のどかな昼下がり、
ヒーロー達は揃って緋八マナの家に集まっていた。
べしょっとテーブルに突っ伏する佐伯を
宇佐美が揶揄うようにつんつんと突く。
部屋中に積み上げられた
書類の山から
ひらり、と紙が一枚
佐伯の頭に乗った。
宇佐美を
「 やめてよリトくん‼︎ 」
なんて言って止めながら、
ばっと起き上がる佐伯。
紙の山の正体、
山積みになった
ヒーロー本部へ提出する
任務の報告書に筆を走らせつつ、
伊波と赤城が苦笑いを浮かべる。
先程の佐伯と同じく
机に突っ伏した叢雲と小柳に、
「 お前らなぁ” 」
と伊波が笑顔で
額に青筋を立てた。
なんて苦笑しながら緋八がペンを置いた、
その時。
prrrrrrr prrrrrrrrr
突如
全員の携帯端末が
一斉に振動し、ヒーロー達は揃って
自身の端末を取り出す。
『 ⬜︎⬜︎地区にてヴィランの目撃情報
ヒーロー八名は直ちに出動せよ 』
携帯を取るか早いか
明るくなった画面に表示された
その文字列に目を走らせて、
ヒーロー達は顔を見合わせた。
口を尖らせた赤城に続いて
叢雲がぼそっと伊波への不満を垂れると
本人から
無言で容赦ない拳骨が飛んできた。
反して
残りの面々はすぐに立ち上がり、
腕を軽く曲げて体をほぐしたり
自身の変身デバイスを起動したりと
やる気上々な様子だ。
伊波に追い立てられ、
ブーブー文句を言いながらも
部屋から出ていく面々の後ろで
ヒーロー衣装のまま、
緋八が廊下の突き当たりにある
棚の前で立ち止まった。
棚の上にあるのは
微妙に毛先が焼け焦げて
黒ずんだ、小さなクマのぬいぐるみ。
そして、嬉しそうな笑顔を浮かべる
一人の少女の写真だ。
その写真とぬいぐるみの前で
緋八は静かに目を瞑り、
手を合わせる。
すると、
後ろでそれを見ていた星導が
緋八の隣に立ち、
彼と同じように
手を合わせた。
驚いて声を上げる緋八に、
星導が一言。
その言葉を聞いた緋八は
少し目を見開いた後、
「 勿論 」
と
目を細めて頷いた。
やがて
玄関の方から
急き立てるような伊波の声が聞こえ、
二人は目を開けて振り返る。
元気よく返事をした緋八は
写真の少女に一言呟いてから、
玄関に向かっていった。
残された星導は、
しばし
写真の中で微笑む少女を見つめる。
そこに写っているのは
以前まで確かに
その身に命を宿していた、
無愛想でツンデレで、
でも根は素直で優しい、
なんの変哲もない
ただの普通の女の子。
写真の中で幸せそうに笑う
彼女を眺めて、
少し表情を和らげたあと
星導は、仲間の元へと
身を翻して歩いていった。
『 あと、もう少し 』 𝕗𝕚𝕟.











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!