人々の目を盗んで、自分の知らないような道を通って、逃げた
足に怪我が何個もできた
それでも走って走って、逃げ続けた
それでも、自分の人生というのは残酷だ
運命からは、逃げれない
男が腕を掴む
そして、乱暴に服を脱がせ、鳥居のもとへ連れて行こうとする
今までにないくらいに大きく叫んで、刀を男に向けた
キッと睨みつける
…が、男はビクともしない
まるで恐怖という感情が抜け落ちているかのようだった
そこで一つ、あることを思い出す
感情が欠如している
それが、偶々恐怖の感情だったという
それだけのことだ
そしてふいに、あることを思った
この者たちは本当は此のような事はしたくはないのではないか
女や子供がいて、それらを守るために己を捧げようとしているだけではないのか
くるりと背を向け、足を揃えてトコトコと一つの場所へと向かう
そこは、生贄が捧げるという鳥居の先にある、大きな穴
そこに身を捧げ、怪異として姿を変える
そうして、他の怪異に新たな怪異が誕生したことを伝え、一時的に現れなくするのだ
愛する人は、体を拘束され、身動きが取れなくなっている
嗚呼、彼処にいるのは翔雨の子孫かな
泣いて喚いて、叫んで、狂って………………
そういって、魁斗は自分の身を捧げた
それがこの村での最後の、結婚式だった
怪異は、村に現れることはなくなった
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!