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第1話

いかないで《完結》
「なんでもない」






辺りは










また動き始めた。













3年1組、李虎錫(イホソク)。

あっ、言い忘れてたけど





高校3年。





高校生活最後の現在は夏。
俺には友達が居て、良いとは言えない成績もあって、部活では後輩を可愛がり、逆に先輩に可愛がられた過去もあった。
改めてザックリ思い出すだけでも充実した生活をさせてもらってた。






そして、片想いは現在進行形。





俺の片想いが発覚したのは1年前。
高校1年の頃から奇跡的にクラスがずっと同じ奴が居る。

孫賢裕(ソンヒョヌ)だ。

俺にとってヒョヌは親友。



…親友、だった。



"だった"ってのは今仲悪いから、とかじゃなくて
俺は1年前からヒョヌを恋愛対象として見ているからだ。





「お」
「あっヒョヌ。」
「偶然だな。」
「そうだね。いつもはもっと早くに家を出てるけど今日は寝坊しちゃった。」
「はは。そんな日もあるだろう。」





ある朝も、絶賛片想い中の俺はヒョヌの事で頭がいっぱい。
今日も学校へ足を運ぶ。
ヒョヌも同じく学校へ足を運ぶ。

ヒョヌは何で頭をいっぱいにしてるのかは分からないけど。

今日は俺の不注意で寝坊をしてしまったため、ヒョヌと同じ時間に登校した。
ヒョヌはいつも俺より遅く登校している。遅刻はあまりしない方だけど、俺が早過ぎる。

今の俺の鼓動みたい。





しばらく他愛も無い話を続けると学校に着いた。
特にギリギリって訳でもないから、教室はクラスメイトがポツポツいる状態。



「ねぇ、ヒョヌ。」
「お?なんだ?」
「もう、夏じゃん?」



実を言うと、自分がヒョヌに恋愛感情を抱いてるという事に気付いてからも、その気持ちを無視し続けていた。
まさか、仲が良過ぎるだけだ、コイツに恋なんかする訳がない、って。
でも恋ってゆうのは不思議なもので、無視してた分に想いは募っていく訳で…。心が警告を出した。
高校を卒業したら会えない訳じゃないけど、ここまで頻繁に会う事も出来なければ、そもそもお互い別の仕事に就くかもしれない。そうなったらこの心のモヤモヤは一体どうなるの?考えれば考える程にモヤモヤしてきて、そろそろ気持ちを伝える時なんじゃないかって。
だから俺は、



「祭り、行かない?」



俺の地元で毎年行われている夏祭りにヒョヌを誘った。
デート、だね。





って、何言ってんだ?俺…。



「祭りかぁ…」



常に同じ表情のヒョヌから感情を読み取るのは、知り合ってもうすぐ3年経つのに難しかった。
だからそんなヒョヌの表情を見て、また俺はドキドキした。



「いいな。行こう。」
「ほえっ!?本当?!」
「ははは。おう。行こう。祭り。」



嬉し過ぎて、変な声が出ちゃった。

どうしよ。俺何着て行こっかな…。
いや?まだなのか。
俺ったら直ぐに祭りの事を考えてしまう。



「じゃあ!当日の、…って、いつだっけ?」



ふとスマホを開けてカレンダーを見ると
祭りの開催日は来週の土曜日。

えっ!?来週!?!?!?!?

「ら、来週のど、土曜日に54番地にあるこ、公園で待ち合わせしよっかッ!」
「おう。そうだな。何時だ?」
「ええっ…とぉ…、夕方の6時かな??」
「おう。了解。」

ヒョヌが鈍感でよかった。
相当吃っちゃったけど気付いてないらしい。





本当は気付いて欲しいことだってあるけど。















「早く着いちゃったなぁ…」

約束を交わした日から今日まではそれ程長くなかった。
結局、無難に浴衣を着ることにした。
自分でも分かるくらいの張り切りようで、待ち合わせ時刻の20分前に公園に着いてしまった。
祭りはここから近くて、だんじりの音が聞こえてきたりする。
懐かしいな、青年団。俺も昔入ってたな〜だなんて、毎年のように思い出に浸ってたら、聞き馴染みのある声が耳を撫でた。



