第9話

セカイの扉
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2025/10/03 15:00 更新
〜雫side〜
滝沢秀明に案内されて、雫は彗星ドームの
裏ステージ来た。
そして、雫は薄暗い研究室のような部屋に入った。
壁一面にホログラムが映し出され、光の粒がゆらゆらと漂っている。
瀬名雫
ここは……?
滝沢くん
《セカイ》と呼ばれている空間だ
滝沢さんは、淡々と答えた。
滝沢くん
神代湊の最期のステージ映像、音声、脳波データ……
すべてここに保存されている。
滝沢くん
君の声が“セカイ”を起動させたんだ
雫は、ごくりと唾を飲んだ。
足元の床が光り始める。白い光が全身を包み込み、次の瞬間——
世界が変わった。
そこには滝沢さんの姿はなかった。
雫の目の前に広がっていたのは、無限に広がる星空。
白い大地、光の橋、宙に浮かぶ月の城。
瀬名雫
ここが……セカイ……
息を呑む雫の耳に、音が届いた。
あなた
来てくれたんだね
振り返ると、そこに立っていたのはひとりの少女。
月のドレス、長い髪、優しい微笑み。
——神代湊。
雫は足が動かなかった。
写真や映像でしか見たことのない“自分”が、
目の前にいた。
瀬名雫
あなたが……神代あなた?
あなたは頷いた。
あなた
そう。かつての私。そして、あなたの中に眠っているもうひとりの“あなた”
雫は唇を震わせる
瀬名雫
ここは……夢じゃないの?
あなた
夢じゃない。ここは、あなたが歌で開いた扉。
“セカイ”というバーチャル空間……でも、ただのデータじゃない。
私の魂と思い出の残響が、この場所に残っているの
湊は一歩近づく
あなた
事故の真相も、この空間に記録されている。
でも、あなたが思い出す準備ができるまでは、全部は見せられない
雫は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
涙が自然にこぼれる。
瀬名雫
私……怖い。
全部思い出したら、
私じゃなくなっちゃう気がする
あなたは、雫の頬にそっと手を伸ばした。
あなた
大丈夫。あなたはあなた。
私はあなたの中で、見守っているから。
雫は目を閉じ、ゆっくり息を吸った。
恐怖よりも、温かさが心を満たしていく
あなた
次に歌うとき、きっと思い出せる。
“あの夜、何が起きたか”を。
そして、誰があなたをここへ導いたのかを
その言葉と共に、
セカイの空がゆっくりと崩れていく。
星が流れ、光が雫を包み込み、現実へと引き戻した。
——目を開けると、彗星ドームの裏ステージだった。
雫の手には、湊が握らせてくれた光のような“楽譜”が残っていた。
続く

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