……本当に何者……?
早い。
気を抜いたら……殺られる……!
飛んできた蹴りを躱して、ナイフを振るう。
それはやっぱり空を切った。
近くにある、少し木々が茂っている場所へ駆け出す。
当然、凶鬼もついてくる。
これで諦めてくれたら楽だったんだけど…流石にないか…!
人があまり来ない場所の空気は澄んでいる。
より一層、緊張感が漂う。
ほとんど勘で右に跳ぶ。
左頬を何かが掠り、微量の血が地に落ちる。
乾いた音がした。
目の前の凶鬼の手には………銃。
心底楽しそうに、笑う、笑う。
あまりにも…狂っている……。
ウパさんとはきっと、正反対だ。
駆ける。
木々の間を縫って、吸い寄ってくる弾を躱しながら。
よし……この範囲まで来れば……!
対象は……凶鬼の銃。
1期に炎を吹き出したソレを、ぱっと手放した。
よし、これで武器はこちらだ___ッ!?
……本当に強い。
まるで銃を操るように、的確に、当たると致命的な箇所に弾が飛んでくる。
すばしっこいし、かなり厳しい、か…?
太陽は既に登りきって、鳥達が空を飛んでいる。
流石に遅いとめめ村の人が思い出すだろうな……
にた、と笑う。
警戒レベルがぐんと上がる。
何かが風を切る音がして、上空を見ると。
鈍色に輝く無数の弾が、此方に降り注いでいた……!?
直ぐに木の下に隠れる…が。
どうなってるのか、ぐんと進路を変え弾が追跡してきた。
これは、かなり不味い…??
弾が木漏れ日に晒され光るお陰で、避けられてはいる……が。
こっちの体力が無くなったら終わる。
ジリ貧……!
………ここは森だからあまり使いたくなかった、けれど。
…能力。
穏やかな輝きを放っていた陽は、宙に浮く火となり。
ぼうっと、弾を燃やし……灰と成させる。
…炎で木々を燃やさない様に、調節しないと……!
漂う火はそのまま仲間を増やし、陽下にいた狂鬼の服がジリッと燃える。
よし……このまま、なんとか…、!
俯いて何かを呟いたと思うと、叫びだした凶鬼。
木々の影に移動したから、火はもうついていない。
木漏れ火も効果時間切れで消えてゆく。
………なんだ?
此方を燃えたぎるような怒りを露わにして睨んでくる。
凶鬼の様子が、可笑しい……?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!