次の日
朝から、家の中はいつもより慌ただしかった
何度目か分からない確認に、私は小さく笑った
今日は
昨日、初めて訪れたあの家に荷物を運ぶ日だ
まだ全部ではない
でも今日から少しずつ、
本格的に生活するための準備を始めるらしい
……正直
全然実感がない
昨日まで
私は母と二人で、この家に住んでいた
「ただいま」と言っても、
返事が返ってくることはほとんどなくて
母はいつも遅くまで働いていて
一人でご飯を食べることも、もう当たり前だった
それが
今日から少しずつ変わっていく
新しい家
新しい家族
そして
濱田先輩
思い出しただけで、少し複雑な気持ちになる
よりによって
親友が好きな人が
私の家族になるなんて
そう答えながら
私は自分の部屋を見渡した
長い間過ごしてきた部屋
今日から
ここにある荷物のほとんどを、別の家へ運ぶ
少しだけ
寂しい気がした













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!