その日の彼は、いつも以上に口数が少ないように感じた
いつもの席に座っても、スマホの画面をじっと見つめたまま、ため息ばかりついている
指が、落ち着かなさそうに机の木目を叩いていた
静かに流れているBGMの隙間で、俺は声をかけてみた。
彼はハッとしたようにこちらを見る
首にかけていた大きなヘッドホンを少し触り
いつも以上にがなった声で、答えてくれた
彼の目には、深い疲労と焦燥が滲んでた
いつもは見せてくれない内側の暗い部分が、雨の日の薄暗さに溶け出しているみたいだった
彼がぽつりと言って、ポケットからイヤホンを取り出し、その片方を俺の耳に付けた
俺は静かに頷いた
流れてきたのは、ピアノの音と、彼の声によく似た低い声の歌
荒削りだけどひどく切ないメロディ
胸の奥がぎゅっと締め付けられるような、痛くて、とても美しい音楽だった
俺の本音の言葉に、彼は驚いたように目を見開いた
それから、ふっと嬉しそうに目元を緩めた
彼と同じ雨の音と、同じ音楽を共有している
イヤホンを通じて繋がっている時間が、このままずっと、続けばいいのにと
心の奥で静かに願った
アンケート
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8%
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。