「ホソガ。」
「あっ、ヒョヌ…」



勿論そこにはヒョヌの姿。



いや、ヒョヌなの…これ…。



ヒョヌは浴衣を着て、額に少し汗をかきながら扇子で顔を扇いでいる。



かっこいい…



「お?なんかおかしいか?」
「……あっ、な、なんもないよ!ほら、行こ。」



ヒョヌがおかしいんじゃない。俺がおかしい。

けど、

祭りのせい。祭り独特の雰囲気のせいでドキドキしちゃってるんだ。

俺は俺にそう言い聞かせて、ヒョヌの手を引いて祭りの方へ駆けた。
段々だんじりの音が大きくなっていく。
それに比例して、人も増えていく。
人が多いと感じた頃、俺たちは普通のテンポで歩いていた。

「人が多いな。」
「そうだね〜。毎年こんな感じで賑わっててさ。」
「ホソガはいい町で育ったんだな。」
「んー、そうゆうことみたいだね(笑)」
「ホソガ。」
「んー?あっ」

手を引いてここまで来たので、手を繋いだままの状態だった。

「ご、ごめん。」
「いや、いいよ。」
「…どこ、いく?」
「そうだなぁ…。」
「あっ、ヒョヌこの祭り初めてなのか!俺が案内するよ。なんか食べる?」
「おう。食おう。」

夏だと言っても少し薄暗い時間帯。
ヒョヌの顔は なんか食べる?って聞いたと同時に、光となった。

「めっちゃ嬉しそうじゃん。」
「おぉ、スマン。」
「ははは。なに謝ってんの。」

少し歩くと馴染み深いソースの匂い。

「なんかいい匂いがするぞ。」
「うん。ここ玉子せんべい売ってるんだ…って並んでるじゃん!」

"玉子せんべい、2つください。"
ヒョヌは売店のお兄さんに注文する。
2つって…。俺もじゃん…。

惚れちゃうよ。惚れてるけど!!!

「はい。ホソガ。」
「ありがとう!280円だよね…」
「いや。受け取らんぞ。」
「えっ、なんで?」
「お前が今日誘ってくれたからだ。」
「ふふふ。ありがと。また何かで返すね。」

ヒョヌのそういう優しい気遣いにやたらと反応してしまう俺。
そんな俺の気持ちを知ってるはずもなく、ヒョヌは誰がどう見ても美味しそうに玉子せんべいを頬張った。

「ヒョヌは、玉子せんべい好きなの?」
「おう。好きだ。」

玉子せんべいってゆうか、食べる事が好きなんだよね。
はぁ。食べるという動詞か、玉子せんべいになりたいや。

馬鹿みたいなこと考えてんなぁ…。
この時、きっと俺は間抜けな顔をしながらヒョヌを見つめていただろう。

「ん、なんだ?」
「んー?」
「食うか?」
「んーん。俺のまだあるよ。」
「そうか。」
「ねぇ、ヒョヌ。あとでだんじり見に行きたいんだけど、いい?」
「おう。いいぞ。」





そうこうしている間に玉子せんべいを食べ終わり、だんじりを見に行く事に。
どんどん人が多くなり、離れそうになる。

「わぁ!」

人が多くなったせいか、足元が疎かになっていた。

「おおっ、大丈夫か。」
「うん、大丈夫大丈夫。」
「離れそうだな…」
「大丈夫だよ!」
「そうか?」
「うん。去年もこんな感じだったs…わっ、」

また何かの仕切りに躓いてしまい、遂にヒョヌを見失ってしまった。

「ホソガ。」

一瞬混乱して辺りを見渡していると、ヒョヌの声だけが聞こえてきた。

「えっ、どこ!?」
「こっちだ。」
「こっち…?わわわっ」

誰かに手を引かれた。

「危なっかしいなぁ。」

ビックリして振り返ると、少し怒ったような顔をしたヒョヌだった。

「ヒョ、ヒョヌ。」
「…大丈夫か?」
「う、うん。ごめんね?」
「おう。しばらくこうしておこう。」



サラっとこういう事言っちゃうよね。
俺はこんなに幸せでいいのかな。



「あっ、あれだ!」

人の多い道を2人でゆっくり進んで行くと、だんじりが見えてきた。
こっちに向かっている。

「おお。凄いな。」
「嘉町青年団は…居た!」
「嘉町青年団??」
「うん。俺が昔入ってた青年団なんだけどね。」
「凄いじゃないか。」
「えへへ。ありがとう。でも、もう1人も知ってる子居ないや。」
「そうか。」
「時間って、早いよね。」
「そうだな。」









