今日も、いつもの様に海に来ていた。
少し丘になったところにある家から、自転車で坂を駆け降りる。風を切る感覚が心地いい。
勉強の合間を縫って訪れる海が好きだ。勉強をしていると、時間が動いている感覚がなくなるように海でもその作用が僕を包んでいる。
今日はビデオカメラをもって、防波堤の端っこで動画を撮ろう。それを楽曲に合わせて編集をして、それから…
考えるだけで自然と笑みがこぼれる。
そうと決めたら、魚釣りのおっちゃんたちに場所をとられる前に行こう。
明日音side
今日もまたあの海に行けるだろうか?
ちゃんとカメラ持って行って、風景をちゃんと収めよう。
昨日行ったときに、防波堤があったからそこで港の風景と海の写真を撮ったら絶対に綺麗!
そう言って俺は目を閉じた。手にはしっかりとお気に入りのカメラを持って。
自転車を、砂浜の入り口に止めて軽い足取りで砂浜を通り過ぎ、防波堤に向かった。
空にはカモメが悠々と飛んでいた。素材はいくらあってもいいから、歩いている所を動画に収めながら進んでいく。
慎重に躓かないように気を付けながら、防波堤に何とか着いた。
防波堤に上り、一番端っこに行こうと視線を上げた先に知らない…今まで見た事の無い人が立っていて目があった。
こちらを向いている人の手には高そうな一眼レフを持っていた。
その人の視線は僕の手に持たれていたビデオカメラに向いていて、景色を撮影しに来たことを察してくれたらしい。
でも、僕は彼の方に興味がいっていた。
容姿端麗で、声も落ち着いていてとても映えると思った。
自分でも驚いている。まさかこんな言葉が口を継いで出て来るとは思わなかった。
相手も驚いた顔をしている。本当に何をしているんだ、僕。
明日音side
目を開けたら、昨日来た海に来れていた。ちゃんと防波堤の上。
あの後、行ってみたい所を思い浮かべながら目を瞑ってみたけどそこには行けなかった。どうやら、訪れることのできるのはここの海だけだそうだ。
しばらく風を堪能していたら、誰かが来る気配がした。
振り返ってみると、こちらを見ている人がいた。手に持っているのはビデオカメラかな?だとしたら邪魔しちゃだめだ。
彼の持っているビデオカメラに結構興味があるけど、邪魔してしまうのは嫌だな。
返ってきた言葉は意外なものだった。
きっと、驚いたことを隠しきれていないだろう。でも、いいのかな?普通知らない人に急にこんな提案するかな?
なんだか面白いな。一緒にやってみたらどんなものが作れるかな?
そんなに喜んでくれるんだ。嬉しいな。
君の事を、もう少し知りたいな。教えてくれるかい?俺に。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!