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第10話

10!
42
2026/02/22 02:09 更新
やっぱりコーヒーは好きだ。飲んでる間、何も考えなくて良いように思えるから。香りと深い味わいを、堪能するだけで良いのだから。
フランス🇫🇷
そ〜いえば…
長椅子から立ち上がり、襟元に手を持っていく。
すぐに裏地から外れた感覚を受け、それを握ったまま歩き始める。
フランス🇫🇷
さて、仕事に戻るかな
カラン、と軽い音を立てて缶をゴミ箱に放る。
小さな違和感は、空き缶と共に捨てた。
フランス🇫🇷
だ〜か〜ら〜!!!
仕事寄越せって言ってんの!!
ドイツ🇩🇪
何度も言わせるな、それが適正量だ
ドイツと一進一退の言い争いをしている。議題は、フランスの仕事の適正量についてだ。
ドイツ🇩🇪
マジで大人しくしててくれ、準備が進まない
未だかつて、仕事が少ないことで異議を申し立てた事があっただろうか。否、ない。
新たな仕事を与えないドイツに内心いらつくフランス。トン、と彼の肩を叩く者がいた。
フランス🇫🇷
なに??
それはフランスの苛立ちを加速させるには十分だった。
アメリカ🇺🇸
まぁ、そんなキレんなって
いやだって、と口を挟む前にアメリカが遮った。
アメリカ🇺🇸
今丁度手伝い探しててな。
来てくんない?
フランス🇫🇷
勿論、いいよ!!
二つ返事で承諾するフランス。彼は仕事に飢えていた。
ドイツ🇩🇪
ちょ、待て待て
制止するドイツを横目に、そそくさとオフィスを出ていく。
だって、椅子に座ってボーッとするだけなんて、つまらないもん。
フランス🇫🇷
で、何するの?
アメリカ🇺🇸
会議の準備
フランス🇫🇷
へ〜…
ふと違和感を覚える。
フランス🇫🇷
いつも国連とやってなかったっけ
んー…、と一瞬考える所作を見せ、意外な事を告げた。
アメリカ🇺🇸
なんか今イラついてんだよな…
フランス🇫🇷
え、国連が?!
常に天使…神…?のような形容しがたい微笑みを浮かべている国連。その彼の不機嫌な様子がどうにも想像できなかった。
アメリカ🇺🇸
着いたぞ
何度も角を曲がり、階段を登り、歩いたことのない廊下を進んだ先に、その部屋はあった。
ガチャ、と他の部屋とは一線を画す、大きな扉を開ける。中は思っている以上に広かった。
アメリカ🇺🇸
んー…国連が偉い人と話し合うらしい
妙に歯切れの悪い言い方に、いつもの彼を感じない。こいつは、白黒はっきりつけたいタイプのはず。フランスの愛され体質は、人の性格さえも歪めてしまうのだろうか。
アメリカ🇺🇸
まずは掃除からだな!
フランス🇫🇷
だね〜
高層ビルの奥まった場所にある大きな会議室。頻繁に使われるとは考えられない。汚れが溜まるのも当然か。
積もったホコリを指でなぞり、ふっ、と息を飛ばす。窓の外には絶景が広がっていた。
フランス🇫🇷
作業量半端な〜…
アメリカ🇺🇸
ほんの数回しか使われてないからな…
太陽光の差す部屋で、黙々と作業を進める二人。
何かに気づいたように、ふとアメリカが尋ねる。
アメリカ🇺🇸
今日って何曜日だっけ
フランス🇫🇷
え…金曜日だけど
はっ、と息を呑む彼。何かあるのだろうか。無性に不安になってくる。
アメリカ🇺🇸
観たいテレビがある…!
フランス🇫🇷
んだよビビって損した
呆れを含んだため息をつき、再び掃除に取り掛かる。
アメリカ🇺🇸
いやめっちゃ重要だから!!
声を大にして放つアメリカ。
フランス🇫🇷
あ〜はいはい、耳が疲れるよ
ほんとに。最近の国達は声を荒げるのがトレンドなのだろうか?なんて考えるくらい、騒がしい日々を送っている気がする。もっと落ち着いて、紳士的に会話して欲しいとつくづく思う。
フランス🇫🇷
ん〜、本当に疲れてきた。紅茶飲みたい
零した刹那、アメリカが反射かのような速度で言葉を返してくる。
アメリカ🇺🇸
買ってくるわ
フランス🇫🇷
ありがと、いってら〜
大きな扉に向け、手を振る。
フランスは最近、活気に満ちた空気と孤独をずっと吸っている気がする。心理的な問題だと思われるが、ふと感情の不足に気付かされる。
不意に泣きたくなるのだ。前までの関係が恋しくなるのだ。
フランス🇫🇷
…寝つきも悪いしな〜、
考えると悩みばかり浮かんでくる。そんな自分も、嫌になる。これでは悪循環、負のループだ。抜け出したい、でも抜け出せない、簡単なことじゃない。
グルグル思考を巡らせる。そうしてテーブルを拭き終わる頃だ、おつかいに行った彼が帰ってきたのは。
フランス🇫🇷
…!
タッタッタッ、と軽快な音が響いているのが聞こえる。切り替えて、さっきまでの顔を作る。一息ついて、少し落ち着こう。
アメリカ🇺🇸
ただいまー
フランス🇫🇷
おかえり〜
アメリカ🇺🇸
はいこれ。ストレートなかったから
フランス🇫🇷
ありがと
フランス🇫🇷
あれ、口開いてない?
アメリカ🇺🇸
ああそれ、すまん。間違えて開けちまった
アメリカ🇺🇸
怖いんなら今毒見するか?
フランス🇫🇷
別にいいよ…なんも疑ってないし
軽く振ってから一口。香り高い紅茶と優しい甘さが調和していて、口内が心地よくなる。
アメリカ🇺🇸
そうそう、テレビの話の続きだが…
フランス🇫🇷
も〜、さっさと掃除終わらせよ?
話しながらのほうが楽しいだろ?と言いたげな顔で語りを続ける。
アメリカ🇺🇸
探偵ものでさ。誰だっけ…EUだかに勧められて見始めて…
これは止まらないな、と半ば諦めで最後の仕上げに取り掛かるフランスだった。
見違えるほど綺麗になった会議室を見渡し、呟く。
フランス🇫🇷
…綺麗になったね〜
アメリカ🇺🇸
だな、これなら誰も文句言わないだろ
気を抜いた途端、一気に疲れが押し寄せる。デスクワーク中心のフランスに取って、掃除という業務は慣れないものだった。半分ほど無くなった紅茶を片手に、あくびがこぼれた。
フランス🇫🇷
ふぁ…ねむ…
おまけに軽度の睡眠不足。条件は既に揃っていた。
耐えきれず壁にもたれかかる。
アメリカ🇺🇸
大丈夫か?
フランス🇫🇷
んなわけ……
焦りを感じさせない彼の顔色をうかがい、フランスは揺れる視界の中、確信した。
やはり毒見はさせるべきだった、と。
睡魔には逆らえず、瞼の裏で意識を手放した。

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