさせないこと

ななもり。の言葉に、全員が力強く頷く
ジェル<Խ
……莉犬

ジェルは、莉犬がいつも抱えていた赤いクッションを一度だけ強く抱きしめ、それを丁寧にソファに置いた
ジェル<Խ
待ってろよ。今すぐお前を、あの暗い場所から
引っ張り出してやるからな

深夜。5人を乗せた車は、激しい雪の中を、山奥の廃工場へと向かって走り出した

その先にあるのが、莉犬の凄惨な過去と、恐るべき実験の真実であることも知らずに___



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