非常事態が発生しました。
かいくんがもう寝ております。
いやもうこの際そんなことはどうでもよくて、
そんなかいくんが今なんと僕の肩を使ってすやすやと眠り始めたのです......
ンー?ドウユウコトー?
僕は飲み始めてから今に至るまでのかいくんの様子を振り返った。
最初はかいくんも僕に口答えするぐらいには余裕だったと思う。
顔は少し赤かったものの、さほど酔ってはいなかった。
その後、僕と2pの僕の話が(バチバチに)ヒートアップし始め、落ち着いた頃に『そういえばかいくん一言も喋ってへんな』と気付いて声をかけると......
完全にお酒でできあがったかいくんがそこにいた。
僕の声に少し反応したのか、『むぅ....』っと言ってもぞもぞと動き出したかいくんが行き着いた先こそが僕の肩であったのだ。
そうして今に至る。
向かい側に座っていた2pの僕がかいくんの横に腰を下ろす。
そう言いながらかいくんのほっぺを指でつんつんする2pの僕。
そう言いながら目線を僕の方に向けられる。
意地の悪い笑みを浮かべる2pの僕。
悲しそうにするのほんと上手いなこいつ
こいつには勝ってほしくない!
....絶対とんでもない命令なことは明らかだ。
ふと寝息が聞こえる。
気持ち良さそうに身体を預け寝ているかいくん。
.....そういえば、かいくんは最近忙しかった。
今日のこともあり、かなり疲れているのだと思う。
このままリビングで寝かせてもカーペットが敷いてあるので問題はない。
けれどいくらなんでも家主をここに転げておいて自分はベッドにというのは気が引ける。
_できるならふかふかなベッドで寝てほしい。
僕はそっとかいくんを抱き上げた。
いくら身長差があるといえど、それなりに筋力がある成人男性を自分の肩の高さまで上げるのにはかなりの筋力が必要となる。
まぁ認めたくはないが筋力のない僕には横抱きが限界だった。
....もう少し僕も鍛えようかな
抱き上げるときに少し揺れたせいか、かいくんが身動いだ。
ぼんやりと目を開けて喋るかいくん。
呂律はまるで回っていない。
...まずい、この状況はまずい。
抱き上げられていることに文句を言われるかもしれない。
文句どころか暴れられるかもしれない。
だらしなく垂れ下がっていたかいくんの腕が僕の顔の方に伸びてくる。
_やばいっ!多分殴られるっ!
両手はかいくんを抱き抱えているので使えない、せめて目は守りたい!そう思い僕は咄嗟に目を瞑った。
ぺたっ
重い拳が来ると思っていたので僕は予想外にも優しく僕の頬に触れる指先に戸惑った。
....どうやらこいつはかなり寝ぼけているようだ。
普段は見せないようなふにゃっとした笑顔を見せるかいくん。
_殴られなくてよかったと安心しているはずなのに、まだ心臓がばくばくしている気がするのは何故だろう。
返答ともならない声で返された。
僕が下ろそうと屈もうとすると突然くいっと服を引っ張られる。
ぷく~っと頬を膨らませて訴えるかいくん。
そんなことしても可愛くなんかないからなこの厨二病。
厨二病は実は可愛いなんて設定今じゃどこの漫画でも定番すぎて俺には効かないからなそんなん。
嬉しそうに頭を押しつけてすりすりしてくるかいくん。
くそっ....!可愛いなんて思ってな....
僕は早足でその場を離れ、寝室のドアを少し乱暴に開けた。
流石に乱暴にベッドに転がすのは忍びないので、ゆっくりベッドの上に下ろす。
仕方ないので布団もかけてやる。
....すーすーと寝息を立て気持ち良さそうに眠っている。
悔しいが寝顔はかなり綺麗だった。
...くそっ!よだれでも垂らしてろよ
寝てる姿をこんな近くで見たことがなかったので、
意外と睫毛は長いほうなんやーとか肌に気を使ってるだけあって腹立つなーとか余計なことばかり考えてしまう。
ぼーっとかいくんの顔を覗いていると、いきなり強い力でベッドの方に引き寄せられた。
かいくんがえげつないゴリラみたいな力で僕をベッドの方に引っ張ってきたのだ。
僕は今かいくんのすぐ横で寝転がっている。
抜け出そうにもゴリラに匹敵するほどの強い力に腕を捕まえらているため動けない。
動いたらむしろ力を強められそうで怖い。
僕、細いんやから腕折るとかやめてな?
とか無駄なお願いを心の中でしてみる。
寝言だろうか?
少し険しそうな表情で何か喋っている。
....まるで誰かが離れていこうとするのを呼び止めるそんな言葉だった。
_僕たちは今まで出会いと別れを繰り返した。
メンバーはもちろん離れていくリスナーも。
でもそれは悪いことではなくてきっとお互いに必要であったもの、歩み続ける強さをくれたもの。
悲観して前に進めないようじゃきっと目指すところどころかどこにも行けやしない。
立ち止まる余裕なんてどこにもなくて、今は立ち止まることができないくらい楽しいのも事実。
_それでも1人になると僕も考えてしまうことがある。
僕が考えるようなことなら同じ初期メンのこいつだって考えてしまう時があるなんてわかっていたけれど、普段から厨二病でポンコツな姿を見るとどうも忘れてしまう。
....お前、もっと吐き出せや、そのための俺達やろ....
KAITOの背中に手を回し、軽くぽんっと叩く。
今は寝てるから強くしないでやる。
_俺が情けない背中見せてたら叩くのがお前で、
お前が情けない背中を見せてたら叩くのが俺やろ。
うちのグループは皆お人好しなやつばっかりや。
メンバーのために無理して頑張ろうとするやつばっかやから困った話やけど、その分他のメンバーが無理しそうとするとすぐ気付こうとするやつばっかなのも事実や。
_だから安心して寝ろ。そんで明日はまたその馬鹿面を晒して厨二病っぽいことでも考えてろ。
背中をさすってやるとまた穏やかな表情へと戻っていった。
寝息もすーすーとまたたてはじめた。
穏やかな表情を見てほっとしたらなんだか瞼が重たく感じた。
酔いが回ってきているのだろうか。
そんなに飲んではいないはずなのに。
動かないとと思うが布団が意外にも心地よくて動きたくない。
よし、後5分したらこの掴まれている腕をなんとかしてベッドから抜け出そうと考え、目を瞑った。
_まぁ人間、後少しとか明日になったらとか言った時は結局時間通りに動かないまま何もしないことが多い。
例外で有言実行を成し遂げる人はいるにはいるがそんなのはごく少数。
例外でもなんでもない僕はそのままあっさり眠りに落ちたのであった。
つい先ほどまでにぎやかであった部屋で一人ぼそりと呟く。
グラスにいれて持っていったし、色味も似ているので間違えたのだと考察する。
9%のお酒を飲んでいたためかいくんは想像以上に早い段階で潰れてしまった。
もう少しだけ酔っていく過程を見ていきたいと思っていたのでそこだけは少し残念だなと思った。
....かいくんを代わりに運ぼうかと言ったあの時の彼の顔といったらこの先ネタとしてイジっていける程度には面白かった。
なぜあんな顔して自覚していないのだろう。
_俺のものなんでみたいな顔しちゃってるのに
彼が自分の気持ちに気付くまでは時間がもう少しかかりそうだと思いながら残りわずかなお酒を呷った。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!