エージェントから若手研究員時代、彼には半年しかいなかったが、指導役の先輩がいた。
薄紫色の長い髪がふわりと揺れて、自分を惑わすような毒の花の香りをまとわりつかせてくる。
濁った赤と青の瞳はこちらを離さず見てくる
パラドックス博士という人は、顔を顰めた。
彼は髪のケアを怠らず、いつもサラサラであったために、グラスはいつも疑問を抱いていた。
そして何よりも過去も所属も何も掴めなかったのもあるだろう。
彼はいつも優しい笑みを浮かべて、グラスを見ている。時にはかっこ悪いところもあるが…
何もかも掴めなくて、怖い。
食堂にて、2人はスプーンとフォークを使い、食器をカチャカチャと鳴らしながら食べている。
グラスのフォークを持つ手が止まる
パラドックス博士の口はなんとも回る 財団への悪い評価は多少なりとも見逃されるが、それが何度も口から出ると、疑う他ないだろう。
向かいにいるパラドックスは肘をつき、目の前にいるグラスに目を見開いて、ため息をつく。
パラドックスは席を立ち、自分のテーブルの上に置かれたプレートを片手に食堂の奥の方へ進んでゆく
ただ静かに言葉を吐いた。
サイトー17は襲撃を受けていた。蛇の手構成員による襲撃だ。
パラドックス博士は……スパイだったことにグラスは気付いた。
現実を認めたくなかった。ガラスが割れ、机の書類や本棚などは倒れ散乱している薄暗い部屋でそう思った。
差し伸べてきた手を振り解き、グラスは白衣のポケットから拳銃を取り出す。引き金に指を置いて、いつでも射殺が可能になっていた。
パラドックスは振りほどかれた手を見て、子供のようなあどけない表情でグラスを見た。
グラスは顔を顰める。拳銃を持つ手は震えている。
パラドックス博士の髪にはいつも紫色のイヌサフランの造花が付いていた。彼はその造花を髪から外してグラスに向けて軽く放り投げた。
あの日の出来事は、さほど会議では取り上げられなかった。規模が最小限なこと、脱走したオブジェクトもいないからだった。
それから、まるで事件なんか無かったかのように時間は、季節は流れて行った。月日も、年月も経っていた。
けれどそれは今でもグラスの心に重くのしかかっている。
グラスは考える。
もし、決断出来たその日が、ようやく先生を撃ち殺す日なのだろうか、財団職員として…彼は蛇の手構成員として…。引き金を引く日が先生の壊れた鳥籠から抜け出せる日なのだろうか。
グラスは机の引き出しから取り出したイヌサフランの造花を眺める。
グラスの心はまだ揺らいでいる。
造花を中に入れ、ただ引き出しを閉めた。
私のヘッカとして書きました。
タイトル: Dr Glass' Personnel File
作者: Pair Of Ducks
ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/dr-glass-personnel-file
ライセンス: CC BY-SA 3.0
タイトル: The Pair Of Duck S File
作者: Pair Of Ducks
ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/the-pair-of-duck-s-file
ライセンス: CC BY-SA 3.0













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!