第26話

かつての貴方
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2025/07/12 11:08 更新
エージェントから若手研究員時代、彼には半年しかいなかったが、指導役の先輩がいた。
パラドックス
やぁ、グラス。今日はよく眠れたかい?
サイモン・グラス
眠れました。エージェントでもあのようなことはあったので…。
薄紫色の長い髪がふわりと揺れて、自分を惑わすような毒の花の香りをまとわりつかせてくる。
濁った赤と青の瞳はこちらを離さず見てくる
パラドックス
それなら良かったよ。君の体調が第1だ。なにより、私は君の事を大事に思っているからね。
パラドックス博士という人は、顔を顰めた。
パラドックス
…グラス、髪ボサボサすぎやしないか? 正直心配だ。
サイモン・グラス
これでも髪洗ってるんですよ…。
彼は髪のケアを怠らず、いつもサラサラであったために、グラスはいつも疑問を抱いていた。
そして何よりも過去も所属も何も掴めなかったのもあるだろう。
彼はいつも優しい笑みを浮かべて、グラスを見ている。時にはかっこ悪いところもあるが…
何もかも掴めなくて、怖い。
パラドックス
さて、グラス、さっき私がやったやつが定期心理検査だ。 あぁやって一人一人の職員のケアを行うんだよ。
サイモン・グラス
そうなのですね…。でもいささか雑すぎやしませんか?
パラドックス
この財団には人の心がないやつが多すぎてな。一人一人聞くだけでも話の無駄になるんだよね。
食堂にて、2人はスプーンとフォークを使い、食器をカチャカチャと鳴らしながら食べている。
サイモン・グラス
それは有り得ないと思いますが…
グラスのフォークを持つ手が止まる
パラドックス
いいや、ほとんどの奴らが研究書類に目を通して、SCiP一人一人のことを何も見てやいない。
パラドックス
あんな杜撰な管理でここが回るのかと不思議に思うレベルだ。
パラドックス博士の口はなんとも回る 財団への悪い評価は多少なりとも見逃されるが、それが何度も口から出ると、疑う他ないだろう。
サイモン・グラス
パラドックス先生、あなたは…あなたは、本当に財団に忠誠を誓っていますか?
サイモン・グラス
職務に責任を持っていますか?
サイモン・グラス
私はそれを知りたいのです。
向かいにいるパラドックスは肘をつき、目の前にいるグラスに目を見開いて、ため息をつく。
パラドックス
あのねぇ、グラス…君は真面目すぎる。常に忠誠を誓ってても気疲れするもんなんだよ。これは。
サイモン・グラス
…貴方はだらしない上に、そうやって業務を片付けるのですね?
パラドックス
あぁ、君の長い説教が始まる前に私はこの席を立つよ。
パラドックスは席を立ち、自分のテーブルの上に置かれたプレートを片手に食堂の奥の方へ進んでゆく
サイモン・グラス
あの人と言う人は…。
ただ静かに言葉を吐いた。
パラドックス
ねぇ、君も"蛇の手"に来ないか?きっと君なら気に入るよ。ずっと私の元で働けるし、何より君も職員の死を直視せずに済むさ。
サイトー17は襲撃を受けていた。蛇の手構成員による襲撃だ。
パラドックス博士は……スパイだったことにグラスは気付いた。
現実を認めたくなかった。ガラスが割れ、机の書類や本棚などは倒れ散乱している薄暗い部屋でそう思った。
パラドックス
ね、来ないか?私も君のことをこころよく思っているんだ。それに…
サイモン・グラス
…来ないでください。どうか
差し伸べてきた手を振り解き、グラスは白衣のポケットから拳銃を取り出す。引き金に指を置いて、いつでも射殺が可能になっていた。
パラドックスは振りほどかれた手を見て、子供のようなあどけない表情でグラスを見た。
パラドックス
…グラス。なんてことを言うんだ……。
パラドックス
あぁ、いや…いや…俺たちの関係はここで切れてしまったんだね?
グラスは顔を顰める。拳銃を持つ手は震えている。
パラドックス
…分かってくれなくて悲しいな。
パラドックス博士の髪にはいつも紫色のイヌサフランの造花が付いていた。彼はその造花を髪から外してグラスに向けて軽く放り投げた。
サイモン・グラス
…先生
パラドックス
その花、グラスにあげるよ。もう俺にはいらなくなったんだ。…もし、立ち直れる日が来たならば、返しにおいで。
あの日の出来事は、さほど会議では取り上げられなかった。規模が最小限なこと、脱走したオブジェクトもいないからだった。
それから、まるで事件なんか無かったかのように時間は、季節は流れて行った。月日も、年月も経っていた。
けれどそれは今でもグラスの心に重くのしかかっている。
サイモン・グラス
…先生、今でも思うのです。もしあの時、手を取っていれば僕はずっと先生の元で働けたのでしょうか。
サイモン・グラス
それに…貴方が去り際に言ったことも、残っているんです。
パラドックス
君は財団に洗脳されている。ただの忠犬だ。
サイモン・グラス
洗脳なのでしょうか。僕は忠犬でしょうか。僕は分かりません。まだ未熟ですから。
グラスは考える。
もし、決断出来たその日が、ようやく先生を撃ち殺す日なのだろうか、財団職員として…彼は蛇の手構成員として…。引き金を引く日が先生の壊れた鳥籠から抜け出せる日なのだろうか。
グラスは机の引き出しから取り出したイヌサフランの造花を眺める。
グラスの心はまだ揺らいでいる。
サイモン・グラス
けど僕は…この綺麗な花を握りつぶすことは出来ません…。たとえ造花であったとしても。
サイモン・グラス
僕は未熟です。財団職員として何もかも。
サイモン・グラス
ただ、今は…ずっと保管させてください。先生。尊敬しておりました…………
造花を中に入れ、ただ引き出しを閉めた。
私のヘッカとして書きました。
タイトル: Dr Glass' Personnel File 
作者: Pair Of Ducks
ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/dr-glass-personnel-file
ライセンス: CC BY-SA 3.0

タイトル: The Pair Of Duck S File
作者: Pair Of Ducks
ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/the-pair-of-duck-s-file
ライセンス: CC BY-SA 3.0

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