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擬人化ぶいぽす
学パロ
『あと、体力テストが嫌いな方は今すぐ退避を...』
ここはとある中学校の体育館。
小さく赤いカラーコーンがいくつも並べられ、
普段より狭くなったように感じる。
4月○日、3年生の6クラスのうち3クラスの男子達が
集められているのだ。
今年度、3年生になった愛築と黒月は同じクラスで、
よく一緒に行動する仲である。
この日もペア活動であることが知らされていたため、
既に2人で組んでいた。
体育教師が前に出て話す。
『それでは今日はご存知の通り...』
『20mシャトルランをやるぞー!』
シャトルラン...人によっては4月の壁とも言える(?)。
持久力を試すとかどうこう言われるが、
苦手なものは苦手だ。
良くも悪くも、ひたすら走るだけなのだから...。
黒月の視線は下の方に落ち、なんとも嫌そうな表情。
まぁ無理もないだろう。
愛築も思わず苦笑してしまうくらい。
卓球部と吹奏楽部。体力は付いていそうだが、
2人とも、走るのだけは苦手らしい。
愛築は頑張って作り笑顔を見せた。
...目は落ち着かないし、冷や汗をかいているが。
愛築の記録を取りながら、黒月はふと
自身の記録カードに目をやる。
一昨年、去年と差程変わらぬ結果が続いている。
走っている愛築の方だが、
30回を超えた辺りで表情が厳しくなっていていた。
もちろん黒月からもよく見えた。
生憎、黒月の声はあまり響かないタイプらしく
周りの応援にかき消されそうだが、
とりあえず彼の応援に徹することにした。
無言で記録だけ取るよりはマシだと思ったようだ。
走っている者達から悲鳴が上がっている...。
そんな中、記録は40回に到達していた。
既に数名、体育館の隅で座り込んでいる人達が
まだ走り続ける友達を心配そうに見つめている。
もうすぐ50回というところで、
へとへとになった愛築が黒月の元に戻って来た。
本人曰く今回の記録はもう納得だとのこと。
続いて後半組。黒月が走る番がやってきた。
先程の意気消沈した態度は何処へいったのか、
すっかり元気を取り戻した愛築が笑顔で言った。
その様子に緊張が少しほぐれた。
もう何回もやってきた身だが、やはり嫌なものは嫌。
黒月にとって4月の不安の大半は人間関係とコレ。
なんでシャトルランなんてやるんだ...。
そう思いながら列に並ぶ。
"5秒前..."
"スタート"'
合図を耳にし走り出した。
とはいえ始めは比較的ゆっくり。
ここで体力を消耗してはこの後が持たない。
...と頭では分かっていても、そうはいかない。
体力の調整などできたものじゃない。
黒月はしみじみ思っていた。
体力バカ。まぁBlackだもんね(メタい)。
先程から何回往復したことか...。
もう嫌になり無心だったため、
放送なんて聞こえていなかったらしい。重症。
ふと我に返った。おい待て、40回?
気づいた途端体が重い。
そのせいか、時間内に線まで走りきることができず、
慌ててスピードを上げた。
徐々に口呼吸が増え、喉が乾燥してくる。
シャトルランでは2回までなら
時間内に走りきれずとも許される。
既に1度は遅れているため、
実質許されるのはあと1回と言ったところか。
そう気づいても遅いが。
周りは数名走るのをやめてしまっている。
水筒を手に休んでいる様子を見てると
なんだか羨ましくなってくる。
できることなら俺もやめたい。
なんとも言えない応援のワードチョイスだが、
黒月は少し笑顔を見せた。
呆れていたのもあるが、少し嬉しかった。
吹部の底力...まぁこの部活でなくても、
結局は目標もって全力疾走した者勝ちだろう。
50回まであと3回。
2回...
1回...!
先程遅れていたのは事実。
間に合うか...
とりあえずこれで一安心と言ったところか。
次のタイミングで抜け、何とか戻って来た。
全力疾走の後の水は心做しか普段より美味しい。
愛築が手を出してくる。
それに合わせて黒月も手を出した。
頑張ったお互いを称えるハイタッチ。青春やな。
笑顔だった愛築の顔が少し引きつった。
忘れたのか。と呟いて黒月に伝えた。
この2人のしょうもねぇ争いは
周りの人が止めに入るまで続き、
シャトルランよりもよっぽど疲れたとのこと...。
皆さんはシャトルラン、どんな思い出がありますか?
20mシャトルランに挑む愛築と黒月の
ちょっと緩いお話。
ちなみに私は大っ嫌いです。
あとすんごい今更。
愛築(あずき)くんと黒月(こづき)くんね












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。