玉子せんべいを食べて、だんじりを見て、射的をして、友人と会って少し喋って、カステラ買って…

そうやってヒョヌと居る時間、俺はずっとドキドキしてて、好きだな、って自分の気持ちを再確認した。
それでも時間はやっぱり意地悪なもので、

長くて短い祭りに"終わり"の文字がチラつく。

「お、そろそろこんな時間か。」
「ほんとだ。」

本当はそんな時間だなんて知ってた。

はぁ…。

時が止まればいいのに。

どこの少女漫画でも恋愛ドラマでもよく聞く言葉。
嗚呼。こういうことなんだ。痛感した気分だよ。

幸せを噛み締める度、なんとなくキューっと痛むとのがあって、それは幸せを過度に摂取したからなんだ。きっと。
なにかが、不安?いや。考え過ぎてしまう癖だよね。






「よし。じゃあ帰ろうか。」

1歩、2歩、3歩、4歩…
ヒョヌは進んで行くのに俺は進めなかった。

「……待って!」

自分の声が頭に響き、辺りは静止した。

離れる距離に焦って、ヒョヌの浴衣の裾を引っ張ると振り返ってくれた。
今日に果たすべき最大の役目を忘れそうになって
身体が動いた。



いや、楽しかっただけの思い出にしたくて、
忘れたかったのかも。



「ん?なんだ?」

言えるよ。俺。今やっと気持ちが晴れるんだよ。

俺の口から出た言葉は予想と反した。

「…………なんでもない。」



辺りはまた、動き始めた。



「?そうか。バス停まで行こうか。」





それからというものの、ヒョヌの横を歩く俺はぼんやりしていた。
これじゃあ最大の役割を忘れたも同然。

「ホソガ?」
「…ん、ん?どうしたの?」
「なんかボーッとしてるぞ?」
「いや、そんな事ないよ。」

ボーッとしてるのはヒョヌだ。

そんなこと言えるわけも無いしボーッとしてるの結局は俺だし。






「ねぇ。」

バス停に着いたけど、今日は一緒に帰れる気がしなかった。

「ん?」
「今日、俺歩いて帰るわ。」
「お?そうか。気を付けてな。」
「うん。今日はありがとう。楽しかった。」
「俺も楽しかったよ。また、明日な。」
「うん。また明日。」

最終便に乗っていくヒョヌ。

手を振りバスが去ると、少し感傷的になる。

泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ、駄目。

零れそうになる何かを零さないように家へ向かった。














「おはよー!!」
「わあっ!びっくりしたぁ…。脅かすなよミニョガ!」
「通常運転だしぃー!そんなことより、昨日祭りで会った時ほんとびっくりしたわw」
「今の俺の方がびっくりしてるよ!」

祭りは終わり、普通に登校する学校。
今日は早く学校に来た。
ヒョヌはまだ来ていない。
まだかなーなんて考えてると昨日会った友人の1人、クラスメイトのミニョクがモーニングコール。
俺起きてるけど。

「がたいデカいのに本当ビビりだなぁーw…おわぁぁぁっ、ちょっ!ちょっと待って…」
「はい回収ー。昨日数学教えろっつったのはどこの誰だ。」
「こ、これはこれはぁ〜。風紀委員のキヒョンさんではあぁりませんかぁ〜…。えへへ?」
「えへへじゃねぇ。ごめんな?ホソク。」
「…あ、ううん!全然いいけど早くどっかやって(笑)」
「ん?なんかボーッとしてた?窓なんか見ちゃって。」
「いやいや!そんな事ないよ!」
「そう?あっ。もうじきチャイム鳴るじゃん!おいこらミニョガ!大急ぎで教えるから席戻れ!」
「はーいごめんなさーい」

え。チャイム?
ヒョヌは…

( キーンコーンカーンコーン………

先生が入って来て、朝の会を始めようとする。

「せ、先生…ヒョヌ…」

ヒョヌの事が気になって先生に尋ねようとすると、廊下からバタバタと誰かが走ってくる音がした。

「はぁ、はぁ、…。遅れて、っ、スマン……。」

やっぱりヒョヌだった。

少しざわつくクラス。そして、先生は少しビックリして席に着くように言った。

スマンって(笑)

「おはよ、ホソガ。」
「ははは。ヒョヌおはよ。スマンじゃなくて、すみませんだよ。」
「おお、そうか。すみません。」
「いやいや、そこはスマンでいいけどさ。」
「昨日はありがとうな。怪我してないか?」
「怪我?どうして。」
「あの後一人で帰ったろ?」
「あぁ、大丈夫だよ。ありがとう。」

先生の連絡を耳で流し、少し小声でヒョヌと会話を交わす。

嗚呼。普通の日常生活に戻ったんだな。




それからとゆうものの、本当にいつもと変わらない時間が流れた。ヒョヌと話したりどっか行ったり、ヒョヌとはまた別の子と話もしたし、苦手だった先生の良さが今になって理解した気がしたり…。やっぱり、そういう面では卒業が近付いてるなっていうのは感じてる。
これが思い出になるのも知ってる。

ただ俺の中には、

あの祭りから、胸の奥ら辺に何かしこりの様なものが存在してる気がした。

今日も変わらず、ヒョヌが好きだ。いつ伝わるんだろう。









卒業式の1週間前。
何だか空を見たくて、屋上で内容も数も少ない授業をサボった。
もうすぐ卒業か…。なんて生意気な事を一人で呟いて、
屋上に寝転んで、空を仰ぐ。
少し眩しいけど、それ以上に空は鮮やかで、空っぽで、見てるだけで落ち着く事が出来た。


「おい」

誰かが屋上に来た。
授業中なのに、先生かな…。

「あっ、ヒョヌ…」

すぐに体を起こしたのは、俺の好きなヒョヌだったから。

「何してるんだ?」
「空見に来た。」
「授業始まってるぞ。」
「ヒョヌも来てんじゃん。」
「お前を見つけに来たつもりが、俺も空が見たくなってきて。」
「正直だね。」

空は、正直になれる。

「ねぇ、ヒョヌ。」

俺と同じ様にして寝転んで、空を仰ぐヒョヌの目を見ずに呼んだ。

「ん?どうした?」
「ヒョヌはさ、恋ってどう思う?」
「どう思うって…。素敵なものなんじゃないか?」
「そっかぁ。俺はね、」
「おう。」
「辛いと思う。」
「辛い…か…。」
「でもね、楽しいんだよ。」
「楽しい…。」
「うん。楽しい。でも漠然と、決意ってゆうのが見えるんだ…。」
「おう。」
「その決意が漠然としてて、見えてるはずのに不安が邪魔して見えないから、辛いんだよ。」

ますますヒョヌの目を見て話せない。
泣きそうだから。

「ねぇ、ヒョヌ?」
「どうした?」
「俺さ、今ね、辛い…。」
「…そうか。」
「どうゆう事か分かってよ。」
「どうゆう事か、か?」

声の震えを押し殺して、徐々に伝える。ゆっくり。慎重に。
なのに、
ヒョヌはまだ気付いてくれないの?

「お、おい。泣いてるのか?何処か痛いのか?」

気付けば涙を零していた。
あの日の祭りの帰りにも流さなかった涙。

「…痛い。凄く痛いよ…。」
「どこだ。大丈夫か?」
「ヒョヌのせいだよ…。苦しいよ…。」
「俺か…?何かしてしまったのか?」
「なんで分かってくんないの!」

突然大きな声を出してしまった。
ヒョヌは少し驚いた表情になったが、又いつもの表情に戻った。

「…ご、ごめん。」
「いや、スマン。俺がした事、教えてくれるか?」

ヒョヌはいつもこうだ。
でも、俺が好きなのはいつもこうなってしまうヒョヌなんだ。















ヒョヌと過ごした空は、





最後の最後で俺を正直にさせた。
















「あのさ」




-END-